CSR調達の取り組み

サプライチェーン管理

エプソンは、サプライヤーを事業活動における重要なビジネスパートナーと考え、公平公正・共存共栄を基本に、相互信頼関係を築き、ともに発展していくことを目指した調達活動を展開しています。

エプソンは、日本のみならず、多くの国・地域から調達を行っており、調達金額比では、日本39%、海外61%となっています。
製品組立に必要な原材料や部品、加工委託などの直接材と、工場消耗品、機械装置、広報宣伝、物流、業務委託、人材派遣などの調達があり、その金額比率は、直接材61%、それ以外39%となっています。
直接材は、約1,700社のサプライヤーと取引をしており、主力の生産拠点があるアジア地域で多くの取引があります。


調達概況

サプライヤー評価プログラム

エプソンは、直接材サプライヤーはもとより、間接材サプライヤーを含む全サプライヤーを対象に、外部信用調査機関の情報に基づく「間接評価」と、QCDなどの管理レベルをサプライヤーが自己チェックする「直接評価(定期評価)」などからなるサプライヤー評価プログラムに基づく多面的評価を実施しています。

エプソン サプライヤー評価プログラム 評価頻度
間接評価
外部信用調査機関の情報
評価項目:評価点、業歴、資本構成、企業規模、損益状況、資金現況、経営者など
2カ月毎
直接評価(定期評価)
QCDEMS中心に管理レベルを自己評価
評価項目:品質管理(Q)、コスト管理(C)、納期管理(D)、環境管理(E)、マネジメント(M)、情報セキュリティー(S)
1回/年
CSR詳細評価
エプソングループサプライヤー行動規範(RBA行動規範)の遵守状況を自己評価
評価項目:労働(人権)、安全衛生、環境、倫理、マネジメントシステム
1回/年
有事対応力評価
自然災害、火災などの有事の際の対応力を自己評価
評価項目:経営姿勢、リスク対策、非常時対応力、被災現場での復旧力、供給継続力、調達維持力、在庫管理状況など
1回/年
安全管理評価
火災などの有事発生リスクへの対応状況の自己評価
評価項目:電気、危険有害物質、防災などの管理状況
1回/年

関連情報 : グリーン購入

CSR調達推進プログラム

エプソンのサプライヤー管理プログラムは、サプライヤーガイドラインの遵守要請、サプライヤーによる自己評価、リスク分析、現場確認、改善活動のサイクルにより行っています。いずれのサプライヤー評価においても、サプライヤーと協働で改善活動を行い、レベルアップを図っています。

直接評価(定期評価)

調達リスクに応じて選定したサプライヤーについて、定期評価(セルフアセスメント)を毎年行っています。
品質(Q)、価格(C)、納期(D)のほか、環境とマネジメントシステムについての設問があり、マネジメントシステムでは、管理体制および貿易や腐敗などの各種法令への適合性や、含有化学物質管理、個人情報の取り扱いなどについて確認しています。また、近年世界的に多発しているサイバー攻撃や情報漏洩などへの対応として、情報セキュリティーに関する確認もあわせて実施しています。
定期評価の結果、60点未満の場合、改善要請取引先として改善支援を行うとともに、改善が見られない場合には、取引継続をお断りしています。2023年の定期評価では、60点未満の改善要請取引先が14社あり、改善の取り組みをしていただきました。

区分 設問数
Q. 品質 12
C. コスト 5
D. 納期 5
E. 環境 5
M. マネジメントシステム 16
S. 情報セキュリティー 25
合計 68

直接評価実績

(年度) 

2021 2022 2023
サプライヤー数  959社 937社 900社
窓口数  1,572 1,582 1,425
回答受領率  目標 100% 100% 100%
実績 100% 100% 100%
改善要請取引先(窓口数) 16社 14社

新規取引開始時の評価

新規で取引を開始するサプライヤーについては、取引開始の条件として、エプソングループサプライヤーガイドライン/RBA行動規範(人権、安全衛生、環境、倫理を含みます)の遵守の同意の取得と、定期評価に準じた内容の評価(セルフアセスメント)を行っています。評価の結果70点未満の場合は、改善を条件に取引しています。

CSR詳細評価

エプソンのCSR詳細評価は、サプライヤーのCSRデューデリジェンスプログラムです。エプソンは、ワールドワイドのサプライチェーン全体のCSRレベルの向上を目指すとともに、Responsible Business Alliance (RBA)レギュラー会員に求められるサプライヤー管理要件の遵守状況を、サプライヤーによる自己評価(Self-Assessment Questionnaire、SAQ)で毎年確認し、その評価結果をもとに、是正に取り組んでいただいています。また、サプライヤーの状況を監査や現場確認およびインタビューなどにより確認するプロセスも行っています。
SAQは、Responsible Business Alliance(RBA)が提供するオンラインSAQ(Self-Assessment Questionnaire)のほかに、RBAの現場監査基準(VAP監査基準)に基づいてエプソンが独自に策定したSAQ(エプソンSAQ)を用いています。エプソンSAQは、労働項目に関する設問を多く取り入れ、また、先住民や外国籍移住者の権利保護についての設問も用意し、サプライヤーにおける人権尊重の状況の詳細を確認できるよう設計してあります。さらに、エプソンの製造拠点のローカルサプライヤーにもSAQの内容を理解し、正確に回答いただくことを目的に、多言語対応した帳票を使用しています。
SAQにてハイリスクと評価されたサプライヤーについては、RBAの基準に従い監査を受けていただき、是正に取り組んでいただいています。

*¹ RBAレギュラー会員義務の概要

直接材サプライヤー用SAQは5カ国語、間接材サプライヤー用SAQは6カ国語


エプソンSAQの設問構成(2023年版)

区分 対象 & 設問数
直接材サプライヤー 間接材サプライヤー
A. 労働(人権) 40 37
B. 安全衛生 30 9
C. 環境 13 -
D. 倫理 13 8
E. マネジメントシステム 15 9
O. 先住民・外国籍移住者の権利保護 5 5
合計 116 68



SAQ評価ランク分け

リスクランク 評価点 説明
ローリスク 85点超
  • 基本的に、エプソンサプライヤー行動規範(RBA行動規範)の要求レベルで事業運営できている
ミドルリスク 65-85点
  • エプソンサプライヤー行動規範の要求レベルでの事業運営ができていない項目があるが、自主的な是正が可能
ハイリスク 65点未満
  • エプソンサプライヤー行動規範の要求レベルで事業運営できていない項目が多くあり、支援が必要
  • RBAの要求に基づくVAP監査を要請

* RBAオンラインSAQによる回答は、RBAのリスクランクに従い判断します



2023年のSAQ実施実績

2023年は、以下の主要サプライヤーについて、CSR詳細評価(SAQおよび是正活動)を実施しました。

2023年SAQ実施対象

  (選定の考え方)
1. 直接材 主要サプライヤー グループ調達額80%に該当する上位取引先*1
その他の重要なサプライヤー 事業ごとに選定した重要なサプライヤー、シングルソースサプライヤーなど
2. 間接材
サプライヤー
構内常駐業者*2 セイコーエプソンおよび製造拠点に常駐する業者
人材派遣・紹介業者 セイコーエプソンおよび製造拠点において活用する業者
物流倉庫業者 セイコーエプソンおよび製造拠点において活用する業者
コールセンター業務委託先 エプソンが活用するすべてのエプソンコールセンターの委託業者

*1 エプソンの一次サプライヤーを取引額の多い順から並べ、その取引額の合計が総取引額の80%を超えるまで上位から選択したサプライヤー。
一次サプライヤーが商社の場合には、商社の先にある製造メーカーにSAQへの回答を依頼

*2 エプソンの拠点において、警備・食堂などの役務を提供する委託先



直接材サプライヤー

2023年の調査では、直接材主要一次サプライヤー270社に依頼し、全てのサプライヤー(547拠点)からSAQへの回答をいただきました。主要一次サプライヤーのほか、シングルソースサプライヤーなどの重要なサプライヤーについても、主要サプライヤー同様にSAQの依頼を行い、回答をいただきました。また、一次サプライヤーが商社の場合にはメーカーである二次サプライヤーにもお願いし、SAQに回答いただきました。
RBAのオンラインSAQを利用し回答されるサプライヤーが年々増加しており、約25%を占めるようになっています。
エプソンSAQを用いて回答されたサプライヤーに対しては、SAQのスコアに加えて、課題事項の改善助言を含むフィードバックシートを作成し、それら全てのサプライヤーにSAQの結果を通知するとともに、人権に関わる重要項目については、是正計画の策定および是正確認までの是正状況のモニタリングと支援を行いました。

人権に関わる重要項目:(一部抜粋)

  • 児童労働禁止(検出なし)
  • 奴隷労働・強制労働禁止(適切な雇用契約書の締結、移動の自由、会社ローンの制限)
  • 労働時間の適正管理(連続勤務7日未満、上限労働時間(週60時間))
  • 賃金の適正な支払い(最低賃金以上の支払い、超過時間勤務賃金の適正な支払い、支払日の遵守)
  • 就職費用の労働者負担禁止
  • 人道的待遇(ハラスメント禁止)
  • 避難訓練(全員参加、夜間実施、寮での実施など)
  • 適切な個人用保護具の無償提供
  • 妊婦・育児中の女性の安全対策、清潔な搾乳場所の提供など


直接材主要サプライヤーの評価結果

(年) 2021 2022 2023
評価対象サプライヤー 293社 164社*1 270社*1
エプソンSAQ
(427 事業所)
RBA SAQ
(70 事業所)
エプソン SAQ
(338 事業所)
RBA SAQ
(111 事業所)
エプソン SAQ
(401 事業所)
RBA SAQ
(146 事業所)
中期目標(KPI)
  • 2020年度までにハイリスク 0%にする:2020年度に達成
  • 2021年設定目標:2025年までに主要サプライヤーのCSRリスクランクをローリスクにする
ローリスク(85点超) 91%
(443 事業所)
91%
(407 事業所)
96%
(524 事業所)
91%
(306 事業所)
91%
(101 事業所)
94%
(378 事業所)
100%
(146 事業所)
ミドルリスク(65-85点) 9%
(54 事業所)
9%
(42 事業所)
4%
(23 事業所)
9%
(53 事業所)
0%
(1 事業所)
9%
(32 事業所)
9%
(10 事業所)
6%
(23 事業所)
0%
(0 事業所)
ハイリスク(65点未満) 0%
(0 事業所)
0%
(0 事業所)
0%
(0 事業所)

*1 企業グループ




間接材サプライヤー

エプソンは、事業運営上不可欠な重要なパートナーである間接材サプライヤーについてもRBAの要求を理解していただくとともに、これに準拠した会社運営の改善に取り組んでいただいております。
2019年以降、主要なサプライヤーとして構内外注業者、人材派遣・紹介業者および物流倉庫業者について、SAQの回答をお願いし、SAQの結果を受けて是正活動をお願いしてきました。2022年以降更に対象を拡大し、SAQを実施しました。
また、製造拠点においては、構内常駐業者の従業員の労働環境・雇用状況を確認するため、SAQに加えて監査を行い、検出された長時間労働、休日付与、連続勤務日数、超過時間勤務賃金の適切な支払いなどの課題について、是正が確認できるまで支援を行っています。このような取り組みにより、SAQの点数の向上が確認できています。
2023年は、セイコーエプソンの事業所およびエプソンの主要製造拠点において、277社(回答率100%)からSAQの回答をいただきました。直接材サプライヤー同様に、人権に関わる重要項目に課題が検出された場合には、是正計画策定および是正活動をお願いし、是正完了の確認を行っています。
(是正確認の事例)製造請負業者において、雇用する外国籍労働者が送り出し国にて負担した費用(日本語教育費、ビザ取得費など)を労働者本人に返金




間接材サプライヤーの評価結果

サプライヤー属性 2021年 2022年 2023年
SAQ回答会社数 SAQ回答会社数 SAQ回答会社数
構内常駐業者 警備 15社 19社 24社
食堂 13社 13社 16社
清掃 13社 17社 19社
設備保守 16社 17社 17社
その他 71社 67社 75社
小計 128社 133社 151社
物流倉庫業者 3社 8社 8社
人材派遣・人材紹介 89社 91社 93社
コールセンター*1 - 15社 25社
リスクランク ローリスク
(85点超)
174社 203社 242社
79% 82% 87%
ミドルリスク
(65-85点)
46社 44社 35社
21% 18% 13%
ハイリスク
(65点未満)
0社 0社 0社
0% 0% 0%

*1 2022年のリスク評価の結果、コールセンター委託業務先に対してSAQを実施しました


監査、現場確認、改善支援

エプソンは、CSR詳細評価のデューデリジェンスにおいて、サプライヤーを訪問して監査や現場確認を行い、状況を把握することが重要であると認識し、主要製造拠点を中心に計画的に実施しています。確認の結果、リスクが確認されたサプライヤーについては、是正活動を支援しています。

第三者監査

サプライヤーによるRBA(VAP)監査受審は増加しています。イニシャル監査の結果において、A労働(人権)やB安全衛生に課題が多く、CAP(改善活動計画)およびクロージャ―監査での是正状況をモニタリングするとともに、エプソンのサプライヤーCSRの取り組み強化項目として展開しています。

現場確認・改善支援

エプソンの製造拠点のメンバーがサプライヤーを訪問し、現場確認と是正活動の支援を行っています。
直接材サプライヤーについては、CSR項目の改善のみならず、火災予防措置や事業継続マネジメント(BCM)の導入支援など、サプライヤーが対応に苦慮している事項についても積極的に支援に取り組んでいます。
構内常駐業者については、エプソン社員による二者監査を実施し、労働時間の削減・管理、休日の付与、超過時間勤務賃金の適切な支払い、就職時の費用負担の禁止などの労働環境の改善を実施していただきました。


監査・現場確認実績(拠点数、日本およびその他地域)

                                          (年度) 2021 2022 2023

第三者監査

(RBA(VAP)監査)
イニシャル監査 16 23 26
クロージャー監査 6 12 12*1 
二者監査・現場確認 直接材サプライヤー 163 216 217
間接材サプライヤー 55 64 55
合計 218 280 272

*¹ Priority closure auditを含みます


サプライチェーン事業継続マネジメント

エプソンは、サプライチェーン上で災害・事故・新興感染症の蔓延などの異常事態が発生した場合でも、目標期間内に供給を再開し、供給責任を果たすため、サプライチェーン全体でのBCM活動を推進しています。

関連情報:事業継続マネジメント

有事対応力評価

サプライチェーンBCM活動の一環として、サプライヤーからの調達品の供給が途絶しないよう、サプライヤー自身でBCMに取り組んでいただく活動を行っており、サプライヤーの有事対応力の自己評価を定期的に実施し、評価結果をフィードバックするとともに改善活動の支援を行っています。
有事対応力評価を通じて把握した、BCM(事業継続マネジメント)の取り組みおよび BCP(事業継続計画)を制定されていないサプライヤーについて、有事への備えとしてBCMへの取り組み支援を行い、全ての重要サプライヤーのBCM導入を目指します。

2022年度に、評価の実効性を高めるため、評価項目や対象選定基準を見直し、以下の基準をもとに、有事対応力評価(自己評価)の対象(直接材および間接材サプライヤー)を選定しました。選定された対象先(約1,000社)について、更に優先付けを行い、2022年から2023年の2年にわたって、評価を行い、結果をフィードバックしました。
(選定の考え方)
・前年度取引実績のあるサプライヤー
・過去3年で1度も調査していないサプライヤー
・各事業部の取引重要度に基づき選定されたサプライヤー

サプライヤーにおけるBCM導入状況

    FY2022 FY2023
BCM導入サプライヤー数 実績 694社 336社

 

BCM導入率

目標 100%
実績 89% 91%


安全管理評価

エプソンは、サプライヤーにおける火災の発生をきっかけとして、火災・爆発・薬品漏洩などの事故リスク抑制への対応力を強化することを目的として、安全管理評価(自己点検)を実施してきました。2022年度に、以下の基準をもとに、安全管理評価の対象(直接材および間接材サプライヤー)を選定しました。選定された対象先(約1,000社)について、さらに優先付けを行い、2022年から2023年の2年にわたって、評価を実施しました。
(選定の考え方)
・前年度取引実績のあるサプライヤー
・過去3年で1度も調査していないサプライヤー
・各事業部の取引重要度に基づき選定されたサプライヤー

エプソンは、サプライヤーにおける安全管理がサプライチェーンBCPの重要な要素であるとの認識から、2024年度から新規取引の開始条件に安全管理評価を追加しています。



現場安全点検によるサプライヤー支援

エプソンは、サプライヤーによる安全管理の自己評価に加え、実効性をあげるため、2017年よりエプソンの安全管理専門の担当者がサプライヤーの現場を訪問し、安全点検と管理向上のための支援を行ってきました。累計で500社を超える実績となっています。
エプソンでは、独自に区分したランクにより、現場安全点検の結果を評価しています。
(レベル区分)
レベル1:要求水準レベル
レベル2:要求水準一部未達レベル
レベル3:要求水準未達レベル
2023年度に現場安全点検を実施した93サプライヤーは、全てがレベル1(要求水準レベル)であることを確認できました。全ての重要サプライヤーをレベル1に引き上げることを目指して、2024年度は2022年に要求レベル一部未達と評価された2社の活動支援を継続し、83社の現場安全点検を計画しています。これにより、あわせて631社の現場安全点検を完了する予定です。

現場安全点検の実績

 

∼FY2021

(実績)

FY2022

(実績)

FY2023

(実績)

FY2024

(計画)

安全管理点検実施サプライヤー数

348社 107社 93社 83社
(内訳)

レベル1:要求水準レベル 348社 105社 93社
レベル2:要求水準一部未達レベル 0社 2社 0社
レベル3:要求水準未達レベル 0社 0社 0社

人権への取り組み

エプソンは、「人権方針」において、自社のみならずサプライヤーにおいても人権が尊重されるべきことを宣言しています。人権方針において述べている通り、国連のビジネスと人権に関する指導原則を遵守し世界人権宣言他で述べられた国際的に認められた人権を尊重していくことはもとより、RBAの趣旨に賛同し会員として、サプライヤーにおいてもRBA行動規範が遵守されることに努めています。このような取り組みにより、エプソン製品のサプライチェーン全体において人権が尊重されることを目指しています。

サプライチェーン全体について、以下を含むプログラムを実施しています。
①サプライヤーの人権尊重の理解(要求の理解)の醸成(説明会・教育)
②サプライヤー各社での人権尊重への取り組みの要請
③サプライヤー各社での取り組み状況の点検 (1):セルフアセスメント・監査他
④サプライヤー各社での取り組み状況の点検 (2): 個人・集団の人権の救済と人権課題への対応の支援
人権尊重の理解を醸成するため、エプソンサプライヤーガイドラインにより要請するのみならず、サプライヤー説明会やサプライヤー向け人権セミナーを実施し、多くのサプライヤーに参加していただいております。
また、RBA行動規範の遵守状況を確認するSAQによりサプライヤーにおける人権尊重の取り組み状況を把握し、サプライヤーの拠点ごとに、人権救済の実施はもとより対応が必要な事項をフィードバックし、対応を要請しています。RBA行動規範中でもA.労働の項目を中心に人権に関わる事項は多岐にわたっていますが、ILO中核的労働基準や国連グローバルコンパクトの原則などを考慮し特に重要な人権項目を暫定的に特定し、必須対応事項としています。

(重要項目)
 ・児童労働禁止 (RBA行動規範A2、ILO条約138/182号)
 ・強制労働禁止 (RBA行動規範A1、ILO条約29/105号)
 ・労働時間の適正管理(上限労働時間週60時間、7日に1日以上の休日付与) (RBA行動規範A3)
 ・賃金の適正な支払い(最低賃金以上の支払い・超過時間勤務賃金の適正な支払い、支払日の遵守) (RBA行動規範A4)
 ・人道的待遇(ハラスメント禁止) (RBA行動規範A5)
 ・差別禁止 (RBA行動規範A5、ILO条約100/111号)
 ・結社の自由および団体交渉権 (RBA行動規範A6、ILO条約87/98号)
 ・安全で健康な職場環境の確保 (RBA行動規範B安全衛生、ILO条約155/187号)


さらに、サプライヤー従業員からの通報や監査を端緒として把握された人権への負の影響について、救済に至るまで支援を行っています。
(救済の事例)
・構内請負製造業者において勤務時間が記録装置の破損により記録されておらず、当該期間の超過時間勤務賃金が不払いとなっていた事例 → (救済内容)当該不足賃金の支払いを確認した
・構内常駐の警備会社にて残業代・休日手当の不払い、休日が付与されていなかった事例 → (救済内容)当該手当の支給、休日付与を確認した

エプソンは、サプライヤーおよびサプライヤーの従業員の救済のため「取引先通報制度」を設置しています。「取引先通報窓口」は、人権に関する利用を推奨し、通報・相談を受け付けています。

通報窓口

エプソングループ人権方針

サプライチェーンの人権デューデリジェンス

サプライチェーンにおける環境への取り組み

エプソンは、長期ビジョン Epson 25 Renewedにおける環境の取り組みとして、「『脱炭素』と『資源循環』に取り組むとともに、環境負荷低減を実現する商品・サービスの提供、環境技術の開発を推進する」ことを掲げています。特に、ライフサイクルの初期段階を担う調達活動において、サプライヤーと協働した環境負荷低減を重要課題の一つとして取り組んでいます。

サプライヤーガイドラインにおける環境要件

エプソンのサプライヤーガイドラインにはサプライヤーに遵守していただく行動規範を含んでいます。サプライヤーガイドラインは、取引に関係するQCDやコンプライアンスなどの要請に加えて、CSR要求に関するサプライヤー行動規範(RBAの行動規範)を定めています。環境負荷低減に関し、エプソンはサプライヤーに対して、RBA行動規範の遵守(汚染防止と省資源・有害物質・固形廃棄物・大気への排出など)に加えて、温室効果ガス排出量の削減・資源循環の推進・水資源の管理・化学物質の管理・生物多様性の保全といった環境課題への取り組みや、製品含有化学物質管理の要求、工場などでの環境法規制遵守を要請しています。

サプライヤーガイドラインはこちら


エプソンの温室効果ガス削減に向けた取り組み

エプソンは、GHGプロトコルに準じて把握したスコープ1、2および3のGHG排出量に基づき、Science Based Targets initiative(SBTi)が提唱する科学的目標設定手法に整合した5年から10年先の具体的なGHG削減目標を設定し、SBTiの承認を得ています。スコープ3排出量は自社バリューチェーン全体からの間接的な排出を示しており、エプソンは、中長期目標として2025年までの削減目標を設定しています(事業利益当たりのGHG排出量を削減)。
また、2050年までに事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力にすることを目指す国際イニシアチブ「RE100」に加盟し、全世界のエプソングループ拠点*1で使用する電力を、2023年までに100%再生可能エネルギーとする目標を掲げ、宣言通り2023年12月に再エネ化を完了しました。これにより、年間約40万トンのGHG排出量を継続的に抑制します。
今後は、より高い目標となる1.5℃シナリオに沿った総排出量削減目標の達成に向けて、サプライチェーン全体における排出量削減に取り組んでいきます。
*1 一部、販売拠点などの電力量が特定できない賃借物件は除く


エプソングリーンサプライチェーン

世界的に急務となっている気候変動対策として、エプソンが2023年に達成した再エネ電力への転換は非常に大きな第一歩です。一方で、エプソンのGHG排出量の多くはサプライチェーンに起因しており、エプソンとサプライヤーの連携強化と社会全体の脱炭素化を進めなければなりません。
製造業の中でも早期にグローバルでの再エネ転換を完了した経験と実績を踏まえ、2024年度より「エプソングリーンサプライチェーン」活動を開始しました。説明会やセミナーによって理解醸成と協力の要請を進めるとともに、サプライヤーを対象とした脱炭素目標の設定、再エネ電力の導入支援などを展開していきます。こうした活動を通じ、当社のビジョンに共感するビジネスパートナーを増やし、サプライチェーン全体を巻き込んだ環境負荷低減に挑戦します。

「エプソングリーンサプライチェーン」構築のためのステップ


2024年度国内サプライヤー向け説明会・セミナーの実施状況

実施 内容 参加数
4月 調達方針説明会 221社
6月 エプソングリーンサプライチェーン説明会 115社
7月 脱炭素セミナー 延べ1,271人

※年度中に海外主要サプライヤー向けの説明会・セミナーも予定しています。

環境負荷低減に向けたエンゲージメント活動

サプライチェーンにおける環境負荷の低減を実現するため、説明会などを通じてサプライヤーに対して事業活動での環境負荷低減に向けた協力要請をしています。加えて、環境への取り組み状況や環境負荷の実績を定期的に把握するとともに、サプライヤーの支援活動も実施しています。

サプライヤーに対する直接評価(定期評価)およびCSR詳細評価
直接評価(定期評価)およびCSR詳細評価に、環境に関する質問項目を設け、回答を収集・分析しています。特に、CSR詳細評価の結果をサプライヤーにフィードバックするとともに、ハイリスクサプライヤーへの現場確認や監査などを実施することで改善活動を支援しています。

環境負荷調査
調達額80%以上を占める国内外の主要サプライヤーには、再生可能エネルギーの取り組み方針・状況や再生材の活用状況、水使用量、生物多様性への認識などの調査を行っています。

気候変動リスクへの対応

気候変動を緩和する活動として、再エネの活用やサプライヤーエンゲージメントなどを推進する一方で、顕在化する気候変動による物理リスクへの対応が急務となっています。エプソンのサプライヤーは、大規模な洪水被害が多発するタイを含む東南アジア、潜在的水リスクの高い中国などにも存在します。代表的な気候変動リスクである洪水や干ばつにより、サプライヤーからの納入が停止・遅延すると、エプソン製品の製造および販売に大きな影響が発生し、お客様へのご迷惑につながることを認識し対応を進めています。

生物多様性の保全に向けた取り組みとTNFD提言への賛同

エプソンは、自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures: TNFD)が2023年9月に公言した提言への賛同を表明しました。今後は、TNFDフレームワークに沿って計画の策定を進め、2025年以降に情報を開示するとともに、その内容を順次更新していく予定です。
エプソンは、健全な生物多様性を保つことが事業活動や社員の生活を維持する上で重要だと考えており、生物多様性の保全に対して「事業を通して生物多様性の保全を行う」「生物多様性に対する社員の意識を高める」といった2つの基本的な考え方を持っています。これまでも、気候変動対策、資源循環・省資源、汚染防止・化学物質管理などの環境負荷低減活動により、気候変動や汚染といった生物多様性に影響を与える要因の低減を着実に進めてきました。
TNFDへの賛同後は、これらを含む活動を、TNFDフレームワークに照らし合わせて整理し開示を進めるとともに、バリューチェーン全体での自然・生物多様性への影響を最小化し、地域における生態系との調和に一層取り組むことで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。


エプソンの環境活動の取り組みはこちらをご覧ください
関連情報:エプソンの環境活動

外部団体との連携

外部団体との連携

サプライチェーンにおける人権尊重を含むCSRは、世界的な課題であり、自社の努力・取り組みだけで解決できるものではありません。エプソンは、サプライチェーンCSRに取り組むアライアンスの活動を支持し、積極的に活動に参加しています。アライアンス・団体に加盟し活動することにより、世界におけるさまざまな社会課題の解決および、業界連携によるサプライチェーンCSRの向上に取り組んでいます。

【グローバルに活動するイニシアチブ】
Responsible Business Alliance(RBA)レギュラー会員
(参加企業数)242社(2024年5月現在)

【日本の業界団体】
一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)「CSR委員会」
(参加企業数)29社(2024年4月現在)
(活動例)
・責任ある企業行動ガイダンスの作成、周知活動
・人権DD、グリーバンスメカニズム等の研究
・各国の規制状況の把握・共有  など