方針・体制
サプライチェーンCSRの目指す姿
エプソンは、経営理念において、ビジネスパートナーとの共存共栄を示す「社会とともに発展」することを掲げ、「なくてはならない会社」となることを目指しています。サプライヤーを含む全てのビジネスパートナーに、高い水準の倫理行動を求めると同時に、パートナーの自主自立を尊重することにより、共存共栄が実現するものと考えています。
また、エプソンは、「持続可能でこころ豊かな社会の実現」に向け、2021年度、エプソンが社会課題を起点に取り組むべき4つの最重要課題「マテリアリティ」を特定し、それらを実現するための12の取り組み「サステナビリティ重要テーマ」を設定しました。マテリアリティ「社会的責任の遂行」に関連するサステナビリティ重要テーマとして「責任あるサプライチェーンの実現」を掲げています。重要テーマそれぞれについて、KPIを設定し、推進しています。
さらに、持続可能な社会実現のための国際的な取り組みであるSDGsの17の目標および169のターゲットとサステナビリティ重要テーマを関連付けしています。エプソングループ全体でSDGs目標達成に貢献していきます。
エプソンは、サプライチェーンCSRの強化の取り組みの手段として、電子電機、小売、自動車、玩具業界の企業アライアンスであるResponsible Business Alliance (RBA)のミッションおよび行動規範を支持し、加盟しています。RBA行動規範は、人権、安全衛生、環境、倫理を網羅する国際的に認められた高い水準でのCSR要求項目で構成されています。RBA行動規範は定期的に見直され、共通に取り組むべきレベルを高めています。
エプソンは、RBA行動規範の遵守とともに、サプライチェーンのデューデリジェンス義務など高いレベルでの取り組みが要求されているRBAの会員資格であるレギュラー会員として、自ら取り組むとともに、サプライヤーにも取り組みを要請し、サプライチェーン全体でのCSRの向上に取り組んでいます。
CSR調達方針
エプソンは、経営理念を実現するため、企業行動原則において、重要実施事項を定めています。CSRに関連する人権尊重、環境負荷低減、コンプライアンスの遵守、責任ある鉱物調達などに加え、ビジネスパートナーとの関係構築に向けた基本姿勢をビジネスパートナーとの共存共栄として掲げています。
また、エプソングループ調達基本方針には、調達の基本姿勢として、各国の法令や国際ルールを遵守した調達活動を通じた、人権、環境を含む社会的責任を果たすこと、お取引先様と公平公正・共存共栄を基本とした相互信頼に基づくパートナーシップによる持続可能なサプライチェーンの構築、Q(品質)、C(価格)、D(納期)の安定と適正化によるお客様に価値ある商品やサービスの提供を定めています。
これらの上位方針のもと、エプソングループサプライヤーガイドラインを制定し、エプソンの調達に関する基本的な方針事項をサプライヤーに周知し遵守いただく要請をしています。また、同ガイドラインには、サプライチェーンCSRアライアンスであるResponsible Business Alliance (RBA)が要求する労働、安全、倫理、環境、マネジメントシステムに関する行動規範を含んでいます。
サプライチェーンCSR戦略
エプソンは、経営理念の根底に流れる「信頼経営」の思想に基づき、企業行動原則にのっとってサステナビリティ活動を推進することにより、社会課題の解決への貢献と企業の持続的成長を目指しています。事業活動を行うそれぞれの国・地域において法令を遵守することはもとより、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)やResponsible Business Alliance(RBA)行動規範などの国際的な社会規範を尊重しています。
さらに、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」にもあるように、エプソンの責任は、サプライチェーンにも及びます。会社の方針「持続可能でこころ豊かな社会の実現」をもとに、「人権」と「持続可能性」という視点で中長期のサプライチェーンCSRの重点施策項目を戦略的に定めています。
これらの取り組みは、SDGsが掲げる目標の実現にもつながるものであり、SDGsが目指す2030年を目標年としています。
サプライチェーンCSR推進体制
セイコーエプソンサプライチェーンマネジメント(SCM)担当役員は、SCM推進責任者として、サプライチェーンにおけるCSR推進をグループ全体で連携し活動しています。
目標・活動計画は、本社CSR調達主管部門を事務局に、全事業部およびグループ会社の調達部門メンバーからなるグループ横断の「CSR調達検討委員会」において協議し、サプライチェーンマネジメント(SCM)推進責任者の承認を得て、グループ全体に周知・徹底を行い実行しています。SCM推進責任者は、活動の進捗状況の定期的レビューを行い、さらに、定期的に、取締役が参加する経営会議の一つであるサステナビリティ戦略会議に活動報告し、また、重要事項の審議を受けています。
中期目標(KGI)と年度目標(KPI)
サプライチェーンCSRの目指す姿を実現するため、中期目標(KGI)と年度目標(KPI)を設定し、活動を推進しています。
中期目標(2025年度末)
CSR調達:主要サプライヤーのCSRリスクランクをローリスクにする 責任ある鉱物調達:製品のコンフリクトフリー*1 を実現し、製品情報を開示します |
*1 RMIのResponsible Minerals Assurance Program(RMPA)で認証されたスメルター・製錬業者(CFS)のみを使用していること
2023年度実施項目と実績
実施項目 KPI | 実績 | |
---|---|---|
1 | CSRレベルの向上 CSR SAQの結果(主要直接材サプライヤー*1): ハイリスク0%(0社)、ミドルリスク4%(20社)以下 |
主要直接材サプライヤー ハイリスク0%(0社/0事業所)、ミドルリスク4.2%(23事業所) |
2 | 紛争鉱物調査の強化: 1) 調査回答回収率100% 2) 非CF認証スメルター*2利用サプライヤーへのフィードバック:100% |
1) 100%(915社) 2) 100%(フィードバック1,500件以上) |
3 | サプライヤーとのCSRエンゲージメントの強化: 1) サプライヤーCSRミーティングの実施:実施生産拠点率100% |
1) 94%(実施拠点15拠点) |
*1 主要直接材サプライヤー: エプソンの製品組立に必要な原材料や部品、加工委託のうち、一次サプライヤーを取引額の多い順から並べ、その取引額の合計が総取引額の80%を超えるまで上位から選択したサプライヤー
*2 非CF認証スメルター:Responsible Mineral Initiative(RMI)のResponsible Minerals Assurance Program(RMAP)によって認証された製錬所(認証スメルター)以外の製錬所もしくは精製所
2024年度実施項目とKPI
実施項目 | KPI | |
---|---|---|
1 | サプライチェーンCSRレベルの維持・向上 | 1) サプライヤーガイドライン書面同意の取得率:直接材*1および間接材*2の主要サプライヤーの95%(2,500社) 2) CSR SAQのリスクレベル:直接材および間接材の主要サプライヤーのハイリスク*3 0%(0社) |
2 | 紛争鉱物調査の強化 | 1)調査回答回収率:100% 2)サプライヤーへの製錬所/精製所情報の提供:毎月1回(12回/年) |
3 | サプライチェーンBCM*4強化 | 1) サプライチェーン途絶による販売影響:ゼロ |
*1直接材:製品組立に必要な原材料や部品、加工委託など
*2 間接材:直接材以外の工場消耗品、機械装置、広報宣伝、物流、業務委託、人材派遣など
*3ハイリスク:RBAオンラインによる場合はRBAが付与するレベルを採用し、エプソン独自SAQによる場合は65点未満
*4BCM:事業継続マネジメント(Business Continuity Management)
社外からの評価
サプライチェーンCSRは、ESG評価のS(Social)の一部として、多くの評価機関が評価対象としています。サプライチェーンCSRに関する調査項目には、方針の策定、人権デューデリジェンスの実施、責任ある鉱物調達の実現などが含まれます。
エプソンのサプライチェーンCSRの取り組み・成果は、様々なESG評価機関より高い評価を得ています。
EcoVadis社(本社:フランス)のサステナビリティ(持続可能性)評価においては、セイコーエプソン(株)は、2024年は「プラチナ」メダルに格付けされました。世界の調査対象約130,000社の上位1%に対して付与されるプラチナ*1メダルが2020年に新設され、当社は2020年から2022年まで3年連続してプラチナを付与されており、継続的に高い評価を得ています。同評価は、総合点のほか、環境、労働と人権、倫理、持続可能な資材調達それぞれについてスコア付けがされます。サプライチェーンにおける人権の取り組み、環境の取り組みや、責任ある鉱物調達などを評価項目とする「持続可能な資材調達」において、高い評価を得ています。
*1プラチナ:Ecovadisのサステナビリティ(持続可能性)評価において、2020年に新設された格付け。上位1%および特定のスコアが要求されます(プラチナ要求スコア:2020年から2022年は75点、2023年評価は78点、2024年1月から6月は80点、2024年7月以降81点)