脱炭素
パリ協定が示す脱炭素社会への変革に向けて、エプソンは生産(スコープ1、2)、バリューチェーン(スコープ3)における、温室効果ガス排出量の削減を基本とした気候変動対策に取り組んでいます。また、省エネルギー商品の開発やインクジェット技術のさらなる展開によって、社会全体へ貢献します。









目指す姿
温室効果ガス(GHG)削減に向けて
2015年のパリ協定において、世界の平均気温の上昇幅を産業革命前から2℃未満に十分に抑えるという世界共通の長期目標(2℃目標)が定められました。この「2℃目標」と「長期ビジョン Epson 25 Renewed」の実現に向けて、エプソンのバリューチェーンにおける中長期のGHG削減目標を以下の通り設定しています。
なお、本目標は科学的な知見と整合した削減目標として、SBTイニシアチブ(Science Based Targets initiative)の承認を受けています。
GHG削減目標
スコープ1+2 | 2025年度までに2017年度比でGHG排出量を34%削減 * 2021年11月に1.5℃目標に更新 |
---|---|
スコープ3 | 2025年度までに2017年度比で事業利益当たりのGHG排出量を44%削減 <対象> カテゴリー1:購入した物品・サービス カテゴリー11:販売した製品の使用 |
スコープ1:事業者の燃料などの使用による直接排出
スコープ2:電力などのエネルギー起源の間接排出
スコープ3:自社バリューチェーン全体からの間接的な排出
SBT達成シナリオ
事業活動に伴う排出量(スコープ1、2)と、その他の間接的な排出量(スコープ3)の2025年度の削減目標を達成するため、お客様やパートナーの共感を高めながら、環境配慮型商品・サービスの提供による事業成長と企業価値向上の実現に取り組んでいきます。
スコープ1、2排出量削減の取り組み
全社横串組織の下、各拠点は生産革新や設備更新・投資、再生可能エネルギーの活用などの削減施策を行うことで、脱炭素の実現性を高めています。
排出量削減の主な施策
- 生産革新
- 設備更新(投資):基礎設備、除害装置、太陽光発電など
- 再生可能エネルギー活用:地域の自然資源を活用した再エネ電力の調達など
- その他:電力会社のGHG排出係数改善など
再生可能エネルギーの活用
Epson 25 Renewedの実現に向けて、成長戦略に連動した生産増に伴うエネルギー使用量の増加が見込まれています。そのような見通しの状況下での目標達成に向け、各事業・各拠点での着実な削減活動とともに、再生可能エネルギーの活用も進めています。
2021年には、2050年までに事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力にすることを目指す国際イニシアチブ「RE100」に加盟しました。全世界のエプソングループ拠点*1で使用する電力を、2023年までに100%再生可能エネルギーとする目標を掲げています。
*1 一部、販売拠点などの賃借物件は除く
カーボンプライシングの取り組み
企業や家庭など、社会の広範囲にわたり炭素の排出に対して価格を付けることにより、削減のための活動やイノベーションへの期待が高まっています。エプソンは、GHG排出量削減を目的とした投資に関する執行前の評価(フィージビリティ・スタディ)としてカーボンプライシングの考えを取り込んだ投資回収期間の判断基準やガイドラインを整備し、2018年度からの試行導入を経て2020年より正式運用を開始しています。
スコープ3原単位削減の取り組み
エプソンのスコープ3排出量のうち最も多いのは、お客様の電力使用に当たるカテゴリー11、次いで原材料の調達段階に当たるカテゴリー1です。
Epson 25 Renewedでは、環境価値を提供し、お客様とともに環境負荷を低減することを目指しています。各商品ジャンルで商品価値と連動した⽬標(指標)を設定し、最終的に経営指標と連動した事業利益当たりのスコープ3排出量を削減していく野心的な目標を掲げています。
削減貢献量
エプソンのインクジェット技術は、印刷時に熱を使わないため電力消費が抑えられ、消耗品や定期交換部品の少ない、省資源化を実現した技術です。このため、レーザープリンターを置き換えることで、お客様の電力削減などにつながり、社会全体における環境負荷を減らすことができます。また、エプソンの小型射出成形機は優れた環境性能を持ち、小さな部品を成形する際には通常の射出成形機と比べ、エネルギー使用量や端材の発生量を減らす効果が期待できます。2022年度はビジネスインクジェットプリンターとレーザー光源プロジェクターに加えて、デジタル捺染と乾式オフィス製紙機、小型射出成形機によるに削減貢献量*1を算出したところ、297千t-CO2eとなりました。
*1 第三者のGHG排出回避量を推定:従来の製品や作業プロセスにエプソンの製品を導入したことによる削減貢献量を算出(フローベース)。実際の削減量とは異なります。
(1)レーザープリンターからインクジェットプリンター (2)フラットパネルディスプレイからレーザー光源プロジェクター (3)アナログ捺染からデジタル捺染 (4)デジタル捺染の染料インクから顔料インク (5)市販の再生紙から乾式オフィス製紙機の再生紙 (6)30トン射出成形機から小型射出成形機
関連情報
リスクと機会(TCFD提言への対応)
2017年6月、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)が最終報告書を公表しました。TCFDとは、企業に対し中長期にわたる気候関連のリスクと機会を、それらの財務に関する情報として公開を求めるものです。長期にわたり、影響の範囲と規模の予測がつかない気候変動という事象に対して、さまざまな状況変化への適応能力が 高いレジリエントな経営や企業体質が求められていると受け止めています。
気候変動(パフォーマンス)
生産での取り組み
エプソンは、「再エネへの転換」「省エネによるCO2の排出量削減」「CO2以外の温室効果ガスの排出量削減」を活動の主軸に置き、海外も含む全ての事業所・関係会社で取り組んでいます。
2022年度総括
エプソンは、各拠点における省エネ活動の推進に加え、再生可能エネルギーの活用を進めることで、SBTイニシアチブに承認された、2025年までにスコープ1、2の温室効果ガス(GHG)を2017年度比で34%削減するという目標を掲げています。2022年度は、従来1%に満たなかった再生可能エネルギーの比率を約56%(電力ベースでは79%)まで高めるなど、目標の達成に向けて大きく前進しました。
中期経営計画の実現のため、エネルギー使用量の増加が見込まれていますが、エプソンは今後も、生産革新を含めた削減施策を中心に、再エネ電力の活用と合わせた目標達成への取り組みを進めていきます。

関連情報
バリューチェーンでの取り組み
エプソンは事業活動に伴う排出量(スコープ1、2)の削減活動に積極的に取り組んでいますが、バリューチェーンで捉えた場合は、エプソンの生産拠点などからの直接・間接的な排出量よりも、それ以外の間接的な排出量(スコープ3)が多くを占めます。その中でも特に影響の大きい、製品の使用段階(カテゴリー11:販売した製品の使用)や原材料の調達(カテゴリー1:購入した物品・サービス)の、上位カテゴリー二つをSBT(science-based target)に組み込んでいます。今後は、事業利益あたりの排出量削減の原単位目標から、より高い目標となる1.5℃シナリオに沿った削減目標に切り替えていきます。

物流での取り組み
エプソンは、商品・部品と排出物の効率的な輸送を通じて、温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいます。商品の小型化によって輸送効率の向上を図るとともに、物流拠点の見直し、積み方やパッキングの工夫による積載効率の向上、発着頻度や便数の見直しなどの施策を継続的に実施しています。
サプライヤーとの連携
サプライチェーンCSRとして、エプソンとサプライヤーが同じ姿勢で行動することにより、協働で社会課題の解決に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献します。
関連情報
再生可能エネルギーの活用
2017年度時点におけるエプソンGHG排出量の7割以上は電力由来のものでした。脱炭素の実現に向け、先行して使用電力の再生可能エネルギーへの転換に取り組んできた結果、2022年度は電力由来のGHG排出量の比率は約4割に低下しています。国内外において、水力や風力発電といった各地域における最適な再エネ電力の選択や、オンサイト発電への積極的な投資を行い、電力使用量の79%まで再生可能エネルギーの比率を伸ばしています。

2021年4月には、2050年までに事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力にすることを目指す国際イニシアチブ「RE100」に加盟しました。全世界のエプソングループ拠点*1で使用する電力を、2023年までに100%再生可能エネルギーとする目標を掲げています。
世界中の拠点で再生可能エネルギーの活用を推進
日本国内において長野県エリアでは、長野県公営水力を活用した水源豊かな信州産のCO2フリー価値付き電力「信州Greenでんき」を活用し、温室効果ガスの削減とエネルギーの地産地消を同時に実現しています。また、半導体工場を擁しエプソンの国内電力使用の約半数を占める東北エリアでは、奥羽山脈の地熱を活かした水力ミックスのCO2フリー価値付き電力「よりそう、再エネ電気」を活用するなどし、国内全ての拠点で使用する電力の再生可能エネルギーへの転換を2021年11月に完了しました。
海外の生産および販売拠点では、2023年末までに再エネ電力への転換を目指し取り組んでいます。フィリピンの生産拠点では工場屋根に設置したメガソーラーによる自家発電に加え、地熱と水力ミックスの電力に2021年1月から切り替えています。またインドネシア・ブカシの生産拠点では、2022年7月からバイオマス発電の使用を開始しています。火山島の資源を生かし活発に開発が進む地熱発電や、パーム油生成過程での副産物であるPKS(アブラヤシ殻)とウッドチップを燃料とした持続可能なバイオマス発電の調達は、地域特性に応じたエネルギー活用の事例となります。

オンサイト発電の事例
*2オンサイト型自家消費太陽光発電サービス
自然エネルギー拡大に向けた提言への賛同
再生可能エネルギー(自然エネルギー)の活用は重要なテーマであり、エプソンでも中長期での拡大を計画、実施しています。しかし、再生可能エネルギーの拡大には、供給量・供給地域および費用などの課題があると認識しています。それらは個社では対応のできないものであり、その解決策の一つとして、下記の政策提言は重要な提言であると考え、賛同することにしました。これらの提言が実現することで、将来の気候変動への影響を最小化する活動が、より実現しやすくなります。
気候変動対策は、日本のみならずグローバルな取り組みが不可欠であり、今後もこのような提言への賛同を含め、脱炭素化に向けた活動を継続していきます。なお、業界団体の加盟・継続に当たっては、業界団体の気候変動分野の取り組みが当社の基本方針と合致しているか確認しています。
日付 | 提言内容 | 事務局 |
---|---|---|
2023年6月 | 自然エネルギーの電力の利用拡大に向けた課題と提言 | 公益財団法人 自然エネルギー財団 |
2023年4月 | 再生可能エネルギーの導入加速と実効性の高いカーボンプライシングの早期導入を求めるメッセージ | 気候変動イニシアティブ(JCI) |
2022年6月 | 再生可能エネルギーの導入加速を求めるメッセージ | 気候変動イニシアティブ(JCI) |
2021年4月 | パリ協定を実現する野心的な2030年目標を求めるメッセージ | 気候変動イニシアティブ(JCI) |
2021年1月 | 再生可能エネルギー目標引き上げを求めるメッセージ 2030年度の再生可能エネルギー電力目標を40~50%に |
気候変動イニシアティブ(JCI) |
2020年8月 | 気候変動に取り組む企業が求める3つの戦略と9つの施策 自然エネルギーの電力を利用しやすい国に |
・公益財団法人 自然エネルギー財団 ・一般社団法人 CDP Worldwide-Japan (CDP Japan) ・公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン) |
関連情報
グローバル主要環境データ
エプソン、長野県内全ての拠点の使用電力を100%再生可能エネルギー化
長野県内の再エネ電源の開発加速に向け、県と民間2社で「信州Green電源拡大プロジェクト」開始
国内拠点の使用電力を100%再生可能エネルギー化