責任ある鉱物調達
責任ある鉱物調達の対応方針・考え方
コンゴ民主共和国(DRC)または隣接国のような紛争地域におけるスズ、タンタル、タングステン、金(あわせて3TG)の採掘や取引から得られる利益は、重大な人権侵害を引き起こす武装勢力や反政府勢力の資金源となっている場合があることが知られています。また、コンゴ民主共和国南部のコバルト鉱山は児童労働の温床となっている場合があると指摘されています。鉱物の採掘および取引は社会および環境リスク伴うものであると考えています。
エプソンは、人権侵害、環境破壊に一切関わらないことを企業方針としています。エプソン製品に使用する鉱物の調達において、いかなる重大な人権侵害も容認しません。また、人権侵害を行う相手先とのビジネス関係の構築や、社会経済や環境の悪化につながる行為に加担いたしません。
責任ある鉱物調達が、解決すべき社会課題であるとの経営認識のもとに、エプソンは企業行動原則において「責任ある鉱物調達」への取り組みを謳い、マテリアリティの「社会的責任の遂行」の重点テーマとしています。また、Responsible Business Alliance (RBA)およびResponsible Mineral Initiative (RMI)が掲げるミッションや取り組みを支持し、加盟しています。
上記のように責任ある鉱物調達の体制を整備し、イニシアチブに参加するとともに、サプライヤーの協力を得ることにより、「責任ある鉱物調達」の実現に向けて取り組んでまいります。
責任ある鉱物調達の取り組み
エプソン製品に使用される鉱物の責任ある調達の実現のため、経済協力開発機構(OECD)の「紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデューデリジェンス・ガイダンス」に従った5段階の枠組みに従い、取り組みを行っています。
5段階の枠組み・エプソンの取り組み
① 強固な企業管理システムを構築する
(エプソンの取り組み:方針の設定、調査プログラム導入、サプライヤーとの契約締結、苦情処理メカニズムの構築)
② サプライチェーン内のリスクを特定、評価する
(サプライヤー調査によるリスク特定と、リスク評価)
③ 特定されたリスクに対応するための戦略を立案し、実施する
(リスク評価結果の経営報告、リスク管理計画・実施)
④ サプライチェーン内の特定ポイントにおいて、独立の第三者によるデューデリジェンスの監査を実施する
(RMIが実施するRMAPプロセスによる監査を支持)
⑤ サプライチェーンデューデリジェンスに関して報告を行う
(Webサイトおよび、統合レポートなどの媒体により開示)

5段階の枠組み・エプソンの取り組み
Step 1: Establish strong company management systems.
Epson establishes a Group-wide policy, implements a supply chain due diligence program, concludes written agreements with suppliers, and establishes a grievance mechanism.
Step 2: Identify and assess risks in the supply chain.
Epson identifies and assesses risks in its supply chain by conducting surveys.
Step 3: Design and implement a strategy to respond to identified risks.
Epson reports the results of risk assessments to the management, establishes risk mitigation plans, and monitors the performance.
Step 4: Carry out an independent third-party due diligence audit at specific points within the supply chain.
Epson supports audits conducted by RMI using the Responsible Minerals Assurance Process (RMAP).
Step 5: Report on supply chain due diligence.
Epson discloses its due diligence status on the company's official website, in its annual integrated report, and in other media formats.

1. 強固な企業管理システムの構築(上記の5段階の枠組み①)
(1)方針
エプソンは、責任ある鉱物調達が、取り組むべき重要な社会課題であると認識しています。経営理念に基づく、役員・社員が共有するべき価値観、考え方および行動の拠り所を示す最上位の位置づけの「企業行動原則」において調査体制の整備を掲げ、会社方針としています。この企業行動原則は、社会からの要請などを反映するため定期的に見直しをはかり、改定は取締役会決議により行っています。さらに、「サステナビリティ重要テーマ」として取り組み内容を定め、目標を設定しています。方針策定や結果については、取締役が参加する経営会議体である経営戦略会議において審議・報告しています。
企業行動原則 原則5. 実効あるガバナンスとコンプライアンス 私たちは、実効ある企業統治と内部統制の下で、法規制などのルールを守り、高い倫理観をもって、全ての活動にあたります。 5.7 商品に使用される鉱物の調査体制を整え、人権侵害・紛争・環境破壊などとの関わりを持つ鉱物の使用回避に向けた責任ある鉱物調達に取り組む。 |
(2)調査プログラム
鉱物調査の手順として、「エプソングループ鉱物調査基準」を制定し、グループ全体に適用し、推進しています。同基準は、経済協力開発機構(OECD)発行の「紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデューデリジェンス・ガイダンス」(以下、OECDデューデリジェンスガイダンス)に準拠し、エプソン製品に残留する全ての部品や材料を対象にした調査プログラムとなっています。調査は、Responsible Minerals Initiative(RMI)が提供するConflict Minerals Reporting Template (CMRT_3TGの調査用)とExtended Minerals Reporting Template (EMRT_コバルト、マイカを含むその他の鉱物用)を用いて、紛争鉱物(3TGおよびコバルト)について、部品や材料のサプライヤーの協力のもとに上流となる製錬/精製業者を特定しています。サプライチェーンに関する回答を得ることにより、原産国の確認も行っています。
エプソンは、RMIの製錬/精製業者にリスクがないことを認証するプログラムであるResponsible Minerals Assurance Process(RMAP)で認証された製錬/精製業者(Conflict Free Smelter、以下CFS)のみからの鉱物調達をサプライヤーに要請しています。これを実現するため、サプライヤーからの回答において、CFSを確認できない場合には、追加の確認、材料やサプライチェーンの変更をお願いするなどして、リスクの回避・緩和に取り組んでいます。
また、世界中の生産拠点において、CSR調達サプライヤー説明会をはじめとして、サプライヤーと対話する機会を利用して、エプソンの方針への理解、調査精度向上への取り組み要請、紛争鉱物対応動向の共有を図っています。また、サプライヤー向けに調査帳票の教育や調査の理解醸成にも努めています。責任ある鉱物調達を実現するため、サプライヤーとともに取り組んでいます。
(3)サプライヤーとの契約
サプライヤーに対して責任ある鉱物調達方針への支持とともに「エプソングループ サプライヤーガイドライン」と「エプソンサプライヤー行動規範」(RBA行動規範)遵守を要請しています。また、直接材サプライヤーには「サプライヤー行動規範(RBA行動規範)」および鉱物調査への協力にについて書面同意を提出していただいています。
(4)苦情処理メカニズム
取引先通報窓口を整備し、鉱物リスクに関するサプライヤーからの連絡を受け付けています。
2.サプライチェーン内のリスクの特定、評価(上記の5段階の枠組み②)
(1)リスク特定・評価
エプソンは、OECDデューデリジェンス・ガイダンスに準拠した「エプソングループ鉱物調査基準」に従い、Responsible Mineral Initiative(RMI)が提供する調査帳票CMRT、EMRTを使用して調査を実施しています。CMRT、EMRTともに、回答単位を①会社全体②製品別③指定対象から選択できるように設計されていますが、エプソン製品に使用される部品・材料に含まれる鉱物の製錬/精製業者を確実に確認するため、サプライヤーに対して、納入製品を特定した回答をお願いしています。このように調査することにより、リスクを特定することが可能となり、実効性のあるデューデリジェンスにつながるものと考えています。
また、エプソンは、製錬/精製業者にリスクがないことを認証するRMIのプログラムであるResponsible Minerals Assurance Process(RMAP)の認証状況や、顧客から得るリスク情報、更には、各国における取引規制対象企業情報などをリスク判断に用いています。
(2)調査結果
2024年は、全ての事業において3TGおよびコバルトを調査対象とし、3TGは調査対象となる依頼サプライヤー1,041社のうち1,037社(99.6%)からあわせて2,728通の回答帳票を受領しました。また、コバルトは依頼サプライヤー939社のうち930社(99.1%)から2,291通の回答帳票を受領しました。サプライヤーからの回答を分析した結果に基づき、おおよそ1ー2か月以内に各サプライヤーに個別のフィードバックを行いました。リスクが特定されたサプライヤーには、改善計画書の提出を要請し、各サプライヤーにおいてリスク低減対応を取っていただいています。
確認したリスク(例)
- 特定できない製錬/精製業者が含まれる
- RMAPの適合認定を受けていない製錬/精製業者が含まれる(高リスクエリアの製錬/精製業者を含む)
3TG調査結果
2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
合計 | スズ | タンタル | タングステン | 金 | |||
特定製錬所/精製所数 | 349 | 357 | 386 | 95 | 46 | 58 | 183 |
CFS認定製錬所/精製所数*1 | 229 | 234 | 243 | 74 | 40 | 37 | 92 |
Active製錬所/精製所数*2 | 16 | 5 | 4 | 1 | 0 | 1 | 2 |
調査票回収率 |
99% |
100% |
99.6% |
- | - | - | - |
*1 Responsible Mineral Initiative(RMI)のResponsible Minerals Assurance Program(RMAP)によってConformant認証された製錬所/精製所
*2 Responsible Mineral Initiative(RMI)のResponsible Minerals Assurance Program(RMAP)によってActive認証された製錬所/精製所
* 製品ごとの詳細情報は、お取引のある販売会社の担当にご依頼ください。
コバルト調査結果
2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
---|---|---|---|
特定製錬所/精製所数 | 69 | 80 | 98 |
CFS認定製錬所/精製所数*1 | 35 | 46 | 54 |
Active製錬所/精製所数*2 | 7 | 4 | 8 |
調査票回収率 |
97% | 98% | 99.1% |
*1 Responsible Mineral Initiative(RMI)のResponsible Minerals Assurance Program(RMAP)によってConformant認証された製錬所/精製所
*2 Responsible Mineral Initiative(RMI)のResponsible Minerals Assurance Program(RMAP)によってActive認証された製錬所/精製所
* 製品ごとの詳細情報は、お取引のある販売会社の担当にご依頼ください。
3TG調査結果(製品・調達部品ベース)
エプソンでは、製品のコンフリクトフリー化を目指し、さらに、顧客に開示する情報の精度を高めるため、製品と紐づけた調達部品ベースでの情報も管理しています。2024年度調査の結果、製品別では、半導体製品* などにおいてRMIの認定を受けた製錬所/精製所のみを使用していることを確認できました。また、調達部品別では、3TGの対象部品・材料約5.8万点に対して、約3万点(50%)について、RMIの認定を受けた製錬所/精製所およびアクティブ製錬所/精製所のみを使用していることを確認できました。
* 半導体製品に関連する特定できた製錬所/精製所情報(名称・所在国等)は、「セイコーエプソン(IC) サプライチェーン上のRMIによって認識されている製錬所/精製所リスト(PDF300KB)」をご覧ください。微細合金粉末に関連する特定できた製錬所/精製所情報は、「エプソンアトミックスサプライチェーン上のRMIによって認識されている製錬所/精製所リスト(PDF180KB)」をご覧ください。製品ごとの詳細情報は、お取引のある販売会社の担当にご依頼ください。
3. 特定されたリスクに対応するための戦略の立案・実施(上記の5段階の枠組み②)
調査の結果、特定されたリスクに対し、対象となるサプライヤーに対し、リスク対応の要請を行い、リスク低減対応を行いました。
リスク管理計画
- サプライヤーに対して、取りうるリスク低減対応の説明・提案
- サプライヤーに、特定されたリスクへの対応計画の提出を依頼
サプライヤーにおけるリスク低減対応状況の追跡・監視
- サプライヤーと個別の会議を持ち、リスクが特定された部品、サプライチェーンの状況を確認
- サプライヤーから調査結果の再提出を受け、内容を再分析
具体的なリスク低減の例
- 金を含む複数の鉱物についての使用する製錬/精製業者が特定できないサプライヤーについて、再確認を依頼。回答の再提出を受け、当社納入部品に使用される製錬業者を確認した。
- スズを使用している部品のサプライヤーについて、リスクがないことを確認できない製錬/精製業者が含まれていたため、RMAPの受審もしくは調達元(あるいは「調達ルート」)の変更を要請。結果、当該製錬/精製業者が使用されていないことを確認した。
4. サプライヤーへの情報提供・教育
エプソンは取り組むべき重要な社会課題として「責任ある鉱物調達」の実現を掲げておりますが、サプライヤーの理解とご協力が不可欠のものであることから、サプライヤーへの情報・教育の提供に努めています。
年間を通じて、以下のツール・情報を提供することにより、サプライヤーにおいて常にアップデートされた最新情報を容易に利用していただけるようにしています。
- 製錬所/精製所のRMAP認証情報を確認するためのチェックツール(エクセル)
- 製錬所/精製所のRMAP認証更新情報
また、調査回答を提出いただいたサプライヤーに対して、不備・不足など分析結果の詳細をフィードバックしています。これは、サプライヤーにおいて対応(デューデリジェンス)いただきたい内容を明確にお伝えすることを目的としたものであり、調査票ごとにフィードバックシートを発行しています。
これに加えて、サプライヤーからの要望に応じて、調査の支援、調査票の解説などを個別に行っています。
調査依頼のタイミングに、サプライヤー向けの「責任ある鉱物調達」に関する説明会を毎年実施し、鉱物問題の世界的な動向、エプソンの方針、OECDデューデリジェンスガイダンスの説明、および、調査実施方法・調査票の回答方法などについて、継続的な教育をおこなっています。2024年は、(延べ)1,047名のサプライヤーに参加いただきました。
さらに、2023年より、サプライヤーにおける責任ある鉱物調達の仕組みおよび取り組みに関して、OECDのデューディリジェンスガイダンスの枠組みに合致していることを確認するため、レビューを行っています。レビューを通じて、サプライヤーの調査方針、調査プログラム、当社への報告に繋がる調査回答作成プロセスなどを確認し、不足・不備がある場合には、是正の要請と支援をしています。このようなサプライヤーとのコミュニケーションにより、サプライヤーの体制強化や調査能力の向上に努めています。
5. 第三者監査の受審
(1)エプソンは、製造拠点において、RBAが実施するValidated Assessment Program (VAP)監査を受審しています。
2023-24年にVAP監査を受審した拠点全てにおいて、責任ある鉱物調達(RBA行動規範D7)についてRBAが要求する基準(RBA VAP監査基準E3)に対して適合となっています。
法人名 | 所在国 | 主な製造製品 |
---|---|---|
PT. Indonesia Epson Industry | インドネシア | プリンター製品 |
PT. Epson Batam | インドネシア | プリンター製品 |
Epson Engineering (Shenzhen) Ltd. | 中国 | プリンター製品 プロジェクター製品 ロボット製品 |
Epson Precision (Philippines), Inc. | フィリピン | プリンター製品 プロジェクター製品 |
Epson Precision (Thailand) Ltd. | タイ | デバイス製品 |
Epson Precision Suzhou Co., Ltd. | 中国 | デバイス製品 |
Epson Precision Malaysia Sdn. Bhd. | マレーシア | デバイス製品 |
※RBA行動規範D7:責任ある鉱物調達(概要)
製造する製品に含まれるタンタル、スズ、タングステン、金、コバルトの原産地と調達経路について、経済協力開発機構(OECD)の「紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのガイダンス」または同等に認知されたデューディリジェンスの枠組みに合致した方法で調達されていることを合理的に保証するための方針を策定し、デューディリジェンスを実施しなければなりません。
RBA監査の詳細はこちら
(2)エプソンは、責任ある鉱物調達の仕組みおよび取り組みに関して、OECDのデューディリジェンスガイダンスの枠組みに合致していることを確認するため、第三者の審査機関によるレビューを実施しました。レビューの結果、取り組みに関する調査方針、調査プログラム・報告、社内の体制整備、計画に従った調査の実施と、取り組みに関するWebサイトでの開示情報の内容の間に不一致は認められなかったとの意見の表明を受けました。
6. 外部団体との連携
紛争鉱物問題は世界的な課題であり、自社の取り組みだけで解決できるものではありません。鉱物問題に取り組むことを目的に設立されたResponsible Minerals Initiative(RMI)や日本における業界団体(JEITA)の活動を支持し、積極的に活動に参加しています。また、エプソンは、製錬所および精製所の監査の費用を負担することも川下企業の責任であるとの考えから、RMIの監査基金に寄付を行っています。
エプソンは、アライアンス・団体の活動を通じて、世界における紛争鉱物の課題解決への取り組みおよび、業界連携によるサプライチェーンの紛争鉱物調査活動の向上に取り組んでいます。
【グローバルに活動するイニチアチブ】
Responsible Minerals Initiatives(RMI)
(参加企業数) 530社超
(活動例)
・デューデリジェンス
・認証プログラム
・共通テンプレート(調査帳票)の開発・提供

【日本の業界団体】
一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)「責任ある鉱物調達検討会」
【日本の業界団体】
一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)「責任ある鉱物調達検討会」
(参加企業数) 50社超
(活動例)
・RMIへの参加/GeSIなどの国際的なイニシアチブと協力
・各国・地域の規制状況の把握・共有
・サプライヤーへの教育・啓発
・RMI未認証製錬所への監査受審の働きかけ など