労働安全衛生
労働安全衛生の考え方
エプソンは、「安全・健康・コンプライアンスは業績に優先する」を念頭に、安全衛生環境の維持向上と心身の健康保持増進が企業体質の根幹を成すものと考え、グループ全ての働く人が安心して活き活きと働けるよう、全世界で労働安全衛生活動を行っています。
エプソンは2000年度に、国際労働機関(ILO)の指針に準拠した労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)をベースに、「安全」「健康」「防火・防災」「施設」を4本柱とした独自の仕組みである「NESP(New Epson Safety & Health Program)」と「NESP基本方針」を制定しました。2022年4月、役員・従業員・協働者にエプソンの労働安全衛生活動をより分かりやすく伝えるために、「NESP」という呼称を「労働安全衛生」に統一すると共に、「労働安全衛生基本方針」として改定しました。

コミットメント
エプソンは、グループの労働安全衛生活動を国際規格であるISO45001に基づく活動に進化させ、職場の安全衛生環境のさらなる向上を実現していきます。安心・安全・健康は、会社の命であることを肝に銘じ、各国・地域の法令や社内規程を遵守するとともに、こころとからだの健康維持・増進に努め、全員一丸となって「重大労働災害・事故ゼロ」「業務上疾病ゼロ」を達成し、「持続可能でこころ豊かな社会の実現」に向けた基盤づくりをしていきます。
執行役員 人的資本・健康経営本部長
統括安全衛生管理者 阿部 栄一
労働災害の発生状況
2022年度は重大労働災害*1が0件でした。活動により動作の反動、無理な動作は10件が3件へ減少しましたが、転倒が8件から18件へ増加しました。2021年度、海外の倉庫においてフォークリフトによる重大労働災害が発生したことを受けて、2022年度から製造に加えて販社を含めた指標管理にあらため、労働安全衛生活動を深化しました。販社の倉庫現場確認、機器点検を強化しましたが、フォークリフトの発生傾向は押さえきれませんでした。動画を活用したフォークリフト作業に関する安全教育、全推進体を対象とした労働安全衛生の会議を通じて、再発防止活動を継続して展開しています。
労働災害度数率・強度率*2は販社を加えたことで前年より増えましたが、全国平均を下回る水準で推移しています。
*1 死亡・後遺障害およびこれに準ずる災害
*2 労働災害に関する指標で、厚生労働省の計算式に準じて、算出
労働災害度数率推移 労働災害強度率推移
労働損失日数は、以下の基準により算出しています。
・死亡 :7,500日
・永久全労働不能 :身体障害等級1~3級の日数(7,500日)
・永久一部労働不能:身体障害等級4~14級に応じて、50~5,500日
・一時労働不能 :所定休日も含めた暦日数の延べ休業日数に300/365を乗じた日数
2022年度労働災害 型別の件数
(単位:件)
転倒 | 激突 | 激突され | 発火、発煙 | 動作の反動、
無理な動作 |
その他 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
18 | 6 | 6 | 5 | 3 | 10 | 48 |
* 件数の定義: 国内は通院1日以上、海外は休業1日以上
安全管理の取り組み
2023年度の活動目標は、以下の通りです。
・重大労働災害・事故ゼロ
・度数率 0.30以下 強度率 0.006以下
2023年度に向けての施策
2022年度の事故労災を分析し、2023年度は以下の活動を重点的に取り組み、再発・未然防止を図っていきます。
- 転倒: 危険予知活動による転倒防止を継続し転倒への意識を高め、在宅勤務での危険性も踏まえ労働災害の撲滅に向けて推進する。
- 激突・激突され: 12件中5件は倉庫で発生していることから、フォークリフトにフォーカスして、現場視察、機器点検、教育による安全性強化活動を推進する。
- 発火・発煙: 電気部品:安全回路・部品の寿命を把握し、作業工程の確認と最適なメンテナンス対応方法で管理を行う。
「ISO45001」認証の取得状況
エプソンは、社員を労働安全衛生上のリスクから守るために、労働安全衛生マネジメントシステムの国際標準規格「ISO45001」認証を製造拠点中心に3カ年で計画的に取得していきます。2022年度、海外製造15拠点のうち5拠点で取得率は33%、国内製造14拠点のうち4拠点で28.5%、合計29拠点で31.0%になります。
グローバルな労働安全衛生活動の情報共有
エプソンは、国内外の生産拠点において、経営層と実務者層、労使間、それぞれの階層で情報共有する会議を定期的に開催し、労働安全衛生活動のレベルアップを図っています。
経営層では、半期ごとに、国内拠点・海外拠点に分け、各事業所・関係会社の安全衛生活動のトップである事業部長・関係会社社長クラスを集め、担当役員参加の「総括安全衛生管理者会議」を開催し、労働安全衛生活動の現状・課題を共有し、レベルアップを図っています。
労使間では月例の安全衛生委員会を開催しています。労働者側からの意見を反映して現場の安全衛生の向上に取り組んでいます。

日本の拠点での総括安全衛生管理者会議
「安全ニュース」を用いた社内啓発
エプソンは、グループ内で発生した全ての労働災害と事故について分析を行い、発生原因を究明し再発防止策を立案します。また、労働災害と事故について、原因・対策・再発防止の水平展開事項までを「安全ニュース」としてまとめあげ、社内イントラネットを活用し全社員に周知徹底を図っています。
安全衛生教育を通した人材育成
エプソンは、社員の命を守る安全衛生教育を最も重要な教育の一つに位置付けています。その特徴は、社員の階層や役割に応じた教育カリキュラムが充実している点です。一般社員層にはリスクアセスメントや危険予知訓練などの実用技法、管理監督者層には職場を統率するスキルの習得にそれぞれ主眼を置いて、全社共通の教育カリキュラムを運用しています。
2022年度の教育実績として、国内ではeラーニングを活用した安全教育を計画し、管理監督者は98.42%(1,743人)、一般社員は99.10%(16,737人)が受講しました。また、海外では管理監督者向け基礎教育(安全基準含む)を計画し実施しました。その結果、中国圏の受講率は99.10%(774人)、東南アジア圏は94,29%(1,173人)となりました。
未受講者に対する受講促進の継続フォローを実施しています。
防火・防災の取り組み
エプソンは、グループから災害を出さないという強い意志の下、無災害企業を宣言し「自分たちの会社は自分たちで守る」をスローガンに防災組織を編成し、災害発生時に、被害を最小限にとどめることを目的に避難訓練、初期消火訓練、情報伝達訓練などを通じて、防災体制の強化と防災に対する社員の意識高揚を図っています。
自衛消防団の結成
当社自衛消防団は、1955年に工場自衛消防団として編成され、「自分たちの会社は自分たちで守る」のスローガンを引き継ぎ、日々消防技術・技能の向上のため、厳しい訓練を重ねています。発足当初は15人での編成からスタートとなりましたが、現在では約900人の規模となり、国内・海外の各拠点において活動を行っています。

自衛消防団活動の目的・意義
- 有事の際に、迅速・的確な行動が取れるように、定期的な訓練により消防技術・技能、安全知識を習得させ、会社の安全教育の一環とする。
- 事故、災害に際し、人身の安全(救護活動)および諸施設、設備などの被害を最小限に食い止める(初期消火活動)。
- 習得した消防技術・技能・安全知識を、職場の核となり指導・徹底するとともに、安全・防火・防災について全社員の模範となる行動を取り、災害の未然防止、安全意識・防火などの意識の高揚を図る。
- 消防活動を通してコミュニケーションを深め、部門を越えた団員相互の親睦を図り、会社生活における良き人間形成および人材育成の場とする。
初期消火訓練の実施
自衛消防団
自衛消防団では、可搬式小型ポンプ、屋外/屋内消火栓を中心とした初期消火訓練を実施しています。 万一の火災発生に備え、敷地内に設置されている消防設備を用いて、設備の取り扱いや、公設消防隊の出動時における消防車両への補水補助や避難誘導などを想定し、毎月訓練日を定め、防火訓練を実施しています。
また、休日や夜間に災害が発生したことを想定し、事業所近隣に居住する従業員を対象とした夜間特別消防隊を編成し、有事に備え訓練を実施しています。
職場防火組織
万一火災が発生してしまった場合は、火元が小さい段階で消し止め、被害を最小限にとどめる必要があります。火災現場に居合わせたメンバーが、早い時点で消火器による消火ができるよう、職場従業員を対象とした消火器操作訓練を強化し、定期的に実施しています。
施設保安管理の取り組み
エプソンは、エプソングループ労働安全衛生基本方針に基づき、構内建物設備の不備による事故防止のための施設保安管理活動を行っています。
施設保安とは、建物および建物設備(電気設備、空調衛生設備、造排水設備、防災設備、通信設備、生産機械等へのガス・薬品等供給設備など)について、海外を含めたエプソングループ全てを対象とした安全管理のことです。建物および建物設備を健全に維持し、火災や地震での損傷を未然に防止し、また社員および関係する人々の安全を確保することで、エプソンの企業活動を継続し、商品・サービスをお客様にオンタイムでお届けすることにも役立ちます。そのために、エプソンの施設保安活動ではさまざまな安全対策を講じています。
具体的には、建物および建物設備を新設・改修・撤去する場合、事前に安全審査を行い想定される不具合を洗い出し、設計に反映しています。また工事中の安全管理はもちろん、竣工後の安全審査も実施し、設計通りに建物および建物設備ができているかをチェックし、不具合があれば改善し、改善されないと使用できない仕組みとなっています。
安全審査を行う上で、関係法令を遵守することはもとより、エプソン独自の基準を定め、過去の事故や不具合事例の再発防止を行うことで、より安全な建物および建物設備の構築に努めています。
工事を実施・推進する上で、多くの場合、社外の請負工事業者様に協力をいただきます。委託においては、工事に関するルールの徹底、入出場管理、機密保持管理、作業上の安全指導など、安全管理の徹底を図っています。また、請負工事業者様を対象とした安全大会を実施することで意識の高揚も図っています。
社員に対し施設管理に必要な公的資格の取得促進および施設管理水準の維持向上を図るため、教育計画を作成し専門的な教育を継続的に行っています。特に電気安全に関しては、エプソングループ独自の電装技術員制度を制定・運用しています。国内外拠点の職場内で使用する機械について社員が保守保全を行う場合、電装技術員でなければ電気を取り扱うことができないなど、電気安全管理の維持向上に努めています。
以上の活動を行いながら今後も事故、労働災害ゼロを目指していきます。