健康経営
エプソンの健康経営
エプソンは、グループすべての働く人の健康が最重要と考えます。パーパス、エプソンウェイ、エプソングループ労働安全衛生基本方針およびエプソングループ健康経営宣言に基づき、「いきいきと楽しく働くことができる職場環境づくり」「こころとからだの健康づくり」に取り組んでいます。
2020年4月、「自由闊達で風通しの良いコミュニケーション環境」「仕事を楽しむ」「組織風土改革」という方針を掲げた社長の下、経営のコミットメントとして「エプソングループ健康経営宣言」を社内外に公表しています。
2024年4月、健康経営宣言の一部を改訂し、健康経営の取り組みは社員のみならず、グループすべての働く人が参加し取り組むことを明言しました。また、6月には健康経営宣言の英語訳・中国語訳を設け、海外62社(2024年3月31日現在)の拠点へグローバル展開しています。国や地域ごとに労働衛生法令が異なっても「Organizational climate(組織風土)」および「Employee happiness(従業員の幸せ)」に向けた取り組みに変わりありません。それぞれの現地法人が現地の法令・文化に基づき健康管理を推進することを基本に、各社の実態に合わせた取り組みにより継続的な改善を図ります。これにより当社は、まさに世界のグループすべての働く人と会社が一体となって健康経営を推進し、企業のありたい姿「持続可能でこころ豊かな社会の実現」を目指すことを改めて表明いたします。
エプソングループ健康経営宣言
私たちエプソンは、グループすべての働く人の健康が最重要と考えます。
そのために働く人と会社が一体となり、いきいきと楽しく働くことができる職場環境をつくり、こころとからだの健康づくりに取り組みます。
そしてグループすべての働く人が活力ある職場で躍動し、世の中に驚きと感動をもたらす成果を生み出し、より良い社会の実現を目指します。
働く人:役員、従業員、および構内 協力会社社員など、グループ各社の管理下で労働する
または労働に関わる活動を行う社員以外の者をいう
セイコーエプソン株式会社 代表取締役社長 CEO 小川 恭範
健康経営の目指す姿と体制
健康経営で実現したいこと
当社が健康経営で実現したいことは、会社の目的としている「従業員の幸せ」と「社会貢献」です。グループ全ての働く人が、いきいきと楽しく働くことができる職場で仕事にやりがいを感じ、より多くの社会課題を解決することを目指します。またその結果は会社のありたい姿「持続可能でこころ豊かな社会の実現」につながると考えます。
この実現に向けて、働き方の多様化や職場環境などの変化がある中でも、自分にあった健康づくりに取り組んでいくことが重要項目として捉え、「こころとからだの自律的健康管理の向上」「職場風土の醸成」に取り組んでいます。
体制
健康経営の責任者である社長の下、エプソンならではの健康経営(Well-being経営)を推進していくための一体的な体制「人的資本・健康経営本部」を設置しています。その本部長は、代表取締役執行役員として経営会議に参画するとともに、健康保険組合の理事長を兼任し、健康経営を総合的にマネジメントします。
国内では、健康に関する中期計画を定め関係部門・各事業所および関係会社と連携しながら取り組んでいます。また、会社と健康保険組合で共同運営する「健康経営推進会議」は、コラボヘルスとして健康経営に関する情報分析・施策立案・評価改善を担い、会社・健康保険組合・社員主導の「健康づくり推進委員会」などが連携して活動に取り組めるよう、推進会議を定例開催しています。
海外では、2024年度から国や地域ごとの労働衛生法令、文化など各社の実態に併せ、働く人の健康保持増進活動が開始しました。2024年6月に、健康経営宣言をグローバル展開したことにより、海外拠点との連携を含めたグループ一体の健康経営推進活動に取り組みます。
人的資本・健康経営本部と連携している活動は、以下のリンクよりご確認ください。
中期健康管理施策「健康Action2025」
健康Action2025
2001年以来、健康に関する中期計画を策定し、定期的に見直しています。2022年度は定期更新の時期に当たり、「健康Action2025」を制定しました。
働きかたの多様化や社員の年齢構成の変化など、私たちの取り巻く環境が大きく変化することが想定されます。このような変化に向けて、社員一人ひとりが自身の健康状態を把握し、各自の状況に合った健康づくりに取り組んでいくことが重要と考えます。そこで、自律性の醸成・働くことと健康の調和を目指す「こころとからだの健康」と、安全配慮の徹底とチームでいきいきと働く組織風土の醸成を目指す「職場の健康*1」の2つを重点分野で取り組んでいます。なお、「健康Action2025」では、スローガン「気づく・学ぶ・行動する そして 認め合う」を掲げて活動を推進しています。
*1心身の健康と働きかたを両輪とする健康経営の考え方を活かし、世界保健機関(WHO)の健康定義にある社会的な側面を踏まえた、2016年度から使用しているエプソン独自の用語。安全配慮はもとより、誰もがいきいきとやりがいをもって働いている、コミュニケーションと活力にあふれた職場づくりのことです。
重点分野
多様な働き方や年齢構成の変化など、私たちを取り巻くさまざまな変化が健康に及ぼす影響を踏まえ、会社としての責務である安全配慮に向けた各種活動に加え、「こころとからだの健康」と「職場の健康」を重点分野として、さまざまな活動を展開します。
スローガン
働き方の多様化や社員の年齢構成等、状況が変化する中で、生活習慣やコミュニケーション方法等の取り巻く環境も大きく変化することが想定され、これらの変化は、ワークライフバランスを豊かにする一方、健康へのさまざまな影響が懸念されます。こうした変化に向けて、社員一人ひとりが自身の状況をより正確に理解し、各自の状況にあった健康づくりに取り組んでいくことがますます重要となってきます。併せて、社員が働く場所となる職場でも、多様性を受け入れ、お互いに認め合い尊重し合える関係を育むことが求められます。
そこで、健康Action2025の各施策に込めた想いを行動につなげるため、「気づく・学ぶ・行動する」というキーワードと合わせ、社員一人ひとりを尊重し、協力し「認め合う」を大切にする活動展開を意識できるスローガンとしました。
ポスター
中期健康管理施策「健康Action2025」の活動をもりあげるために作成された、ポスターとリーフレット。
ポスターは当社国内全事業所および関係会社で掲示(2023年4月)
目指す姿と目標
・目指す姿
「こころ」と「からだ」の自律的健康管理を促進し、社員一人ひとりの「働くこと」と「健康」の調和を実現する。
・目指す姿
働くこと・働く環境により、健康を害することがないよう必要十分な安全配慮を行う。
チームとしていきいきと働くことができる職場風土を醸成する。
健康経営の戦略マップ、および、「健康Action2025」の推進目標と2年次の実績は以下の通りです。
健康関連データ分析
会社と健康保険組合がそれぞれに保持している健康情報を、結合し可視化する健康情報分析基盤を整備しました。今後は、外部専門サービスとタイアップし、従業員と職場の健康課題を素早く把握し対応することで、健康経営のサイクルを循環させることに注力していきます。
「健康経営銘柄」に3年連続で選定
2024年3月、エプソンは「健康経営銘柄2024」に選定されました。健康経営銘柄への選定は3年連続となります。
「健康経営銘柄」とは、経済産業省と東京証券取引所が共同で、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組む上場企業を選定し、長期的な視点から企業価値の向上を重視する投資家にとって魅力ある企業として紹介することを通じ、企業による「健康経営」の取り組みを促進することを目指すものです。
エプソンは、健康経営の4項目「経営理念・方針」「組織体制」「制度・施策実行」「評価・改善」の全てにおいて高い評価を受けました。こうした継続的な取り組みにより、優良な健康経営を実践している法人として、日本健康会議が経済産業省と共同で顕彰する「健康経営優良法人(ホワイト500)」にも、制度創設以来8年連続で認定されています。
こころとからだの健康
ヘルスリテラシー教育
「こころとからだの健康」「職場の健康」の取り組みとして、さまざまな教育・研修プログラムを階層別、役割に応じて提供しています。
「こころとからだの健康」分野では、重点項目としてストレスマネジメント、健康的な生活習慣、体重等に着目した各種教育を主にeラーニング、オンライン研修といった多様な働き方に対応した形で提供し、自律的健康管理を促進しています。
「職場の健康」分野では、重点項目として職場風土の醸成に着目した各種セルフケア教育を主にeラーニング、対面とオンライン併用の研修会で行っています。
2023年度には、従業員全員を対象としたeラーニング「体重編」(実施率88.2%)を実施しました。2024年度は、eラーニング「睡眠」/「がん」/「コミュニケーション」を実施予定です。また、つながりのある教育として、入社から年代別セルフケア教育を実施しています。
健康づくり活動
前述の「健康づくり推進委員会」は、1990年代からTHP(トータル・ヘルス・プロモーションプラン)指針に基づき、健康保持増進や職場の活性化を目的に取り組んできました。"社員自らが作り上げる健康づくり活動"として、事業所ごとに推進委員会を設置し、グループで働く人と会社および労使健保三位一体の健康づくりとして活動を進めています。
年度初めに推進委員向けのスタートアップ研修会を15拠点それぞれで開催していましたが、2024年度は、全拠点オンラインでつなげ、全社一斉開催を実施しました。全社の一体感の醸成や知識レベルの一定化を図るため、経営層からの健康づくり推進委員会へのメッセージや、役割の明確化と知識教育を行いました。当日は、会場参加・オンライン参加含め285名での開催となりました。
・社員自らが作り上げる健康づくり活動
健康づくり推進委員会では、事業所や職場の健康課題を拾い上げ、社員が楽しみながら参加できるよう趣向を凝らしたイベント企画から運営を実施しています。体組成測定会の実施や運動習慣のきっかけにつなげるための運動イベント、食生活の改善に向けた栄養講座、睡眠セミナー等を行っています。運動習慣に着目した事業所独自のイベントの例としては、「ウォーキングで見つけた最高の1枚Photo投稿」や「ウォーキングコースに設定したクイズの答えを探しながら歩く」などを開催しています。
・ウォーキングイベント
2021年度から健康保険組合と共催にて毎年開催しています。個人参加のみならず、チーム制での参加とし、参加者の所属事業所単位での参加率・達成率に応じた表彰やインセンティブを設定しています。参加率は回を重ねるごとに増加しており、ウォーキングイベントを通じて、運動習慣の定着化や心身のリフレッシュ、職場内のコミュニケーションの向上につながっています。
・食習慣改善イベント
2019年より生協と会社の協働活動で進めてきた食生活を通した健康の保持増進活動の一環として、2023年度10月と1月にエプソングループ全ての社員食堂にて「野菜量アップと適塩汁物提供」を行いました。社員の食習慣改善につなげるきっかけとなっています。
個別支援
当社の各事業所「健康管理室」では産業医・看護職等の専門職が、気軽に相談できる相談者としてコミュニケーションを重視し、社員の「こころとからだの健康」に関する相談対応や支援を実施しています。特に、脳心臓疾患に関する定期健診結果要受診者への受診勧奨に力を入れ、重症化予防に努めています。さらに、治療と仕事の両立をしながらいきいきと働き続けられるよう、上司、人事担当者、産業医などが連携して、一人ひとりの状況に合わせた就労支援を行っています。
また、「従業員相談室」では、産業カウンセラーがメンタルヘルスの相談対応の他、キャリアカウンセリングも行っています。
がん対策
当社は、健康保険組合と連携を図りながら、定期健康診断時に「がん検診」を実施しています。
実施に当たり、パンフレット等を用いた啓発活動や要精密検査者への受診勧奨など、がん検診の受診率や要精密検査受診率の向上に向けて取り組んでいます。
職場の健康
メンタルヘルス対策
「職場の健康」ではメンタルヘルス不調による休職から復帰した社員のスムーズな職場復帰を支援し、再燃再発を防止するため、復職プログラムを運用しています。個々の状況に合わせ、復職時になぜ休務に至ったのか振り返る取り組みを強化し、再休務の低減に効果を上げています。また、医療専門職や産業カウンセラーが一体となって対応を検討し、主治医・管理監督者・人事労務部門とも密な連携を取り、支援の充実を図っています。その他、ストレスチェックの結果、高ストレス者のうち希望者には医師面接を行い、希望のない高ストレス者には、産業保健スタッフによる健康相談を実施しています。さらに、リーダー層を含め管理監督者向けラインケア教育として、e‐ラーニングと集合研修を実施し、いきいきと働くことができる職場風土の醸成をしています。
職場環境改善活動(好事例職場展開/高リスク職場改善支援)
メンタルヘルス不調者の発生を抑制する狙いから、ストレスチェックの結果を基に各職場の状況を把握し、事業(本)部の推進担当者と連携し、職場支援活動を行っています。
2017年度から職場集団分析結果のフィードバックを開始し、さらなる職場支援の強化を目指しました。2020年度からの主な取り組みは、職場改善シートの運用と対話会ファシリテートです。(※図参照)
「1.職場改善シート」は、職場でありたい姿を考えマネージメントサイクルを回すことに加えて、事業体責任者が職場の状況を知り、改善に向けた抜本的な施策(体制見直し、要員確保等)を行えるような運用としています。
「2.ワークショップ(対話会)のファシリテート」の狙いは、第三者がファシリテートすることにより、よりポジティブで安心・安全な対話ができる場を提供しています。対話会では、職場改善は、管理監督者のみならず職場全体の取り組みとして、よりよい職場にするために何をしたらよいかを、みんなで考え実行します。
また、各職場での「良い取り組み」や「改善事例」を社内ホームページに掲載し各職場で改善活動の参考としています。
総合健康リスクの全社平均値は軽減傾向を示すことから、従来の職場支援を継続していきます。一方で、高リスク職場割合は下げ止まり傾向にあるため、従来の職場支援を継続しつつ、さらに増加させないための取り組みとして管理監督者研修をブラッシュアップし開催しています。
感染拡大防止への対応
一般的な感染症
COVID-19で経験した感染症対応のノウハウを活かし、社員一人ひとりが『感染しない、させない』 ための知識を習得するため、eラーニング「職場における感染防止対策」を2024年3月に実施しました(実施率90.3%)。
新興感染症
「エプソングループ全体で感染症に対する意識が浸透し、職場内では日常的に感染防止対策が励行されている」状態を目指し、「事業所閉鎖ゼロ件」を目標に活動を推進しています。エプソンは、感染症がグローバルな企業活動に影響を与える大きなリスクとして捉えており、国内のみでなく、国内外のグループ各社において、国およびその地域に即した新興感染症の発生時におけるリスク制御計画(BCP)の策定、有事を想定した訓練や防疫用品の備蓄品管理等を通じて、社員の安全確保はもちろんのこと、被害の最小化、事業の継続を目的に自走型の取り組みを推進しています。
その他の取り組み
海外赴任者へのサポート
海外赴任者への健康に関する情報発信や相談対応などを目的として、「グローバルヘルスサポートデスク」を設置しています。
赴任前には、海外担当産業医が、三大感染症(HIV・マラリア・結核)に対する情報提供や教育を行っています。
海外赴任に伴う心身の健康リスク低減を図るため、従来の赴任3~6カ月目の一時帰国時の面談に加え、1年目にはITツールを活用した個別面談を実施しています。
また、定期的な健康情報の発信を行うとともに、健康診断やこころの健康診断の実施および事後フォロー、社内イントラを活用した情報提供等、国内社員と同等レベルになるよう健康保持増進のための支援を実施しています。
女性特有の健康課題への支援
相談窓口の設置
エプソンでは、社員がお互いに気持ちよく働ける環境づくりをめざして、性別を問わず、ご本人・上司やリーダー・同僚からの相談を受けており、出産・育児、更年期に関すること等の健康課題に応じたサポートをしています。
各種研修等への展開
・各種階層別教育にて、女性の健康に関する教育を行っています。
・人事部やDE&I戦略推進部等の関連部門と連携し、各種取り組み等の検討を行っています。
救急救命の普及啓発活動の推進
過去に社内で発生した心肺停止による緊急搬送事例を教訓として、社内外で万が一現場に居合わせた時に最善の応急手当や救命処置がとれるように、国内のグループ各社において救急救命の普及啓発活動を推進しています。
役員および全社員を対象に、心肺蘇生手順に関するeラーニングおよび自動体外式除細動器(AED)操作を交えた体験型の救急救命研修を実施し、ともに17,000人超の社員が受講しています(2024年6月現在)。
外部パートナーへの取り組み
「こころとからだの健康」に関する自律的健康管理は、当社で働く全ての人に関係するものと考え、国内では構内で共に働く外部パートナーのみなさまに、ヘルスリテラシー教育の受講や全社ウォーキングイベントの参加をいただいています。特に全社ウォーキングイベントでは「歩く」という運動機会の提供とともに、参加者間・職場内のコミュニケーション向上につなげています。
健康経営の普及活動
健康経営の普及活動の一環として、各社よりご依頼いただいたアンケートへの回答や健康関連情報誌への寄稿、および「エプソンの健康経営」の取り組みに関する情報提供、企業間交流会を行っています。
また、第97回日本産業衛生学会ではポジティブメンタルヘルスの視点で分析した結果を学会で発表し、当社の活動テーマの情報発信を行いました。