健康経営
エプソンの健康経営
エプソンは、安全衛生環境の維持向上と心身の健康保持増進が企業体質の根幹を成すものと考え、グループ全ての働く人がいきいきと働けるよう、安全・安心・健康は会社の命と肝に銘じ全世界で労働安全衛生活動を展開しています。
2020年4月、「自由闊達で風通しの良いコミュニケーション環境」「仕事を楽しむ」「組織風土改革」という方針を掲げた社長の下、経営のコミットメントとして下記の「エプソングループ健康経営宣言」を社内外に公表しました。社員と会社が一体となって健康経営を推進することにより、企業のありたい姿「持続可能でこころ豊かな社会の実現」につながるものと考えます。
国内では健康に関する中期計画を定期的に見直しています。2022年4月には「健康Action2025」を新たに制定し、働きかた改革や健康保険組合の施策とも連携した取り組みを行っています。なお、海外では国や地域ごとに労働衛生法令が異なるため、それぞれの現地法人が現地法令に基づき健康管理を推進し、各社の実態に合わせ継続的な改善を図っています。
エプソングループ健康経営宣言
私たちエプソンは、社員一人ひとりの健康が最重要と考えます。
そのために社員と会社が一体となり、いきいきと楽しく働くことができる職場環境をつくり、こころとからだの健康づくりに取り組みます。
そして、全ての社員が活力ある職場で躍動し、世の中に驚きと感動をもたらす成果を生み出し、より良い社会の実現を目指します。
セイコーエプソン株式会社 代表取締役社長 CEO 小川 恭範
健康経営の目指す姿と体制
【健康経営で実現したいこと】
会社にとって社員の健康が最重要と考え、エプソンウエイ、エプソングループ労働安全衛生基本方針およびエプソングループ健康経営宣言に基づき、社員と会社が一体となり、「いきいきと楽しく働くことができる職場環境づくり」、「こころとからだの健康づくり」に取り組んでいます。
この活動を通じ、当社が健康経営で実現したいことは、会社の目的である「従業員の幸せ」と「社会貢献」です。会社で働くすべての人が、いきいきと楽しく働くことができる職場で仕事にやりがいを感じ、より多くの社会課題を解決することを目指します。またその結果は会社のありたい姿「「持続可能でこころ豊かな社会の実現」につながると考えます。

【体制】
健康経営の責任者である社長の下、「人的資本・健康経営本部」を設置しました。従来の「健康経営推進室」は本部内に「健康経営推進部」として機能を移し、人事部、DE&I戦略推進部の三組織間の連携を高め健康経営を推進します。
その本部長は執行役員として経営会議に参画するとともに、健康保険組合の理事長・統括安全衛生管理者を兼任し、健康経営を総合的にマネジメントします。
会社と健康保険組合で共同運営をする「健康経営推進会議」は、健康経営に関する情報分析や施策の立案・評価・改善を行いながら、各事業所の「健康づくり推進委員会」と連携し活動を推進しています。「健康づくり推進委員会」の委員長は各事業所の総務部長が、副委員長は労組役員が務め、産業保健の立場から産業医・保健師がアドバイザリーを担っています。
中期健康管理施策「健康Action2025」
健康Action2025
2001年以来、健康に関する中期計画を策定し、定期的に見直しています。2022年度は定期更新の時期に当たり、「健康Action2025」を制定しました。
働きかたの多様化や社員の年齢構成の変化など、私たちの取り巻く環境が大きく変化することが想定されます。このような変化に向けて、社員一人ひとりが自身の健康状態を把握し、各自の状況に合った健康づくりに取り組んでいくことが重要と考えます。そこで、自律性の醸成・働くことと健康の調和を目指す「こころとからだの健康」と、安全配慮の徹底とチームでいきいきと働く組織風土の醸成を目指す「職場の健康*1」の2つを重点分野で取り組んでいます。なお、「健康Action2025」では、スローガン「気づく・学ぶ・行動する そして 認め合う」を掲げて活動を推進しています。
*1心身の健康と働きかたを両輪とする健康経営の考え方を活かし、世界保健機関(WHO)の健康定義にある社会的な側面を踏まえた、2016年度から使用しているエプソン独自の用語。安全配慮はもとより、誰もがいきいきとやりがいをもって働いている、コミュニケーションと活力にあふれた職場づくりのことです。

■ 重点分野
多様な働き方や年齢構成の変化など、私たちを取り巻くさまざまな変化が健康に及ぼす影響を踏まえ、会社としての責務である安全配慮に向けた各種活動に加え、「こころとからだの健康」と「職場の健康」を重点分野として、さまざまな活動を展開する。

■ スローガン
働き方の多様化や社員の年齢構成等、状況が変化する中で、生活習慣やコミュニケーション方法等の取り巻く環境も大きく変化することが想定され、これらの変化は、ワークライフバランスを豊かにする一方、健康へのさまざまな影響が懸念されます。こうした変化に向けて、社員一人ひとりが自身の状況をより正確に理解し、各自の状況にあった健康づくりに取り組んでいくことがますます重要となってきます。合わせて、社員が働く場所となる職場でも、多様性を受け入れ、お互いに認め合い尊重し合える関係を育むことが求められます。
そこで、健康Action2025の各施策に込めた想いを行動につなげるため、「気づく・学ぶ・行動する」というキーワードと合わせ、社員一人ひとりを尊重し、協力し「認め合う」を大切にする活動展開を意識できるスローガンとしました。

ポスター
中期健康管理施策「健康Action2025」の活動をもりあげるために作成された、ポスターとリーフレット。
ポスターは当社国内全事業所および関係会社で掲示(2023年4月)
■ 目指す姿と目標

目指す姿
「こころ」と「からだ」の自律的健康管理を促進し、社員一人ひとりの「働くこと」と「健康」の調和を実現する。


目指す姿
働くこと・働く環境により、健康を害することがないよう必要十分な安全配慮を行う。
チームとしていきいきと働くことができる職場風土を醸成する。

健康経営の戦略マップ、および、「健康Action 2025」の推進目標と1年次の実績は以下のとおりです。
「健康Action 2025」の推進目標と実績および健康経営の重点施策PDF(準備中)
健康関連データ分析
会社と健康保険組合がそれぞれに保持している健康情報を、結合し可視化する健康情報分析基盤を整備しました。今後は、外部専門サービスとタイアップし、従業員と職場の健康課題を素早く把握し対応することで、健康経営のサイクルを循環させることに注力していきます。
「健康経営銘柄」に2年連続で選定
2023年3月、エプソンは「健康経営銘柄2023」に選定されました。健康経営銘柄への選定は2年連続となります。
「健康経営銘柄」とは、経済産業省と東京証券取引所が共同で、「健康経営」に優れた企業を選定し、長期的な視点から企業価値の向上を重視する投資家にとって魅力ある企業として紹介することを通じ、企業による「健康経営」の取り組みを促進することを目指すものです。
エプソンは、健康経営の4項目「経営理念・方針」「組織体制」「制度・施策実行」「評価・改善」の全てにおいて高い評価を受けました。こうした継続的な取り組みにより、優良な健康経営を実践している法人として、日本健康会議が経済産業省と共同で顕彰する「健康経営優良法人(ホワイト500)」にも、制度創設以来7年連続で認定されています。
こころとからだの健康
■ ヘルスリテラシー教育
「こころとからだの健康」、「職場の健康」の取り組みとして、さまざまな教育・研修プログラムを階層別、役割に応じて提供しています。
「こころとからだの健康」分野では、重点項目としてストレスマネジメント、健康的な生活習慣、体重、ロコモティブシンドロームに着目した各種教育を主にeラーニング、オンライン研修といった多様な働き方に対応した形で提供し、自律的健康管理を促進しています。
2022年度には、従業員全員を対象としたe―ラーニング「ストレスと上手につき合う」(実施率94.9%)、「ロコモティブシンドロームについて」(実施率86.5%)を実施しました。
また、繋がりのある教育として、入社から年代別セルフケア教育を実施しています。現在は、60歳までを見据えた教育の検討を進めています。

*1※補足:研修名称について
・ヘルスアップ研修Ⅰ(からだ) :旧35歳個別教育
・ヘルスアップ研修Ⅰ(こころ) :旧Around35研修
・ヘルスアップ研修Ⅱ(こころ・からだ)* :旧Around45研修
*2024年度開始予定
■ 健康づくり活動
前述の「健康づくり推進委員会」は、1990年代からTHP(トータル・ヘルス・プロモーションプラン)指針に基づき、労使健保三位一体の健康づくりとして、健康保持増進や職場の活性化を目的に取り組んできました。現在も職場選出の委員が主導し、社員目線で各種施策を実施しています。
「健康Action2025」の目標達成に向け、重点テーマを掲げ、事業所活動と共に、会社全体の取り組みとして強化しています。
事業所での活動として、自分の状態への気づきや学びから健康的な生活習慣行動に繋がるよう、社員で構成された健康づくり推進委員会が趣向を凝らし、体組成測定会の実施や歩き方教室の開催、野菜を多くとるためのイベント、睡眠セミナーなど、企画から運営を実施しています。
また、全社イベントでは、2021年度からウォーキングイベントを毎年開催しています。参加率は回を重ねるごとに増加しており、運動習慣の定着化や心身のリフレッシュ、職場内のコミュニケーションの向上につながっています。
■ 個別支援
当社の各事業所「健康管理室」では産業医・看護職等の専門職が、気軽に相談できる相談者としてコミュニケーションを重視し、社員の「こころとからだの健康」に関する相談対応や支援を実施しています。特に、脳心臓疾患に関する定期健診結果要受診者への受診勧奨に力を入れ、重症化予防に努めています。さらに、治療と仕事の両立をしながらいきいきと働き続けられるよう、上司、人事担当者、産業医などが連携して、一人ひとりの状況に合わせた就労支援を行っています。
また、「従業員相談室」では、産業カウンセラーがメンタルヘルスの相談対応の他、キャリアカウンセリングも行っています。
■ がん対策
当社は、健康保険組合と連携を図りながら、定期健康診断時に「がん検診」を実施しています。
実施にあたり、がん検診の受診率や要精密検査受診率の向上に取り組んでいます。
職場の健康
■ メンタルヘルス対策
「職場の健康」ではメンタルヘルス不調による休職から復帰した社員のスムーズな職場復帰を支援し、再燃再発を防止するため、復職プログラムを運用しています。個々の状況に合わせ、復職時になぜ休務に至ったのか振り返る取り組みを強化し、再休務の低減に効果を上げています。また、医療専門職や産業カウンセラーが一体となって対応を検討し、主治医・管理監督者・人事労務部門とも密な連携を取り、支援の充実を図っています。その他、ストレスチェックの結果、高ストレス者のうち希望者には医師面接を行い、希望のない高ストレス者には、産業保健スタッフによる健康相談を実施しています。さらに、リーダー層を含め管理監督者向けラインケア教育として、e‐ラーニングと集合研修を実施し、いきいきと働くことができる職場風土の醸成をしています。
■ 職場環境改善活動(好事例職場展開/高リスク職場改善支援)
メンタルヘルス不調者の発生を抑制する狙いから、ストレスチェックの結果を基に各職場の状況を把握し、事業(本)部の推進担当者と連携し、職場支援活動を行っています。
2017年度から職場集団分析結果のフィードバックを開始し、さらなる職場支援の強化を目指しました。2020年度からの主な取り組みは、職場改善シートの運用と対話会ファシリテートです。(※図参照)
職場改善シートの狙いは、職場でありたい姿を考えマネージメントサイクルを回すことに加えて、事業(部)責任者が職場の状況を知り、改善に向けた施策(体制見直し、要員確保等)を行うことであり、高リスク職場に対して、職場改善シートの提出を必須としました。
対話会のファシリテートの狙いは、第三者がファシリテートすることにより、ポジティブで安心・安全な対話ができる場を提供しています。対話会では、職場改善は、管理監督者のみならず職場全体の取り組みとして、よりよい職場にするために何をしたらよいかを、みんなで考え実行します。
また、各職場での「良い取り組み」や「改善事例」を社内ホームページに掲載し各職場で改善活動の参考としています。
その結果、総合健康リスク高リスク職場割合が、5.9%から1.0%へ改善しました。(グラフ参照)。また、総合健康リスク値は、2020年度「94」から2022年度は「86」まで改善しました。

■ 感染症予防対策などのグローバル展開
エプソンは、感染症がグローバルな企業活動に影響を与える大きなリスクとして捉えています。「グループ全体に感染症に対する意識が浸透し、職場内では日常的に感染防止対策が励行されている」状態を目指し、「事業所閉鎖ゼロ件」を目標に活動を推進しています。国内外のグループ各社において、国およびその地域に即した新興感染症の発生時におけるリスク制御計画(BCP)を策定し、社員の安全確保はもちろんのこと、被害の最小化、事業の継続を目的に自走型の取り組みを推進しています。
■ COVID-19感染拡大防止への対応
国内で初めてCOVID-19の感染が確認された2020年度より、社員およびお客様をはじめとするステークホルダーの皆様の健康や安全を第一に考え、統括責任者の下、会社の危機管理委員会が中心となり感染拡大防止策を講じてきました。2023年5月からは、国の方針に合わせた運用にて、日常的な感染防止対策を継続実施しています。今後は、社内外の動向に注力しつつ、蓄積したノウハウを整理し、点検および改善による強化活動に取り組んでいきます。
その他の取り組み
海外赴任者へのサポート
海外赴任者への健康に関する情報発信や相談対応などを目的として、「グローバルヘルスサポートデスク」を設置しています。以前は産業医・保健師がグループ各社を訪問し、心身の健康リスクの低減を図ってきましたが、コロナ禍を経てITツールを活用した取り組みを進めています。
また、海外赴任者に対しては、三大感染症(HIV・マラリア・結核)に対する情報提供や教育を、赴任前に海外担当産業医が行っています。海外赴任中は、定期的な健康情報の発信を行うとともに、健康診断やこころの健康診断の実施および事後フォロー、社内イントラを活用した情報提供等、国内社員と同等レベルになるよう健康保持増進のための支援を実施しています。
女性特有の健康課題への支援
当社の女性従業員へ「女性特有の健康」に関するアンケートを2022年2月に行いました。特に関心が高かったテーマにもとづき、ダイバーシティ推進部門主催の「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンフェア2022」では『性のちがいを理解し、お互いを認め合うために -女性ホルモンの働きについて- 』と題してオンラインセミナーを開催しました。セミナーには女性のみならず、パートナーの困りごとに応えたい男性や男性管理職も含め500名が参加しました。 また、アンケートの結果から「月経に関すること」「がん検診」「女性ホルモンのゆらぎ」などを取り上げ、4回にわたって女性従業員へ情報提供のメール配信を行いました。
救急救命の普及啓発活動の推進
過去に社内で発生した心肺停止による緊急搬送事例を教訓として、社内外で万が一現場に居合わせた時に最善の応急手当や救命処置がとれるように、国内のグループ各社において救急救命の普及啓発活動を推進しています。
役員および全社員を対象に、心肺蘇生手順に関するeラーニングおよび自動体外式除細動器(AED)操作を交えた体験型の救急救命研修を実施し、ともに16,000人超の社員が受講しています(2023年3月現在)。
外部パートナーへの取り組み
「こころとからだの健康」に関する自律的健康管理は、当社で働くすべての人に関係するものと考え、国内では構内で共に働く外部パートナーのみなさまに、ヘルスリテラシー教育の受講や全社ウォーキングイベントの参加をいただいています。特に全社ウォーキングイベントでは「歩く」という運動機会の提供とともに、参加者間・職場内のコミュニケーション向上につなげています。
健康経営の普及活動
健康経営の普及活動の一環として、各社よりご依頼いただいたアンケートへの回答や健康関連情報誌への寄稿、および「エプソンの健康経営」の取り組みに関する情報提供、企業間交流会を行っています。