働きやすい環境づくり
考え方と取り組み
エプソンは、女性や外国人、中途採用者、障がい者、高年齢者など多様な人材を確保し、生かすことにより、創造性を高めイノベーションを実現するとともに、組織風土への取り組みや、信州の恵まれた自然環境、職住接近など、地方企業としての利点を生かした働きやすい環境づくりを通じて、従業員のエンゲージメントを高め、組織の総合力を最大化して、価値を創出し続けることを目指しています。
従業員エンゲージメントサーベイと組織風土への取り組み
エプソンは、組織風土の現状を把握するため、2005年より組織風土に関する調査を毎年行い、従業員一人ひとりが従来以上にやりがいと自発性を持ち、また多様な人材が自律的にいきいきと働ける環境を目指しています。
2022年度には、さらに専門的かつ多面的な詳細分析に基づく効果的な活動を行うことを目的として、外部との比較も可能な「エンゲージメントサーベイ」を導入して調査を行いました。その結果、全社的には信頼関係のベースはあり、“上司からの指示があれば動く”組織の状態にはなっているものの、一人ひとりが主体的に動き、自分たちで組織の弱みを改善していく自立(自律)自走型組織の実現に向けては課題が多いことが明らかになりました。この結果に基づき、自立(自律)型人材を増やし、強固な信頼関係を築くことによる組織力の最大化に向けて、①理念の浸透、自分ごと化、②変革意識、外向き視点の向上、③仕事を通じた成長、貢献感を更に高めるための取り組みを始めました。
各職場では、職場ごとの詳細な調査結果をメンバーとも共有・検討し、この3項目を中心に改善施策と改善目標を設定しています。この改善目標は、管理職の目標管理に紐付けるとともに、2025年度までに目標を達成することとしています。
また、この取り組みを支援するため、管理職に対しては、360度調査結果と連動させ、1 on 1研修の開始、管理職前後層教育研修体系の見直し、管理職向け学び放題プログラムの導入、全社横串課長対話会の継続、管理職相談窓口/メンターの設置などを通じ、管理職の役割発揮・マネジメントスキル向上支援、管理職の気づきの機会提供、具体的事例の水平展開などを行っています。特にサポートが必要な職場や領域に対しては、きめ細かい支援を行っています。
「エンゲージメントサーベイ」の全社総合レーティングは、22年度Bランクでしたが、23年度はBBランクへと1ランク改善しました。これらの取り組みにより、「自ら考え自ら行動する人材」の育成と、「職場での強固な信頼関係の構築」による組織力強化を通じた生産性向上を目指しています。
従業員エンゲージメントサーベイの結果と目標
【全社指標】 | 2022年度 | 2023年度 | 目標値(2025年度末) | |
---|---|---|---|---|
総合レーティング | B | BB | A | |
スコア | 51.8 | 52.9 | 58.0 | |
レーティングD職場数(部・課) | 47 | 45 | 0 | |
サブ項目 | ||||
仕事内容 | 3.2 | 3.3 | 3.6 | |
外部適応 | 3.2 | 3.2 | 3.6 | |
変革活動 | 3.1 | 3.2 | 3.6 |
働きかたの多様化
エプソンでは、社員がやりがいを持ち、さまざまなライフステージ等の変化に適応しながら、いきいきと、心身ともに健康で安全に働ける環境を目指しています。特に、フレックスタイム制度や在宅勤務等、働く時間や場所の選択肢を拡充し、育児・介護・療養・不妊治療と仕事の両立ができる環境づくりを行っています。また職場におけるハラスメント防止や労働時間の適正化等の施策を推進しています。
信州に主要な拠点が集中するエプソンにおいては、マネジメント人材やスペシャリストをはじめとする多様な人材の採用・定着をベースとしてダイバーシティを進めるためにも、多様な社員が自律して自らの働きかたを選択し、それぞれのキャリア形成を実現できる環境づくりが重要であると考えています。
当社は、2004年に「私たちのめざす働きかた・働く風土」を定め、「すべての従業員が、過重な労働がなく、心身の健康を維持・増進することにより、活性化し、やりがいをもって効率的に仕事をしている」という働きかたの実現を通して、「会社も永続的に発展し、企業価値を向上している」Win-Winの関係を目指してきました。
さらに2017年より働きかた改革に取り組んでいます。第Ⅰ期(2017~2019年度)は、労働時間の適正化・長時間労働防止に優先的に取り組み、第Ⅱ期(2020~2022年度)は、働きかたの多様化・選択肢の拡充として、全社員を対象にした在宅勤務の制度化・フレックスタイムのコアタイム廃止、育児事由での短時間勤務の適用年齢拡大(小学校6年生まで)などの制度拡充を進めてきました。
2023年度より第Ⅲ期(2023~25年度)「働きかた改革」の取り組みを進めています。今後の少子高齢化、労働人口の減少、その他環境変化の中でも継続して社会に貢献していくために、様々な背景を持つ従業員が安心して仕事と家庭の両立をはかれる働きやすい環境の構築を進めることが重要だと考えています。
なお、働きかたの多様化が進むことにより、コミュニケーションの取り方、評価・査定や人材育成、健康課題等、人事労務マネジメントや組織運営まで、広い範囲で課題が出てきています。健康でいきいきと働ける環境構築の一環として、人事労務諸制度の検討や職場運営を担う管理職へのサポートについても対応を進めていきます。
<働きかたの多様化施策の進捗状況>
取り組み | 施策 | 2023年度 |
---|---|---|
働く場所・時間の柔軟化 | 在宅勤務制度の進化 | 1分単位で在宅勤務を実施可能とする制度改定(2024年9月予定) |
在宅勤務における出社目安ガイドライン |
対面コミュニケーション・組織運営の観点と、柔軟な働きかたを考慮し、アフターコロナの在宅勤務と出社に関する考え方を整理して、ガイドライン(目安)を設定 |
|
コアタイムレス フレックスタイムの適用 | コアタイム廃止 | |
育児・介護および治療と仕事の両立化 |
治療と仕事の両立支援 | 不妊治療を目的とした休暇・休職制度の拡充 |
働く場所・時間の柔軟化
在宅勤務制度
2018年4月に導入した育児・介護期における在宅勤務制度は、2020年9月より全社員を対象に制度を拡大しました。これにより、働きかたに制約のある育児・介護期の社員に限らず在宅勤務ができるようになり、急な介護が必要になった場合でも、申請により自宅以外の場所で在宅勤務が実施できるなど、柔軟な働きかたが可能になりました。2022年7月からは、実家や配偶者が住む家でも在宅勤務が実施できるように実施場所のルールを拡大し、働く場所の選択肢を増やしてきました。
一方、コロナ禍により、これらの在宅勤務制度が一気に進む中で認識された、対面コミュニケーションの重要性や組織運営上の課題も踏まえ、2023年9月には、最低週1回以上の出社を全社ガイドライン(目安)として設定し、その上で各職場の状況に応じて、組織の生産性・成果創出に向けて最適な形で在宅勤務を行うこととしています。また、2024年9月には、在宅勤務の実施単位として終日・半日単位だけではなく、半日に満たない時間の在宅勤務の実施に向けた制度改善を行います。
時間単位年休の制度化
育児や介護と仕事との両立、また治療と仕事との両立支援等を目的に、柔軟な休暇取得ができる制度として、2022年10月より、時間単位年休制度を導入しました。年間5日間を上限に、年次有給休暇を1時間単位で取得できることにより、ワークインライフの実現につなげることが可能となりました。
コアタイムレスフレックスタイムの適用
多くの従業員が適用しているフレックスタイム制度の更なる柔軟な運用を目的に、2023年3月より、フレックスタイム制度におけるコアタイムを廃止しました。コアタイムが無くなることにより、始業・終業時刻の選択幅が広がり、より柔軟な働きかたができるようになりました。
育児、介護、治療と仕事の両立支援の拡充
エプソンは、社員がさまざまな環境変化に適応しながら安心して働き続けられるよう、仕事と生活の両立ができる環境づくりを推進しており、2022年度以降は、男性育休の100%取得推進への取り組みを進めています。その結果として男性の育休取得率は大幅に上昇しました。
また、2023年9月には不妊治療を実施する社員に対する支援制度を新たに設けています。
出産・育児支援
希望するキャリアの実現に向けて、社員が性別に左右されず活躍できる環境創出を目的に、出産・育児の際にも男女の格差無く働くことができるよう、育児支援にも力を入れています。具体的には、休暇、休職、短時間勤務など、育児を大切にしながら仕事と両立する制度を整備しています。
<育児休職取得者等の推移>
女性 | 女性の取得率 | 男性 | 男性の取得率 | |
---|---|---|---|---|
2023*1 | 46人 | 97.9% | 208人 | 85.2% |
2022*1 | 38人 | 90.5% | 273人 | 97.2% |
2021*2,3 | 38人 | 100% | 131人 | 53.5% |
2020*2,3 | 37人 | 100% | 72人 | 30.8% |
2019*2,3 | 41人 | 100% | 61人 | 21.3% |
2018*2,3 | 35人 | 100% | 41人 | 13.6% |
*育児休職取得者等のデータは、セイコーエプソン(株)2024年3月31日現在
2022年度以降の算出について
*1 公表前事業年度において配偶者または本人が出産した労働者数に対する、公表前事業年度において育児休業等をした労働者数の割合
2021年度までの算出について
*2 当社独自の制度である健やか休暇を含めた人数
*3 育児休職取得者数/制度対象者数
(制度対象者:本人に子どもが生まれ、育児休職が取得可能になった者)
不妊治療を行う社員への支援
少子化の社会課題に対し、企業には不妊治療を受けながら働き続けられる職場環境の整備が求められています。当社でも不妊治療に取り組む社員が安心して仕事との両立ができるよう、2023年9月より休暇・休職の制度を拡充しました。男性・女性に関わらず、不妊治療を実施する社員に活用されています。
<不妊治療に特化した支援制度>
制度 | 概要 |
---|---|
ライフサポート休暇 | 年度内に取得できる5日の特別休暇(有給)を付与。 |
ライフサポート休職 |
3年度の期間に通算365日の休職を認める(分割可能) なお、3年後も治療を継続している場合は、改めて3年度の期間に通算365日の休職を認める。 |
社員の介護への対応
高齢化が進み、介護を必要とする方が増加しています。これに伴い、家族の介護を行う社員も増えてきました。介護による離職を無くすことを目的に、当社では、介護者に対して以下のようなサポートをしています。
・介護に関するホームページを立ち上げ、社内制度や介護保険制度など、情報公開を行っています。
・事前に知識をつけておくことで、突然発生する介護に慌てずに対応できるよう介護準備セミナーを実施しています。
・外部の相談窓口と契約し、従業員が安心して介護に関する相談をできるようにしています。
・介護と仕事を両立できるよう、以下のような制度を利用することができます。
<介護制度>
制度 | 概要 |
---|---|
介護休職 | 対象家族一人につき1年6カ月取得可能 |
介護短時間 |
利用開始から3年経過後の3月20日まで取得可能 以降も継続して介護が必要な状態であれば延長を認める |
介護のための所定外労働免除 | 所定就業時間を超える労働免除 |
介護のための時間外労働制限 | 1カ月24時間、1年150時間を超える時間外を制限 |
介護のための深夜業制限 | 深夜勤務の制限 |
介護のための在宅勤務制度 | 勤務時間毎に定められた限度時間まで在宅での労働が可能 |
介護休暇 | 対象家族が1人であれば5日/年、2人であれば10日/年の介護休暇(無給)取得可能 |
<介護休職取得者等の推移>
年度 | 介護休職 取得者数 |
介護短時間 制度実施者 |
---|---|---|
2023 | 3人 | 4人 |
2022 | 2人 | 5人 |
2021 | 5人 | 6人 |
2020 | 2人 | 4人 |
2019 | 6人 | 4人 |
2018 | 2人 | 5人 |
*介護休職取得者等のデータは、セイコーエプソン(株)2024年3月31日現在
健やか休暇制度
前々年度からの年次有給休暇に残日数がある場合、60日を限度に積み立てることができる休暇で、本人のけがや病気、家族の介護・育児、中学3年生までの子どもの学校行事への参加を目的として取得できる休暇制度です。
(1998年3月21日制定)
労働時間の適正化
当社では、2017年より働きかた改革の一環として、また2022年4月に制定した中期健康管理施策「健康Action2025」において、重点分野の一つとして、労働時間の適正化・長時間労働防止・過重労働防止に取り組んでいます。具体的には、労働時間管理に関する運用マニュアルの周知・徹底による遵法対応に加え、入退場管理や在社時間管理による重点管理者のフォロー、また労働時間適正化のための啓発活動など、法令の遵守に留まらない様々な取り組みを行っています。
上記の活動を通じた労働時間適正化の実績と目標値
年間総実労働時間 2024年度目標:1,845時間
有給休暇取得日数 2024年度目標:20日(年次有給休暇以外の休暇取得含めて)
賃金管理
エプソンは、各国・地域の労働法規などに基づき、適切な賃金、諸手当、その他臨時に支払われる給与などの諸条件を、賃金規則などで定めています。また、「エプソングループ人権方針」において、雇用、業務、処遇に関し、機会均等と平等を推進し、いかなる差別待遇も行わないことを定めています。
日本国内については、法令に基づき雇用形態に関わらず同一労働同一賃金の原則に基づいた対応を行っており、賃金制度において、性別・年齢による格差はありません。男女の賃金格差は1983年に完全に廃止しています。
国内の正規従業員のうち一般社員層は、主として職務遂行能力に応じ処遇を決定する職能資格制度を、リーダー層には能力をベースとして、与えられた職務・果たしている役割のレベルをふまえ処遇する職務職能給制度を、また管理職には、役割の大きさで処遇を決定する役割等級制度を導入しています。なお、一般社員層、リーダー層の賃金については、賃金労使委員会を開催し、賃金水準および賃金制度の妥当性を労使で確認しています。
海外においては、国・地域ごとに、最低賃金、法定給付、超過勤務などに関する賃金関連法令を遵守した規則を定め、これに基づき算定・作成された賃金計算期間毎の賃金明細を通知したうえで、定められた所定の日に、従業員に直接、賃金を支給しています。
労使関係
エプソンは、エプソングループ人権方針において、各国・地域の法令に基づき、結社の自由および団体交渉の権利を尊重し、良好な労使関係を維持するため、労働者に必要な情報を提供し、誠実に協議・意見交換を行うこととしています。
当社は健全な労使関係のベースとなる会議体として、経営上の重要事項の労働組合への説明、および労働条件を変更する場合に労働組合との協議の場として労使協議会を設置しており、定期的に、また必要に応じ都度、労使協議を開催しています。さらに、労使協議に加え、より良い職場環境づくりに向け、労使双方で課題解決・議論することを目的として、働きかたや次世代支援、福利厚生、賃金、定年後再雇用、健康管理などについて労使委員会、安全衛生委員会などを設置しています。
以上に加え、当社では、より多くの社員と情報を直接共有し、会社と社員のコミュニケーションを促進するため、各事業部や本部機能において、経営層と社員との対話会や懇談会にも積極的に取り組んでいます。このような場を通じて経営の考えや思いを社員に伝え、また、社員からの声を直接確認することを実行しています。
* 全正規社員における労働組合加入率 86.3%
主な福利厚生制度(国内)
分野 | 制度の内容 |
---|---|
社会保険 | 健康保険、厚生年金、介護保険、雇用保険、労災保険 |
年金 | 企業年金基金、確定拠出年金 |
生活支援 | 通勤費補助、社員食堂・売店、ユニフォーム貸与 |
余暇 | 懇親会補助、同好会 |
自己啓発 | 通信教育・資格取得助成 |
財産形成 | 財形貯蓄、従業員持株会 |
住宅 | 社宅・独身アパート貸与 |
健康・医療 | 健康管理室、企業内理療(マッサージ) |
育児・介護 | 育児・介護に関わる休暇・休職・短時間勤務、在宅ケアサービス |
その他 | 慶弔見舞金、永年勤続表彰、団体保険 など |