サプライチェーンにおける人権尊重への取り組み

サプライチェーンにおける人権尊重への考え方と取り組み

考え方

エプソンは、「人権方針」において、自社のみならずサプライヤーにおいても人権が尊重されるべきことを宣言しています。人権方針において述べている通り、国連のビジネスと人権に関する指導原則を遵守し世界人権宣言他で述べられた国際的に認められた人権を尊重していくことはもとより、RBAの趣旨に賛同し会員として、サプライヤーにおいてもRBA行動規範が遵守されることに努めています。(国連「ビジネスと人権の指導原則」(原則16(c)) このような取り組みにより、エプソン製品のサプライチェーン全体において人権が尊重されることを目指しています。

具体的な取り組み


1.方針の制定、コミット (上記 人権尊重のプロセス①)[指導原則16]

エプソンは、経営理念および企業行動原則を経営の根幹に据え、企業活動における人権の尊重は企業が果たすべき重要な責務であると考えています。2005年に国連「グローバルコンパクト」に基づいて「エプソングループ 人権と労働に関する方針」を制定し、これに則った行動を実践してきました。
また、2019年4月にはグローバルサプライチェーンの影響を受ける労働者やコミュニティーの権利と福祉を支援する非営利組織であるResponsible Business Alliance(RBA)に加盟し、サプライヤーの皆様と共に「RBA行動規範」に則った事業活動を進めています。
更に、エプソンでは、刻々と変化するグローバルな事業環境における新たな課題に対応するため、人権への取り組みを強化しており、「エプソングループ 人権と労働に関する方針」を国連「ビジネスと人権に関する指導原則」の内容に準拠して、取締役会の決議を経て、2022年4月1日付で「エプソングループ 人権方針」として改定しました。

また、RBA行動規範およびエプソンの方針によって構成される「エプソングループサプライヤーガイドライン」を制定し、サプライヤーに対して遵守要請するとともに、書面による同意を取得しています。

エプソングループ人権方針

サプライヤーガイドライン


2.人権デューデリジェンス(上記 人権尊重のプロセス②)[指導原則17-21]

エプソンは事業活動に関係する全てのステークホルダー(お客様、株主・投資家、地域社会、ビジネスパートナー、NGO・NPO、社員 など)の中で、人権の観点ではサプライチェーンの優先度が高いと特定しています。
エプソンはResponsible Business Alliance (RBA)レギュラー会員として、求められるサプライヤー管理要件*¹に従い、RBA行動規範の各項目(労働・人権、安全衛生、環境、倫理、マネジメントシステム)への適合性遵守状況を確認し、救済・是正に取り組むとともに、先住民や外国籍移住労働者の権利尊重の状況についても確認をしています。部品や製造委託先などの直接材サプライヤーのみならず、その他のお取引先(構内に常駐するサービス提供業者、人材紹介や派遣など人材系エージェント、ロジスティックス業者等)といった主要なサプライヤーを対象として、CSRアセスメントなどを利用した年一回の人権影響評価を10年以上継続して実施しています。この人権影響評価は、指定の帳票にサプライヤーが回答するセルフアセスメントに加えて、現場確認や監査による確認も行い、特定された負の影響について、救済、是正計画の策定・再発防止などの是正に取り組んで頂いています。
また、エプソンは、アセスメントによる負の影響特定に加え、苦情処理メカニズムなどを通じた通報も、人権影響を評価する手段として重要であると認識しています。

*¹ RBAレギュラー会員義務の概要


3.評価結果、予防・是正 (上記 人権尊重のプロセス③)

上記の評価活動を通じてサプライヤーにおける人権への負の影響の所在を特定し、特定された影響に対して是正・軽減対策を行っています。

4.モニタリング (上記 人権尊重のプロセス④)

エプソンでは、毎年一回の、CSRセルフアセスメントなどを継続して行い、サプライヤーにおけるRBA行動規範への遵守状況を確認しています。また、当社の製造拠点において継続して受審しているVAP監査において、RBA行動規範E12(サプライヤー責任)およびD7(責任ある鉱物調達)等の適合確認を受けています。間接雇用者(構内常駐業者の従業員や派遣社員等の個人)が監査の対象に入っており、人権への負の影響を特定する手段として活用し、不適合や不備を検出した場合には、是正を行っています。
なお、苦情処理メカニズムなどを通じた通報情報を、人権への負の影響への対応の効果測定の手段として、活用しています。

5.コミュニケーション・報告 (上記 人権尊重のプロセス⑤)

サプライチェーンにおける人権尊重への取り組み実績および経過は、自社グループの状況とともに、毎年責任者によりレビューを行った上でWebに開示し、サステナビリティレポートとして報告しています。現代奴隷と人身売買に関しては英国を含む各国の現代奴隷法の求めるステートメントを毎年発行しエプソングループの取り組みを報告しています。

6.救済措置 [指導原則22、29、30、31]

国内外全てのグループ会社において、取引先向け通報窓口を設置し、相談・通報を受け付けています。匿名での通報、現地語での通報が可能であり、通報したことへの報復禁止を徹底し運用しています。また、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した苦情処理プラットフォームである一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)に加盟し、対話・救済の促進を図っています。

通報窓口

日本国内グループ会社のサプライヤー:相談・通報窓口

海外グループ会社のサプライヤー:各社が設置している通報窓口一覧 (PDF,380KB)

JaCERの窓口

特定された人権課題への対応 [国連指導原則19]

エプソンは、人権への負の影響への対応の優先度が高い対象者であるサプライヤー向けのプログラムを整備し、ワールドワイドで、活動を推進しています。

1. サプライヤーガイドラインによる行動規範の周知と同意取得

エプソングループサプライヤーガイドラインは、多くのサプライヤーの理解を得るため、7か国語(英語・日本語・簡体中国語・スペイン語・ポルトガル語・タイ語・インドネシア語)を用意しています。Webにて公開するとともに、国内外グループ各社から全てのサプライヤーに対して周知しています。ガイドライン改訂の2024年には、ガイドライン改訂の説明会を行い、サプライヤー行動規範(RBA行動規範)の詳細について、サプライヤーの方々にご理解いただきました。また、2000社を超えるサプライヤーから、上記サプライヤーガイドライン遵守の書面同意を取得しています。

2.人権セミナーによる教育

外部の専門家に講師をお願いし、毎年、サプライヤー様向けの人権セミナーを実施しています。
せミナーでは、エプソンの取り組み状況に加えて、人権尊重の考え方、人権を取り巻く世界や日本の状況に関する最新情報などをお伝えしています。
毎年300名以上のサプライヤー様に参加を頂き、2024年度は約300社/500名が参加されました。

<具体的な実施内容>
 2024年
 講演テーマ    「ビジネスと人権と国際労働基準」
 講師        ILO(国際労働機関)駐日事務所
            プログラムオフィサー / 渉外・労働基準専門官 田中 竜介氏
            プログラム・オペレーションオフィサー 鴨下 真美氏

 2021年、22年、23年の実績
 講演テーマ    「ビジネスと人権」
 講師        オウルズコンサルティンググループ 代表取締役CEO羽生田慶介氏

3. SAQ・是正などを通じたデューデリジェンス

エプソンでは、10年以上にわたり、毎年サプライヤーのデューデリジェンスを実施しています。
RBA行動規範の遵守状況を確認するSAQによりサプライヤーにおける人権尊重の取り組み状況を把握し、サプライヤーの拠点ごとに、人権救済の実施に加え対応が必要な事項をフィードバックし対応を要請し、是正の確認を行っています。RBA行動規範中でもA.労働の項目を中心に人権に関わる事項は多岐にわたっていますが、ILO中核的労働基準や国連グローバルコンパクトの原則などを考慮し特に重要な人権項目を特定し、評価をしています。

(重要評価項目)

評価項目 ILO条約 RBA行動規範
児童労働禁止 138号/182号 A2
強制労働禁止 29号/105号 A1
労働時間の適正管理
(上限労働時間週60時間、7日に1日の休日付与)
- A3
賃金の適正な支払い
(最低賃金・超過時間勤務賃金の適正な支払い、支払日の遵守)
- A4
人道的待遇(ハラスメント禁止) 190号 A5
差別禁止 100号/111号 A5
結社の自由および団体交渉権 87号/98号 A6
安全で健康な職場環境の確保 155号/187号 B安全衛生

救済・是正事例

  • 外国籍労働者の採用費用の返金
    セルフアセスメントにて、製造拠点で活用する製造請負業者において外国籍労働者が本国において採用関連費用を支払っていた事案(手数料、語学研修費用やビザ取得費用など)を特定しました。
    →(救済・是正内容)当該製造請負業者と協議を行い、労働者本人に対して、負担した費用の返金を行い、返金が完了したことをエビデンスにより確認しました。さらに、今後は採用費用の労働者負担がない運用を徹底することを、当該製造請負業者と合意しました。
  • 雇用契約書
    セルフアセスメントにて、複数のサプライヤーにおいて雇用契約書の記載項目の不足および労働者の理解できる言語での作成がされていないことを特定しました。
    →(救済・是正内容)該当するサプライヤーに対して、雇用契約書に記載されるべき項目の詳細説明と書式変更の要請を行い、救済・是正の完了を確認しました。
  • 休日の付与
    製造拠点が受審したVAP監査にて、構内常駐の警備会社にて超過時間勤務賃金・休日手当の不払い、休日が付与されていないことを特定しました。
    →(救済・是正内容)該当する業者に対し、当該賃金・手当の支給、休日付与を要請し、救済是正の完了を確認しました。

4.取引先向け通報窓口を通じた救済(国連指導原則22,29,31)

現地語での通報が可能であり、通報したことへの報復禁止を徹底し運用しています。エプソングループサプライヤーガイドラインや説明会における周知・利用推奨に加え、Webサイトから通報が可能であり、ステークホルダーが利用しやすい通報制度の運用につとめています。サプライヤー従業員や、その正当な代弁者からの通報や監査を端緒として把握された人権への負の影響について、救済に至るまで支援を行っています。
(救済・是正の事例)
・構内請負の製造業者において勤務時間が記録装置の破損により記録されておらず、当該期間の超過時間勤務賃金が不払いとなっていた事例
→(救済・是正内容)通報窓口を通じて把握し、当該不足賃金の支払いを行い、再発防止のための是正も確認しました。

通報窓口