内部統制システム
エプソンは、「経営理念」を礎とした「エプソンウェイ」を定め、グループ全体で共有しています。また、「エプソンウェイ」に基づきグループ全体の業務が適正に行われるよう「内部統制システムの基本方針」を定めており、グループ全体の整備レベルが着実に向上するよう努めています。
グループガバナンス
エプソンは、グループマネジメントの基本を「商品別事業部制による事業部長の世界連結責任体制と、本社主管機能のグローバル責任体制」とし、事業オペレーション機能を担う子会社の業務執行体制の整備に関する責任は各事業部門の責任者が負います。また、グループ共通のコーポレート機能などについては本社の各主管部門の責任者が責任を負うことにより、子会社を含めたグループにおける業務の適正化に努めています。
コンプライアンスマネジメント
エプソンが目指しているのは「エプソンウェイ」に基づき、全てのステークホルダーの皆様と信頼関係を築きながら、持続的にお客様の期待を超える価値を創造する企業活動を行うことです。この信頼関係を維持・強化するため、経営の透明性・公正性を高め、さらに迅速な意思決定により実効性を踏まえた適切なコンプライアンスマネジメントを推進しています。2023年度実績として、法令に基づき開示すべき違反はなく、監査済み財務諸表に記載すべき罰金や和解金の発生はありません。
コンプライアンス推進体制
コンプライアンス委員会は、取締役会の諮問機関として社外取締役6名全員および常勤監査等委員である取締役1名で構成しています。委員長は常勤監査等委員が務め、コンプライアンス活動の重要事項について審議し、取締役会に報告・提案することにより業務執行を監督しています。コンプライアンス担当役員(CCO)は、コンプライアンスにおける社長を含む業務執行全般を監督・監視し、コンプライアンス委員会にその状況を定期的に報告します。コンプライアンスの推進・徹底は、社長指揮のもと、コンプライアンス統括部門が、各事業および子会社と協働で、グローバルに推進します。この統括部門は、コンプライアンス推進全般をモニタリングし、必要に応じて、是正・調整を行い、コンプライアンス活動の網羅性と実効性を高めるよう努めています。

通報制度・通報窓口
エプソンでは、潜在的なコンプライアンス問題を早期に発見できるよう、役員、従業員、派遣社員などから通報を受け付ける窓口を設け、通報された内容をエスカレーションする仕組みを構築しています。通報内容の厳重な管理、通報者に対する不利益な扱いや報復行為等の禁止、匿名性の保護など、内部通報制度の基本ルールは「企業行動原則」および「エプソングループ内部通報制度規程」に定められており、セイコーエプソンおよび米州、欧州、中国、東南アジアを含むグループ各社では、これに基づいた通報窓口を設けています。内部通報制度は、日本では公益通報者保護法をはじめ、各国・地域の法令に準拠しており、グループ各社では現地語で利用できます。
通報窓口はエプソングローバル行動規範に定められており、イントラネット上で公開しています。役員、社員、派遣社員等に周知し、毎年10月のコンプライアンス月間活動やオンライン講座などを通じて利用を呼びかけています。
また、セイコーエプソンおよび全世界のエプソングループ各社では、サプライヤーなど社外の取引先からの通報を受け付けるサプライヤー内部通報制度を設けているほか、セイコーエプソンは2025年4月に全ての利害関係者からの通報を受け付ける「グローバルステークホルダーズホットライン」を開設しました。これらは エプソンの社内通報窓口と同様に、通報内容は厳重に保護され、通報者に対する報復は禁止され、匿名性が確保されています。サプライヤーなど社外の取引先には、サプライヤーガイドラインやサプライヤー会議などでサプライヤー内部通報制度について周知し、利用を推奨しています。
取引先通報制度の詳細はこちら
グローバルステークホルダーズ(GSH)ホットラインはこちら
人権に関する相談や通報については、以下のように対応いたします。
役員、従業員、派遣社員は、エプソンヘルプラインをはじめとしたさまざまな通報窓口や相談窓口を利用して、ダイバーシティ問題などに関する報告や相談を行うことができます。
サプライヤーやその他の外部ビジネス パートナーは、サプライヤー内部告発システムを使用してレポートを提出できます。
すべての利害関係者は、日本ビジネスと人権救済センター(JaCER)が提供する苦情処理プラットフォームを通じて苦情を申し立て、関与と救済を求めることができます。
JaCERへの相談通報の詳細はこちら
国内における対応体制
国内グループ会社の役員・従業員および派遣社員を対象とし、社内に連絡する内部通報窓口と、第三者機関である外部会社に連絡する外部通報窓口、弁護士に連絡する弁護士窓口の3つの窓口を持つ「エプソン・ヘルプライン」を設置しています。国内グループ会社の役員、社員、派遣社員は、どちらの窓口でも通報することができます。エプソンヘルプラインの利用方法は、社内イントラネットに掲載した利用マニュアルで説明しているほか、ヘルプラインの利用に関する研修などでも利用方法を紹介しています。通報は、メールまたは電話で24時間365日受け付けており、通報者からの通報内容を調査し、必要に応じて是正措置を講じています。エプソンは、2006年の公益通報者保護法施行に合わせて社員と派遣社員を対象とした最初の窓口を開設して以来、積極的に内部通報制度の整備に取り組んできました。2022年6月に施行された改正公益通報者保護法に対応し、通報受付担当者を任命し、退職後1年以内の社員および派遣社員からの通報に対応しています。外部コンサルタントによる評価などを通じて把握した最新の社会・法規制動向を踏まえたシステムの開発・改善・導入を積極的に行っています。
国内の通報窓口には、前年度より29件増加し、143件の通報が寄せられました。通報者からは、社内ルール違反や不正行為、違法行為の疑いがある事例が報告され、エプソンはこれらの通報に対して適切な対応をしています。また、エプソンヘルプラインのほか、役員、社員、派遣社員を対象とした個別の相談窓口を設け、相談しやすい環境の維持・運用に努めています。
事案別相談窓口一覧
ハラスメント相談窓口 | 管理職よろず相談窓口 | 長時間労働相談窓口 |
キャリア相談窓口 | ダイバーシティーに関する相談窓口 | 女性の健康に関する相談窓口 |
従業員相談室 | 腐敗(賄賂)規制&競争法に関する相談窓口 | インサイダー取引相談窓口 |
海外における対応体制
米州・欧州・中国・東南アジア含む全ての海外グループ会社においては、役員・従業員および派遣社員が通報できる通報窓口を設置しています。各通報窓口では、各国・地域の法規制に準拠し、通報情報の厳格な管理と通報者への不利益行為の禁止しており、匿名での通報も行えるように対応しています。
さらに、海外グループ会社の経営層のコンプライアンス問題について、当社が直接受け付ける仕組み「Epson Executive Compliance Hotline(グローバル通報窓口)」を導入し、グループ全体の通報制度の網羅性・実効性向上を図っています。
リスクマネジメント
エプソンは、子会社を含むグループ全体のリスク管理の総括責任者を社長とし、グループ共通のリスク管理については本社主管部門が各事業部門および子会社と協働してグローバルに推進し、各事業固有のリスク管理については事業部長が担当事業に関する子会社を含めて推進する体制としています。また、リスク管理統括部門は、グループ全体のリスク管理全般をモニタリングおよび是正・調整し、リスク管理活動の実効性を確保しています。
これらのリスク管理体制は、エプソングループリスク管理基本規程で定めています。

そして、事業オペレーション上のリスクや、贈収賄・カルテルといったビジネス倫理上のリスクなど、会社に著しい影響を与え得る重要なリスクについて、内部統制フレームワーク「COSO*」やリスクマネジメント国際規格「ISO31000」を参考にしたリスク評価により優先度を定め、グループ経営に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクを「全社重要リスク」、事業オペレーションに重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクを「事業重要リスク」、また子会社の経営に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクを「関係会社重要リスク」として特定しています。その特定した重要リスクに対し、制御計画の立案・実行と進捗状況のモニタリングを定期的に行っています。制御活動の有効性については、「全社重要リスク」は四半期ごとに、「事業重要リスク」「関係会社重要リスク」は半期ごとに定期評価を行い、必要に応じて制御計画の見直し、実効性の確保に努めています。また、社長はリスク管理に関する重要事項を四半期ごとに取締役会に報告しています。
* COSO:ビジネスの倫理観を高め、内部統制を実施し、企業統治などを目的とした組織委員会

危機管理
エプソンは、社長を委員長、リスク管理担当本部長を副委員長、本社主管本部長を構成員とする危機管理委員会の構成を平時から定めており、重大なリスクの発現時には、所定の危機管理プログラムに従い、速やかな初動対応をとる体制を整えています。
また、危機管理委員会活動については、経営会議や取締役会などを通じ、社外取締役を含む経営層に定期的に対応状況を報告しています。
サプライチェーン事業継続マネジメント
エプソングループでは、サプライチェーン上で災害・事故・新興感染症のまん延などの異常事態が発生した場合でも、お客様に対する商品・サービスの供給責任を全うし、事業の被害損失を最小限に抑えることを目的として、BCP(事業継続計画:Business Continuity Plan)を策定しています。また、これらBCPを適切に維持・改善するための「サプライチェーンBCM(事業継続マネジメント:Business Continuity Management)」を推進しています。
エプソングループのサプライチェーンBCM
エプソンは、高度化・複雑化するサプライチェーンに起こりうる有事・リスクに対し、リスクに強く、レジリエンスの高い、持続可能性のある、より強固なサプライチェーンを確立するため、「機能分散」 「代替手段確保」 「強靭化」 を基本的な考え方として定めています。また、サプライチェーン上の機能を5つ(サプライヤー、調達、生産、販売、物流)に区分し、それぞれに設定した重点項目を強化しています。

機能 | 取り組みの重点項目 |
---|---|
サプライヤー | 事業継続マネジメント(BCM)の構築と事業継続計画(BCP)により、サプライヤー自身の供給継続力を強化いただく |
調達 |
調達先複社化、代替調達品確保、長期調達契約、パートナーシップ強化、部品・原材料の在庫保持 *材料や部品(直接材)および間接材も対象 |
生産 | 分散生産体制の強化、ファシリティの強靭化、感染症予防対策の強化、製品在庫の確保 |
販売 | オペレーション拠点・人的資源・ITのバックアップ体制確保 |
物流 | 船会社との関係強化による枠取り、出荷計画の管理精度向上、物流手段(輸送業者・輸送ルート・倉庫機能)の複数化 |
BCP(事業継続計画:Business Continuity Plan)の概念
グラフの縦軸は操業度を示し、横軸は時間軸を示しています。有事が発生した場合には、操業度が低下し、その期間が続くことになりますが、BCMの取り組みにより、有事の際にも操業度をできるだけ高い水準で維持、あるいは停止時にはできるだけ早く復旧させることが可能となります。

サプライチェーンへの対応
2019年以降の感染症拡大、世界規模の半導体不足、輸送力の不足など、サプライチェーン途絶リスクは我々の想定をはるかに超えるものでした。さらに、各地の紛争ぼっ発および長期化、さまざまな地域に存在する地政学リスク、災害リスクなど、サプライチェーンを取り巻く環境におけるリスクは解消されておらず、むしろ、その規模や範囲は拡大し、深刻化しています。
エプソンは、高度化・複雑化するサプライチェーンに起こりうる有事・リスクに対して、リスクに強く、レジリエンスを高め、持続可能性のある、より強固なサプライチェーンを確立する為、「機能分散」「代替手段確保」「強靱化」を基本的な考え方として定めています。また、サプライチェーン上の5つの機能について、以下の対応を進めています。
- サプライヤー
サプライヤー自身の供給継続力強化に向け、平時よりサプライチェーン上で異常事態が発⽣した場合に事業の被害 損失を最⼩限に抑えることを⽬的とした管理の仕組み(事業継続マネジメント:BCM)を構築と、有事における様々な側⾯から対策を講じた行動計画(BCP)を策定を依頼します。 - 調達
サプライチェーン情報を更に深堀り調査し、リスク検知力を高めます。そして、効果的かつ実効性の高い調達リスク回避策(予防策)を実践し、部材の安定調達を実現します。
複数調達ソースの確保、代替品評価の拡大、BCP在庫の確保、それを実現するためにパートナーとの信頼関係の強化を進めます。 - 生産
新たな感染症等のパンデミックに備え、従業員の安全を最優先とし、生産影響を最小限に抑えるための予防ガイドラインを制定しました。
製品供給責任を果たすため、分散生産体制の構築を進めます。また、各事業の基幹部品製造を担う国内生産工場をはじめ全ての生産工場の更なる強靭化を進めます。 - 販売
有事発生時、販売機能に影響を与えない予防要求水準の明確化と販売物流ガイドラインを制定します。製品供給責任を果たすため、販売物流ガイドラインに沿った運用を進めます。 - 物流
パートナーとの更なる関係強化とともに、物流の可視化を進め、製造・販売拠点間の情報連携を強化し、お客様の要望に応えられるデリバリーを実現します。
輸送ルート、船・航空便・拠点倉庫など、物流手段・方法の複数化を進めます。また、全ての事業製品における積載効率アップ活動を継続し、物流リスクの軽減、物流効率の向上と共に環境負荷軽減を進めます。
内部監査
内部監査部門は、リスク管理、内部統制および経営管理方法の有効性、効率性ならびに遵法の観点から、全ての事業部・本部および国内・海外の子会社・関係団体を対象として、行動原則に則って、コンプライアンス(企業倫理)違反が無いか確認、自律的内部統制を促進する監査を実施し、顕在化した問題点についてはフォローアップ監査により改善状況を確認することで、経営におけるリスクを極小化する活動を行っています。また、グループガバナンスの観点から、欧州、米州、中国、東南アジアの各地域統括会社の監査部門と連携し、グループ全体の内部監査を統括しています。
監査対象先については、事業部・本部、国内・海外子会社、関係団体全てを対象に重要性判断を行い、組織体ごとのリスク評価に照らして有効性・効率性をふまえ監査サイクルを定めて毎年選定し、計画的に監査を実施しています。2023年度は、19の監査対象先に監査を実施し、検出した49件の指摘事項に対して具体的な改善助言を行いました。2024年度については62の組織にグルーピングしたうえでリスク評価を行ない、監査対象先を選定して監査を実施します。
財務報告に関わる内部統制
財務報告の信頼性を確保するための内部統制(J-SOX)の監査を毎年実施しています。監査対象の当社事業部および子会社は、内部統制の整備・運用を自己評価し、J-SOX主管部門が評価結果の有効性を担保する「自律分散型」の評価を実施しています。監査対象外の当社事業部・子会社・関連会社は、内部統制の自己点検を実施し改善を行っています。