内部統制システム
エプソンは、「経営理念」を経営上の最上位概念として捉え、これを実現するために「企業行動原則」を定め、グループ全体で共有しています。内部統制については、内部統制システムの基本方針で定めており、グループ全体の整備レベルが着実に向上するよう努めています。
グループガバナンス
エプソンは、グループマネジメントの基本を「商品別事業部制による事業部長の世界連結責任体制と、本社主管機能のグローバル責任体制」とし、事業オペレーション機能を担う子会社の業務執行体制の整備に関する責任は各事業部門の責任者が負います。また、グループ共通のコーポレート機能などについては本社の各主管部門の責任者が責任を負うことにより、子会社を含めたグループにおける業務の適正化に努めています。
コンプライアンスマネジメント
エプソンが目指しているのは経営理念に基づき、全てのステークホルダーの皆様と信頼関係を築きながら、持続的にお客様の期待を超える価値を創造する企業活動を行うことです。この信頼関係を維持・強化するため、経営の透明性・公正性を高め、さらに迅速な意思決定により実効性を踏まえた適切なコンプライアンスマネジメントを推進しています。2021年度実績として、法令に基づき開示すべき違反はなく、監査済み財務諸表に記載すべき罰金や和解金の発生はありません。
コンプライアンス推進体制
コンプライアンス委員会は、取締役会の諮問機関として社外取締役5名全員および常勤監査等委員である取締役1名で構成しています。委員長は常勤監査等委員が務め、コンプライアンス活動の重要事項について審議し、取締役会に報告・提案することにより業務執行を監督しています。コンプライアンス担当役員(CCO)は、コンプライアンスにおける社長を含む業務執行全般を監督・監視し、コンプライアンス委員会にその状況を定期的に報告します。地域統括コンプライアンス責任者(R-CCO:Regional Chief Compliance Officer)は、各国・地域の法令・慣習など社会的要請を加味した実効性あるコンプライアンス活動を推進するため、CCOの指示に従ってCCOを補佐し、担当範囲として定める各子会社におけるコンプライアンス活動を促進・支援します。CCOおよびR-CCOは、定期的に子会社におけるコンプライアンス活動の重要事項の方向付けを行う、R-CCO会議を開催しています。また、コンプライアンス統括部門が、コンプライアンス推進全般のモニタリングおよび是正・調整を行い、活動の網羅性と実効性を高めるよう努めています。
これらのコンプライアンス推進体制は、エプソングループコンプライアンス基本規程で定めています。

通報制度・通報窓口
エプソンは、把握が難しいコンプライアンス問題を早期に把握するため、役員・従業員(正規社員、契約社員など)および派遣社員からの情報を入手する手段として、通報窓口を設置し、その中から懸念される事案について報告が上がる仕組みを整えています。企業行動原則とエプソングループ通報制度規程に、通報情報の厳格な管理と通報者への不利益行為の禁止、匿名性の確保などの通報制度の守るべき基本を定め、当社および全てのグループ会社はこれに基づいて通報窓口を設置しています。通報窓口は、各国・地域の法規制に準拠し、英語・中国語・インドネシア語など各社の所在する現地語での利用が可能となっています。
また、通報窓口について、エプソングローバル社員行動規範で定めるとともに、イントラネットでの開示、コンプライアンス月間(毎年10月)やeラーニング研修などを通じ、役員・従業員および派遣社員への周知と窓口利用を促しています。
さらに、調達先などの外部取引先からの通報を受け付ける「取引先通報窓口」を、当社および全てのグループ会社が設けています。取引先通報窓口は、各地で行うサプライヤー様説明会で説明し、窓口設置の周知と利用を促しています。
グループ全体の通報状況は、通報者が特定されない形で、定期的に取締役会、監査等委員会、コンプライアンス委員会および経営戦略会議に報告しています。
国内における対応体制
国内グループ会社の役員・従業員および派遣社員を対象とし、社内に連絡する内部通報窓口と、第三者機関である外部会社に連絡する外部通報窓口の2つの通報先を持つ「エプソン・ヘルプライン」を設置しています。エプソン・ヘルプラインの利用方法は、「エプソン・ヘルプライン利用の手引き」としてイントラネットに明示するとともに、研修などの機会を通じて役員・従業員および派遣社員に周知しています。また、電子メールや電話などの連絡方法を設けており、24時間、365日での通報を可能としています。寄せられた通報案件については、調査を実施し、必要な場合は是正措置を行います。当社は、2006年の公益通報者保護法の施行に合わせて、従業員および派遣社員からの通報窓口を開設して以降、通報制度の整備を率先して実施してきています。2022年6月に施行された改正公益通報者保護法に対応し、公益通報業務従事者の指定や退職後1年以内の従業員および派遣社員からの通報に対応するなどのさらなる仕組みの整備を実施しています。
国内通報窓口の受付件数は93件で、前年度から15件増加しました。通報の内容としては、社内ルールへの違反や不正、違法行為の可能性の指摘などがあり、これらについては適切に対応しています。役員・従業員および派遣社員に対しては、「エプソン・ヘルプライン」とは別に具体的な事案別相談窓口を設けることで、相談しやすい環境整備・運用に努めています。
事案別相談窓口一覧
ハラスメント相談窓口 | 管理職よろず相談窓口 | 長時間労働相談窓口 |
キャリア相談窓口 | 障がい者の就業に関する相談窓口 | ダイバーシティーに関する相談窓口 |
女性の健康に関する相談窓口 | 従業員相談室 | 腐敗(賄賂)規制に関する相談窓口 |
競争法相談窓口 | インサイダー取引相談窓口 |
海外における対応体制
全ての海外グループ会社においては、役員・従業員および派遣社員が通報できる通報窓口を設置しています。各通報窓口では、各国・地域の法規制に準拠し、通報情報の厳格な管理と通報者への不利益行為の禁止しており、匿名での通報も行えるように対応しています。
さらに、海外グループ会社の経営層のコンプライアンス問題について、当社が直接受け付ける仕組み「Epson Executive Compliance Hotline(グローバル通報窓口)」を導入し、グループ全体の通報制度の網羅性・実効性向上を図っています。
リスクマネジメント
エプソンは、子会社を含むグループ全体のリスク管理の総括責任者を社長とし、グループ共通のリスク管理については本社主管部門が各事業部門および子会社と協働してグローバルに推進し、各事業固有のリスク管理については事業部長が担当事業に関する子会社を含めて推進する体制としています。また、リスク管理統括部門は、グループ全体のリスク管理全般をモニタリングおよび是正・調整し、リスク管理活動の実効性を確保しています。
これらのリスク管理体制は、エプソングループリスク管理基本規程で定めています。

そして、事業オペレーション上のリスクや、贈収賄・カルテルといったビジネス倫理上のリスクなど、会社に著しい影響を与え得る重要なリスクについて、内部統制フレームワーク「COSO」やリスクマネジメント国際規格「ISO31000」を参考にしたリスク評価により優先度を定め、グループ経営に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクを「全社重要リスク」、事業オペレーションに重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクを「事業重要リスク」、また子会社の経営に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクを「関係会社重要リスク」として特定しています。その特定した重要リスクに対し、制御計画の立案・実行と進捗状況のモニタリングを定期的に行っています。制御活動の有効性については、「全社重要リスク」は四半期ごとに、「事業重要リスク」「関係会社重要リスク」は半期ごとに定期評価を行い、必要に応じて制御計画の見直し、実効性の確保に努めています。また、社長はリスク管理に関する重要事項を四半期ごとに取締役会に報告しています。

危機管理
エプソンは、社長を委員長、リスク管理担当本部長を副委員長、本社主管本部長を構成員とする危機管理委員会の構成を平時から定めており、重大なリスクの発現時には、所定の危機管理プログラムに従い、速やかな初動対応をとる体制を整えています。
COVID-19の対応では、危機管理プログラムの定めに従い危機管理委員会を立ち上げ、経営トップの指揮の下、グループ社員・家族の安全確保、感染拡大防止および業務継続を目的に、各国・地域拠点の状況確認、地域感染レベルに応じた具体的な指示や対応を行い、感染防止策の展開などを実施しました。
また、危機管理委員会活動内容については、定期的に社外取締役を含む経営層に対応状況を報告し、経営戦略会議および取締役会にも報告しています。
サプライチェーン事業継続マネジメント
エプソングループでは、サプライチェーン上で災害・事故・新興感染症のまん延などの異常事態が発生した場合でも、顧客に対する商品・サービスの供給責任を全うし、事業の被害損失を最小限に抑える事を目的として、各事業においてBCP(事業継続計画:Business Continuity Plan)を策定しています。また、これらBCPを適切に維持・改善していくために「サプライチェーンBCM(事業継続マネジメント)」を推進しています。
エプソングループのサプライチェーンBCM
エプソンは、高度化・複雑化するサプライチェーンに起こりうる難局に耐えられる、より強固なサプライチェーンを確立するため、「機能分散」 「代替手段確保」 「強靭化」 を基本的な考え方として定め、機能を5つに区分し、それぞれに設定した重点項目を強化しています。

機能 | 取り組み |
---|---|
サプライヤー | 有事対応力評価、安全管理評価など、サプライヤー自身の供給継続力を強化いただく |
調達 |
調達先複社化、代替調達品確保、長期調達契約、パートナーシップ強化、部品・原材料の在庫保持 *材料や部品(直接材)および間接材も対象 |
生産 | 分散生産体制の強化、ファシリティの強靭化、感染症予防対策の強化、製品在庫の確保 |
販売 | オペレーション拠点・人的資源・ITのバックアップ体制確保 |
物流 | 船会社との関係強化による枠取り、出荷計画の管理精度向上、物流手段(輸送業者・輸送ルート・倉庫機能)の複数化 |
BCP(事業継続計画:Business Continuity Plan)の概念
グラフの縦軸は操業度を示し、横軸は時間軸を示しています。有事が発生した場合には、操業度が低下し、その期間が続くことになりますが、BCMの取り組みにより、有事の際にも操業度をできるだけ高い水準で維持、あるいは停止時にはできるだけ早く復旧させることが可能となります。

サプライチェーンリスクへの対応
- 生産
COVID-19感染が拡大する中、エプソングループの生産拠点においても、ロックダウンや感染者急増、一斉PCR検査などにより、工場の操業が停止・低下する事態が生じました。各工場では、密となる環境の改善や検査・接種の強化を図り、第一に従業員の安全確保、そして工場稼働の安定化を図ってきました。さらに商品の供給責任を全うするため、主要製品を2拠点以上で生産する分散生産体制の強化も進めています。 - 調達
米中摩擦、COVID-19影響、メーカーでの事故・災害などの複合要因により、半導体・電子部品の世界的な不足が起きています。またウクライナ情勢は、長期化すると部品メーカーの原材料・希ガスなどの調達に影響が出る可能性があります。エプソンでは、取引先との関係強化、複数調達ソース確保、代替品への切り替えなどにより部品・間接材料の確保に努めています。今後も、部品・原材料サプライチェーンの可視化推進、取引先との戦略的パートナーシップなどの取り組みにより、安定調達の強化を図っていきます。 - 物流
COVID-19による巣ごもり需要などを背景に、貨物の需要が輸送能力を上回る市場環境となり、特に国際海上輸送においてスペース・コンテナ不足、スケジュール遅延、運賃の高騰が深刻化しました。エプソンでは、生産拠点との日次連携による出荷物量管理と手
配迅速化、船会社との関係強化による枠取りなどにより、輸送確保に努めています。今後も、船会社とのパートナーシップ、コンテナ積
載率向上、出荷平準化などの取り組みにより、物流の安定化を図っていきます。
内部監査
内部監査部門は、リスク管理、内部統制および経営管理方法の有効性、効率性ならびに遵法の観点から、全ての事業部・本部および国内・海外の子会社・関係団体を対象として、行動原則に則って、コンプライアンス(企業倫理)違反が無いか確認、自律的内部統制を促進する監査を実施し、顕在化した問題点についてはフォローアップ監査により改善状況を確認することで、経営におけるリスクを極小化する活動を行っています。また、グループガバナンスの観点から、欧州、米州、中国、東南アジアの各地域統括会社の監査部門と連携し、グループ全体の内部監査を統括しています。
監査対象先については、事業部・本部、国内・海外子会社、関係団体全てを対象に重要性判断を行い、組織体ごとのリスク評価に照らして有効性・効率性をふまえ監査サイクルを定めて毎年選定し、計画的に監査を実施しています。2021年度は、19の監査対象先に監査を実施し、検出した60件の指摘事項に対して具体的な改善助言を行いました。2022年度については71の組織にグルーピングしたうえでリスク評価を行ない、監査対象先を選定して監査を実施します。
財務報告に関わる内部統制
財務報告の信頼性を確保するための内部統制(J-SOX)の監査を毎年実施しています。監査対象の当社事業部および子会社は、内部統制の整備・運用を自己評価し、J-SOX主管部門が評価結果の有効性を担保する「自律分散型」の評価を実施しています。監査対象外の当社事業部・子会社・関連会社は、内部統制の自己点検を実施し改善を行っています。