事例(バリューチェーン)
日本をはじめ世界各地に製造拠点と販売拠点を持つエプソンにとって、エコ輸送は重要なキーワードになっています。ここでは、ハイキューブコンテナへの対応や、物流拠点・輸出方法の変更によるエコ輸送の取り組み事例を紹介します。
事例1:低炭素海運サービスの活用
エプソンは2024年度から、欧州向けの海上輸送の一部で、温室効果ガス(GHG)の排出削減につながる低炭素海運サービスの活用を開始しました。初年度にはフィリピンからの輸出用40フィートコンテナ100本に活用し、従来の重油船による海上輸送と比較して約230トンの温室効果ガス排出削減を見込んでいます。脱炭素は世界的な課題であり、海運業界でも2050年頃までのGHG排出ゼロに向けて低環境負荷の代替燃料への転換が進められており、特に欧州の海運会社が目標達成年の前倒しを掲げその取り組みが進んでいます。エプソンは、海運大手Maersk(マースク)社と提携し、一部航路でバイオディーゼルやグリーンメタノールを代替燃料として使用するコンテナ船を活用します。この取り組みにより、対象航路でのGHG排出量を通常の海上輸送と比較して最大84%の削減を実現します。
事例2:物流動線見直しCO2排出量の大幅削減
エプソンは、今までアフリカ南部の顧客向けの商品を、中東の物流センター(UAE:アラブ首長国連邦)または欧州の中央倉庫(ドイツ)から船舶を使ってヨハネスブルク(南アフリカ共和国)経由で供給していました。これはアフリカには自社の物流拠点がなく、既存の物流拠点を使って運用していたためです。
商品の生産拠点はアジア(中国、インドネシア、フィリピン)に存在するため、これらの物流センターを経由して輸送することにより輸送距離が長くなります。CO2排出が多くなること、配送に時間がかかること、これらを解決することが課題となっていました。
そこで、拡大するアフリカ市場への抜本的な対策として物流動線見直しを行い、各生産拠点から新設した南アフリカの物流センターへ直送し、そこからアフリカ南部の顧客向けにお届けする方式に変更しました。この結果、従来と比べCO2排出量が66~75%(UAE経由との比較)、34~41%(ドイツ経由との比較)となり大幅に削減できました。
事例3:ハイキューブコンテナ導入による輸送効率の向上
現在市場にある輸送用のコンテナは約7割がハイキューブコンテナ*1となっています。エプソンはこれまで工場からの商品出荷時に標準タイプのコンテナを採用していましたが、ハイキューブコンテナの普及に伴う対応を順次進めています。
コンテナの内寸が高くなったことで、これまでの標準タイプを前提とした積み数(パレタイズ)では、約10%の積載ロスが発生してしまいます。ハイキューブコンテナに最適化したパレタイズによりコンテナの本数を削減し、これまでより輸送効率を上げることで環境負荷の低減に寄与しました。
この対応を主導したロジスティクス企画担当者は次のように語っています。「商品の出荷台数や倉庫のパレットラックの高さなど、社内の取り決めは全て標準コンテナの積み荷サイズ(パレタイズ荷姿)で適正化されていました。ハイキューブコンテナの導入にあたり、特にコンテナの受け手となる販売会社の倉庫担当者には、倉庫レイアウトの見直しに始まり、積み方の改善などさまざまな協力をお願いする必要がありました。コスト面での調整には大変苦労しましたが、環境負荷の低減につながるという意識の共有がこの活動を進める上での重要なポイントとなりました」
エプソンの情報機器の製造拠点がある東南アジアからの輸送において、まず2011年度にヨーロッパ全域仕向けのものについて、また2015年度には米国・ブラジル・インド仕向けのものについて、全てハイキューブコンテナへの置き換えが完了しました。
*1 高さが9フィート6インチ(約2.6m)で、8フィート6インチ(約2.3m)の標準コンテナより1フィート(約30cm)背が高くなっているもの
ハイキューブコンテナ導入の比較
40ft 標準コンテナ | 40ft ハイキューブコンテナ | 導入効果 | |
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コンテナ寸法(LWH) | 12,033 x 2,352 x 2,393mm | 12,033 x 2,352 x 2,698mm | 30cm高さ向上 |
容積 | 67.7 m³ | 76.4 m³ | 12.9%向上 |
WF-2650 Seriesの事例 | |||
梱包箱サイズ | 488 x 434 x 301mm | - | |
パレタイズ荷姿 | 976 x 1,302 x 2,108mm | 976 x 1,302 x 2,409mm | 1段増加 |
パレタイズ | 42箱 | 48箱 | 14.3%向上 |
コンテナ積載数 | 882箱 | 1,008箱 |
米国仕向けの切り替え効果
* 米国仕向けのコンテナ約200本の削減により、東南アジアの製造現法から米国の倉庫まで、貨物船・鉄道・トラックでコンテナを運ぶ際に発生するCO2排出量を削減できたものとして計算。船舶輸送の原単位は一般財団法人日本船舶技術研究協会の原単位を使用
事例4:プリントヘッド輸出の変革による環境負荷低減
インドネシアのプリンター製造拠点へ輸出するプリントヘッドは、日本国内の工場から山形県の東北エプソンに集約された後、トラック輸送を経て成田空港から航空輸送されていました。これを環境負荷低減の観点から、東北エプソンから約8kmという好立地にある酒田港からの海上輸送ルートを確立することにより、コストとCO2排出量を大きく削減することができました。
海上輸送によるCO2削減効果(t-CO2)
改善前 | 改善後 | |||
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距離 | CO2排出量 | 距離 | CO2排出量 | |
陸路 | 約500km | 33.9 | 約8km | 0.5 |
空路 | 約5,800km | 401.3 | - | |
海路 | - | 約6,200km | 47.7 | |
合計 | 435.2 | 48.2 |
* 東北エプソンからインドネシアの首都ジャカルタまで20フィートコンテナを運ぶ際に発生するCO2排出量を算出(2015年度実績)。船舶輸送の原単位は一般財団法人日本船舶技術研究協会の原単位を使用