脱炭素

パリ協定が示す脱炭素社会への変革に向けて、エプソンはオペレーション(スコープ1、2)、バリューチェーン(スコープ3)における、温室効果ガス排出量の削減を基本とした気候変動対策に取り組んでいます。また、省エネルギー商品の開発やインクジェット技術のさらなる展開によって、社会全体へ貢献します。



目指す姿

温室効果ガス(GHG)の排出削減に向けて

2015年のパリ協定において、世界の平均気温を産業革命前に比べ、1.5℃以内に抑える努力をするという世界共通の長期目標(1.5℃目標)が掲げられました。
この目標の達成は気候変動の影響を軽減し、持続可能でこころ豊かな社会の実現に不可欠であると認識しています。こうした認識のもと、エプソンは世界の「1.5℃目標」と整合するかたちで2050年のNet-Zeroに向けて、自社のバリューチェーンにおける温室効果ガス排出削減目標を策定しています。
そしてエプソンは、これらの目標達成にとどまらず、脱炭素社会の実現への貢献として、さらなる炭素の吸収・除去を講じ、「2030年にスコープ1+2排出量実質ゼロ達成」と「2050年にカーボンマイナスの達成」を目指しています。

GHG排出削減目標と目指す姿

SBTi*1に承認された目標
(1.5℃目標水準。いずれも基準年は2017年度)

短期目標:
2030年にスコープ1+2+3を総量で55%削減
2030年にスコープ1+2を総量で90%削減

長期目標:
2050年にスコープ1+2+3を総量で90%削減
2050年にNet-Zero達成
目指す姿*2 2030年にスコープ1+2排出量実質ゼロ達成
2050年にカーボンマイナス達成

 スコープ1: 事業者の燃料などの使用による直接排出
 スコープ2: 電力などのエネルギー起源の間接排出
 スコープ3: 自社バリューチェーン全体からの間接的な排出

*1 Science Based Targetsイニシアチブ(SBTi)は、企業や金融機関が気候危機への対応に貢献できるよう支援する、企業向けの気候行動推進組織です。同イニシアチブは、地球温暖化を壊滅的な水準以下に抑え、遅くとも2050年までにネットゼロを達成するために必要な水準と整合した温室効果ガス(GHG)排出削減目標を企業が設定できるよう、基準、ツール、ガイダンスを策定しています。
*2 SBTiに承認された目標である総排出量90%を削減し、残余排出量に対して吸収・クレジットなどによる中和を行い排出量実質ゼロ、あるいはさらなる脱炭素化を狙うもの。

TCFD提言への対応

2017年6月、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)が最終報告書を公表しました。TCFDとは、企業に対し中長期にわたる気候関連のリスクと機会を、それらの財務に関する情報として公開を求めるものです。長期にわたり、影響の範囲と規模の予測がつかない気候変動という事象に対して、さまざまな状況変化への適応能力が 高いレジリエントな経営や企業体質が求められていると受け止めています。

TCFD提言への対応はこちら

オペレーションの取り組み(スコープ1、2)

エプソンは、全社横串組織の下、各拠点は生産革新や設備更新・投資、再生可能エネルギーの活用などの削減施策を行うことで、脱炭素の実現性を高めています。

スコープ1、2排出量削減の主な施策

  • 生産革新
  • 設備更新(投資):基礎設備、除害装置、太陽光発電など
  • 再生可能エネルギー活用:地域の自然資源を活用した再エネ電力の調達など
  • その他:電力会社のGHG排出係数改善など

再生可能エネルギーの活用の詳細はこちら

カーボンプライシングの取り組み

企業や家庭など、社会の広範囲にわたり炭素の排出に対して価格を付けることにより、削減のための活動やイノベーションへの期待が高まっています。エプソンは、GHG排出量削減を目的とした投資に関する執行前の評価(フィージビリティ・スタディ)としてカーボンプライシングの考えを取り込んだ投資回収期間の判断基準やガイドラインを整備し、2018年度からの試行導入を経て2020年より正式運用を開始しています。

2024年度総括

各拠点における省エネ活動の推進に加え、再生可能エネルギーの活用を進めています。2024年度は、従来1%に満たなかった再生可能エネルギーの比率を約72%(電力ベースでは100%)まで高めました。中期経営計画の実現のため、エネルギー使用量の増加が見込まれていますが、エプソンは今後も、生産革新を含めた削減施策を中心に、再エネ電力の活用と合わせた目標達成への取り組みを進めていきます。

関連情報

グローバル主要環境データ

バリューチェーンの取り組み(スコープ3)

エプソンは事業活動に伴う排出量(スコープ1、2)の削減活動に積極的に取り組んでいますが、バリューチェーンで捉えた場合は、エプソンの生産拠点などからの直接・間接的な排出量よりも、それ以外の間接的な排出量(スコープ3)が多くを占めます。その中でも特に影響の大きいのは、原材料の調達(カテゴリー1:購入した物品・サービス)と製品の使用段階(カテゴリー11:販売した製品の使用)です。
こうした状況を踏まえ、エプソンは環境に配慮した原材料の調達や製品の省エネルギー性能の向上に加え、物流なども含めたバリューチェーン全体を通じた排出削減施策を推進しています。

38%削減スコープ3事業利益原単位(2017年度比)

物流におけるCO<sub>2</sub>排出量

物流での取り組み

エプソンは、商品・部品と排出物の効率的な輸送を通じて、温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいます。商品の小型化によって輸送効率の向上を図るとともに、物流拠点の見直し、積み方やパッキングの工夫による積載効率の向上、発着頻度や便数の見直しなどの施策を継続的に実施しています。

サプライヤーとの連携

サプライチェーンCSRとして、エプソンとサプライヤーが同じ姿勢で行動することにより、協働で社会課題の解決に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献します。

サプライチェーンにおける環境の取り組み

関連情報

グローバル主要環境データ(スコープ3)

削減貢献量

エプソンは、自社におけるGHG排出量の削減や資源の適正利用はもちろんのこと、商品・サービスを通じて、お客様のもとでの環境負荷低減を目指しています。世の中で一般的に使用されている従来製品と比べて環境負荷の低い商品・サービスを提供・普及することで、社会全体の環境負荷低減に貢献していきます。こうした貢献の一指標として、「削減貢献量」があります。
WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)が公開したガイダンスを参照しつつ、第三者機関の確認に基づいて算定した結果、2024年度のレーザープリンターからエプソンのインクジェットプリンターへの置き換えによる削減貢献量は9,800t-CO2e*1となりました。

*1 みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社の算出方法確認のもと、世界市場の主要なレーザープリンターの公開されている生涯CO2排出量の加重平均と、自社A3カラーインクジェットプリンターの生涯CO2排出量との差分に、自社A3カラーインクジェットプリンターの当該年度の販売台数を乗じた値。算定方法の精査により2023年度実績の開示とは前提が異なります。

関連情報

お客様のもとでの環境負荷低減

再生可能エネルギーの活用

エプソンは再生可能エネルギーの活用を、脱炭素の達成目標に向けた重要なテーマとして位置づけ、2021年3月に、全世界のエプソングループ拠点*1において使用する電力を2023年までに100%再エネ化することを宣言しました。その後、2021年11月には国内拠点の再エネ化を完了し、2023年12月にはグローバルに展開する全拠点におけるすべての使用電力を再生可能エネルギーに置き換えました。エプソングループの年間使用電力量の合計は約867GWh*2であり、再エネ化により年間約40万トンのCO2排出を抑制します。

*1 一部、販売拠点などの電力量が特定できない賃借物件は除く
*2 2024年度実績。CGS(コージェネレーションシステム)発電および枯渇燃料での自家発電分の電力を含む。RE100の技術要件を満たすグリーンガスの調達が困難なため、使用電力量に相当する電力証書を自主的に充てることで、100%再エネ化完了としています。

エプソングループ、グローバル全拠点の使用電力を100%再生可能エネルギー化

スコープ1、2の内訳と電力の状況(2024年度実績)

2017年度時点におけるエプソンGHG排出量の7割以上は枯渇性の電力由来のものでした。脱炭素の実現に向け、先行して使用電力の再生可能エネルギーへの転換に取り組んできた結果、2024年度は電力由来のGHG排出量はゼロとなり、スコープ2排出量の削減に大きく寄与しています。国内外において、水力や風力発電といった各地域における最適な再エネ電力の選択や、オンサイト発電への積極的な投資を行い、電力使用量の100%まで再生可能エネルギーの比率を伸ばしています。

世界中の拠点で再生可能エネルギーの活用を推進

日本国内において長野県エリアでは、長野県公営水力を活用した水源豊かな信州産のCO2フリー価値付き電力「信州Greenでんき」を活用し、温室効果ガスの削減とエネルギーの地産地消を同時に実現しています。また、半導体工場を擁しエプソンの国内電力使用の約半数を占める東北エリアでは、CO2フリー価値付き電力「よりそう、再エネ電気」を活用するなどし、国内全ての拠点で使用する電力の再生可能エネルギーへの転換を2021年11月に完了しました。
海外の生産および販売拠点においては、フィリピンの生産拠点では工場屋根に設置したメガソーラーによる自家発電に加え、地熱と水力ミックスの電力に2021年1月から切り替えています。またインドネシア・ブカシの生産拠点では、2022年7月からバイオマス発電の使用を開始しています。火山島の資源を生かし活発に開発が進む地熱発電や、パーム油生成過程での副産物であるPKS(アブラヤシ殻)とウッドチップを燃料とした持続可能なバイオマス発電の調達は、地域特性に応じたエネルギー活用の事例となります。

グローバルでのオンサイト発電の拡大(太陽光発電の設置)

再生可能エネルギーの安定的・持続的な調達のため、自家発電量の最大化に向けた計画を実行しています。各拠点の事情に合わせて、自己投資とPPAから最適な方法を選択し、屋根など自社の敷地内に太陽光パネルを設置しています。

オンサイト発電の事例

フィリピン(Epson Precision (Philippines), Inc.)

タイ(Epson Precision (Thailand) Ltd.)

中国(Epson Engineering (Shenzhen) Ltd.)

米国(Epson Portland Inc.)

中国(Epson Wuxi Co., Ltd.):PPA*1

日本(富士見事業所):PPA*1

*1 オンサイト型自家消費太陽光発電サービス

自然エネルギー拡大に向けた提言への賛同

再生可能エネルギー(自然エネルギー)の活用は重要なテーマであり、エプソンでも中長期での拡大を計画、実施しています。しかし、再生可能エネルギーの拡大には、供給量・供給地域および費用などの課題があると認識しています。それらは個社では対応のできないものであり、その解決策の一つとして、下記の政策提言は重要な提言であると考え、賛同することにしました。これらの提言が実現することで、将来の気候変動への影響を最小化する活動が、より実現しやすくなります。
気候変動対策は、日本のみならずグローバルな取り組みが不可欠であり、今後もこのような提言への賛同を含め、脱炭素化に向けた活動を継続していきます。なお、業界団体の加盟・継続に当たっては、業界団体の気候変動分野の取り組みが当社の基本方針と合致しているか確認しています。

日付 提言内容 事務局
2025年11月 再生可能エネルギーの利用拡大に向けた国の制度・ルールの改善点

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公益財団法人 自然エネルギー財団
2024年7月 1.5度目標と整合する野心的な2035年目標を求めるメッセージ

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気候変動イニシアティブ(JCI)
2023年6月 自然エネルギーの電力の利用拡大に向けた課題と提言

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公益財団法人 自然エネルギー財団
2023年4月 再生可能エネルギーの導入加速と実効性の高いカーボンプライシングの早期導入を求めるメッセージ

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気候変動イニシアティブ(JCI)
2022年6月 再生可能エネルギーの導入加速を求めるメッセージ

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気候変動イニシアティブ(JCI)
2021年4月 パリ協定を実現する野心的な2030年目標を求めるメッセージ

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気候変動イニシアティブ(JCI)
2021年1月 再生可能エネルギー目標引き上げを求めるメッセージ
2030年度の再生可能エネルギー電力目標を40~50%に

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気候変動イニシアティブ(JCI)
2020年8月 気候変動に取り組む企業が求める3つの戦略と9つの施策
自然エネルギーの電力を利用しやすい国に

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・公益財団法人 自然エネルギー財団
・一般社団法人 CDP Worldwide-Japan
(CDP Japan)
・公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)

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グローバル主要環境データ
エプソングループ、グローバル全拠点の使用電力を100%再生可能エネルギー化