Actions for Environmental Vision:
物流の脱炭素化に向けて

エプソンが目指す、2050年カーボンマイナス*1。その目標を達成するために、生産過程だけではなく、ロジスティクスにおける温室効果ガス(GHG)の排出削減にも取り組んでいます。中でも、海外売上比率が高く海上輸送の割合が多いエプソンにとって、海運における環境負荷の低減は、ロジスティクス全体の環境負荷低減に向けた大きな課題の一つと言えます。

「環境に負荷をかけず、お客様に製品を届けたい」。それが、脱炭素ロジスティクスに取り組むエプソンの想いです。

積載効率の向上で挑む輸送頻度の削減

出荷に向けて搬送される製品。シートパレットを用いて積載効率を高めている。
ハイキューブコンテナに効率よく積載された製品

物流においては、同じ物量を、より効率的に輸送することがGHG排出量の削減につながります。

エプソンは、倉庫スタッフや販売店と連携し、海上輸送で使用していた標準コンテナを、ハイキューブコンテナ*2への順次切り替えを進めてきました。これにより、コンテナ1個あたりの積載量は14.3%増加しました。その後も製品の小型軽量化や輸送する製品の組み合わせを工夫したり、シートパレットを活用したりするなど、積載効率向上に努めています。

前例にとらわれずに挑んだ海上ルートの見直し

北米大陸向け輸送ルートの変更イメージ。
東海岸向けルートを新たに開拓することで、GHG排出量を約320トン(FY24実績)削減することができた。

輸送ルートを最適化する取り組みも、GHG排出量削減に大きく貢献しています。北米拠点への新たな定期輸送ルート確立は、エプソンにとって大きなチャレンジでした。

それまでの北米大陸への輸送ルートでは、まず東南アジアの生産拠点から海上ルートを経て、西海岸のカリフォルニア州ロングビーチで陸揚げされます。そこからディーゼル鉄道などの陸路を使って、北アメリカ大陸の中央部東寄りのインディアナ州の倉庫まで運んでいました。

それに対し、今回確立した新たな定期輸送ルートでは、東南アジアから出荷した製品を反対の東海岸から陸揚げし、そこから陸路を使ってインディアナ州の倉庫に運びます。この東海岸向けルートは、既存の西海岸向けルートに比べ海上輸送の距離こそ伸びますが、その分、陸上の鉄道輸送の距離が大幅に短縮されるため、トータルのGHG排出量が約320トン*3 削減される計算です。

この東海岸向けルートは、これまで災害時等のBCP(事業継続対応)のみを想定して設定していましたが、BCPと環境負荷低減はいずれも当社にとって重要なテーマであるため、関係者との協議を経て、このルートの定期運用を実現することができました。GHG排出量が減らせるだけでなく、複数のルートが確保されたことで、港湾の混雑など、国際輸送環境の変化によって製品供給が遅延または停止してしまうリスクを分散できる効果も見込んでいます。

しかし新たなルートを開拓するには、さまざまな困難がありました。例えば、海上輸送ルートはいくつものパターンが考えられ、輸送距離やリードタイム、経由地港湾での接続性などの制約が複数ある中で、いかに安定的かつ効率の良いルートを決められるかが重要です。また荷揚げ後の輸送業者もそれぞれ条件が異なるため、輸送の日数、コストなどの調整が必要でした。

多岐にわたる関係者からさまざまな意見が出ましたが、企業として達成すべき「安定的かつ効率的、しかも環境負荷を抑えた輸送」という共通のゴールに向けて対話と調整を積み重ね、最終的に定期輸送ルートとして東海岸向けルートの定期運用を実現することができました。

代替燃料を使用したサービスの活用

海上輸送における燃料を環境に配慮したものに切り替えることもGHG排出削減につながります。

*港や船の映像はイメージです。

これらの自社での取り組みも続けながら、海上輸送におけるGHG排出削減の取り組みとして、2024年、エプソンは一部航路にてバイオディーゼルやグリーンメタノールなどの代替燃料*4を使用する海運サービスの活用を開始しました。このサービスの活用により、対象航路における従来の重油を燃料としたコンテナ船を利用した輸送と比べ、最大84%*5のGHG排出量の削減が期待できます。2024年度はフィリピンからの輸出用40フィートコンテナ100本を、代替燃料を使用したコンテナ船で輸送することで、従来の輸送に比べGHGの排出量を約220トン*6削減することができました。

エプソン全体からみると、小規模な取り組みではありますが、こうした取り組みを少しずつ積み重ねていき、社会に対してこのようなサービスの需要を示していくことも重要だと考えています。

エプソンが目指す未来に向けて

製品を載せてエプソン工場を出発するトラック。様々な取り組みの成果を積み重ねていくことが重要です。

海上輸送におけるGHG排出量の削減は、脱炭素ロジスティクスの実現には欠かせない課題です。エプソンでは、今後もさらなる製品の小型化、積載効率向上の取り組み、輸送頻度の削減、輸送ルートの最適化などあらゆる施策を検討、改善し続けることで、ロジスティクスにおけるGHG排出削減を推進していきます。また自社での取り組みだけに限らず、代替燃料の使用などを通じ、海運業界や社会全体の脱炭素化にも寄与していく考えです。

持続可能な未来に向けて、今できること、やるべきことに、エプソンは真摯に取り組んでいます。生産過程はもちろん、製品がお客様の手元に届くまで、GHG排出を最小限におさえること。その目標を確実に達成するために、これからもエプソンの挑戦は続きます。

*1 環境の方針・ビジョンについてはこちら

*2 ハイキューブコンテナは、標準コンテナと同じ幅・長さでありながら、高さが約30cm高く、容積は約12%多くなっています。

参照リンク:事例(バリューチェーン) | サステナビリティ | エプソン

*3 東南アジア(インドネシア、タイ)から北米西海岸向けルートの一部貨物を北米東海岸向けルートに切り替えた場合の2024年実績値。

*4 従来の重油に比べて、温室効果ガスの排出量が少ない燃料

*5 特定航路において、一般的な化石燃料を使用した場合と比べた場合

*6 一般的な化石燃料を使用した場合と比べた場合。東南アジアから欧州向け航路の2024年10月~2025年3月における実績値。

その他の取り組み

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