使用電力の100%
再生可能エネルギー化に向けたエプソンの取り組み

製造業が使用する電力を100%再生可能エネルギーに移行することは大きな挑戦です。
エプソンは、国内の製造業で初めて*1100%再エネ化を達成することで、その道筋を示しました。

*1日本のRE100加盟企業の内。2024年1月9日時点(エプソン調べ)

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登壇者

製造業としての気候変動対策

国際エネルギー機関(IEA)によると、世界のエネルギー消費量の約3分の1を、製造業をはじめとする産業界が占めており*2、そのエネルギーの中心となるのが電力です。工場や産業プラントで消費される電力が全て再生可能エネルギー(以下 再エネ)から供給されるようになれば、気候変動対策に大きく貢献できるでしょう。

使用電力の100%再エネ化は高い目標ですが、取り組む企業は増えています。例えば、RE100イニシアチブでは、400社以上の企業が、事業活動全般で使用する電力を100%再エネとすることを目指しています。一方で、この目標の達成方法は、製造する商品や生産拠点の立地など、さまざまな要因によって異なります。

*2 国際エネルギー機関(IEA)の関連ページはこちら

再生可能エネルギーへの移行

CSR関連のコンサルティングを行う非営利団体、BSR(Business for Social Responsibility)で産業界・輸送業界担当ディレクターを務めるポール・ホールドリッジ氏は次のようにコメントしています。「電力需要が低く、財務基盤が安定した企業は、再エネに移行しやすい立場にあります。ガラス溶融炉や溶鉱炉のように電力需要の高い大規模な加熱設備を持つ企業、広大な倉庫や組立ラインのような大型施設を構える企業は、移行が難しいかもしれません」

近年、グローバル市場における調達コスト減少を受けて、再エネへの移行は以前よりずっと容易になりました。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によれば、太陽光発電の電力価格は2010年時点では、当時の最も安価な化石燃料と比較した場合、約710%高価でした。それが2022年においては、約29%安価になっています*3。そして現在、製造業における最終エネルギー使用量の約20%を電気が占めていますが、この割合は増加する見通しだと同機関は報告しています。

太陽光発電の電力価格

*3 IRENA report Renewable Power Generation Costs in 2022をご参照ください

製造業の課題

しかし、再エネの価格が下がっても、製造業が100%再エネ化できるとは限りません。初期設備投資が必要になり、先行者不利益(先行者のほうが後発者より、新技術を導入するためのコストがかかること)が生じれば、再エネへの完全移行が大幅に遅れる可能性があります。言うまでもなく、地域によっては特定の再エネが利用できない場合もあります。そのエネルギーを供給するには適切なインフラを整備する必要がありますが、これはどの企業も単独では実現できません。

製造拠点はオフィスよりはるかに大量の電力を必要とします。日本や台湾、シンガポールのように、再エネによる電力の供給が限られている国や地域では、従来の枯渇性エネルギーで発電された電力よりも高額であるため、再エネ電力を購入する企業のコスト負担は非常に大きくなります。

しかしエプソンは、短期的なコスト増加が確実視される中でも、再エネの利用に取り組んでいます。またエプソンは、地域社会を豊かにする持続可能性への投資を推進することで、未来の社会的価値を創造しようとしています。

セイコーエプソン常務執行役員
生産企画本部長 兼 地球環境戦略推進室副室長
渡辺 潤一

遠い国から輸入された資源ではなく、地域の豊富な再生可能資源を利用することで、エネルギー自給率の向上や雇用の創出といった多くのメリットが生まれると考えています。

地域に根ざす

世界のどこで事業活動をする場合においても、企業は世界、国、地域の状況に適応した再エネを利用する必要があり、エプソンはまさにこれを実践しています。エプソンは、2021年11月に日本の全拠点における使用電力を100%再エネに移行し、2023年末に全世界の拠点の再エネ化を完了しました*4

このゴールに到達できたのは、2018年から脱炭素目標を着実に達成し、各地域に根ざした再エネの利用を拡大してきたからです。例えば、水源が豊富な長野県や東北地方では、水力発電による電力を活用しています。

同社は海外でも同様の取り組みを進めています。フィリピンでは地域の地熱発電や水力発電による電力を活用し、インドネシアでは、別の再生可能エネルギー源である、持続可能なバイオマス電力を利用しています。セイコーエプソンの常務執行役員、生産企画本部長 兼 地球環境戦略推進室副室長として、再エネの活用を含めたサプライチェーンの調達戦略を推進している渡辺潤一氏は次のようにコメントしています。「当社は可能な限り、エネルギーの地産地消を進めてきました。遠い国から輸入された資源ではなく、地域の豊富な再生可能資源を利用することで、エネルギー自給率の向上や雇用の創出といった多くのメリットが生まれると考えています」

加えて、エプソンは、再エネの継続的な購入を通じて、新たな再エネ電源の共同開発も行っています。その一環として、長野県や中部電力ミライズ株式会社と連携し、県内の水力発電所への支援を開始しています。すでに2基(合計5,770kW)が稼働中で、2024年にはもう1基の稼働を予定しており、2025年までには5基に増える計画です。

現地の環境に応じたエプソンの取り組み

*4 脱炭素への取り組みの紹介ページはこちら

このような取り組みは、業界をリードする上でも役立ちます。BSRのポール・ホールドリッジ氏は「私たちの調査でも明らかになっているように、使用電力の100%再エネ化を短期的な目標として設定することは、リーダーシップの手本であり、他社との差異化につながります。環境施策に取り組んでいる企業の中には長期的な移行ロードマップを策定している企業もあります」とコメントしています。

RE100に加盟している世界の製造業における100%再エネ化の平均目標は2050年

再エネ化に向けた企業の選択肢

再生可能電力の調達
電力会社との契約を通じた、地元サプライヤーからの調達。これが実現できるかは各国の規制や制度によって異なりますが、可能な場合は、企業は自社の使用電力が再エネのみから供給されていると証明できます。
オンサイト発電
屋上のソーラーパネルや(スペースが許せば)風力タービンを使用。必要な電力を全て生成できなくても、有益な貢献ができます。
蓄電設備の開発
再エネを使用する上でよくある懸念の一つが、風が吹いていないときや日が照っていないときに供給が中断されるというリスクですが、蓄電技術はこれに対処する有効な方法です。

太陽光発電システムに関しても、エプソンの各拠点では、それぞれの国や地域の状況に応じて、自己投資と電力購入契約(PPA)のどちらを採用するかを決めています。解決策は企業によって異なりますが、ほとんどの製造業では、このような要素を組み合わせることが再エネ活用の目標達成につながるでしょう。
さらに、エプソンのような製造業の多くは、バリューチェーン全体からの間接的な温室効果ガス排出量(スコープ3)が、自社の電力使用による温室効果ガス排出量(スコープ2)よりもはるかに大きいことを認識しています。しかし、企業が再エネを利用してスコープ2の排出量を削減すれば、製造業単独の取り組みでありながら、社会に対して大きな影響を与える可能性があります。早期に目標を設定し、気候変動問題に対する企業の姿勢を示せば、サプライヤーとの共栄、そして持続可能な社会につながるカギとなります。

サステナビリティ・コンソーシアムCEOのクリスティ・スレイ氏は次のようにコメントしています。
「政府による奨励策には、差し迫った再エネ化を加速させる効果がありますが、大企業が自ら再エネ化を進めることは、投資に見合う利益を生み出します。これは中小企業でも同様ですが、状況は地域によって異なります」

エプソンは常に業界の一歩先を行き、日本のみならず、世界に手本を示しています。

サステナビリティ・コンソーシアムCEO
クリスティ・スレイ

製造業が向かうべき未来

気候変動に対処できれば人類を含む生物多様性にとって大きな利益があり、また製造業とその株主にとっても、優れた取り組みが商業的な利益をもたらす可能性があります。

環境への配慮に積極的な企業を評価する消費者や投資家が増えている今、こうした取り組みは長期的な市場でのポジショニングに不可欠な要素となっています。また企業は、再エネの利用や自家発電を拡大することで、自由市場における電力価格変動への対応力を高めることができます。

「100%再エネ化を達成するのは大変なことですが、できるだけ早く、できるだけ100%に近づけるための取り組みが、いまやあらゆる企業に求められています」と、サステナビリティ・コンソーシアムのクリスティ・スレイ氏は述べ、さらに次のようにコメントしています。

「エプソンは常に業界の一歩先を行き、日本のみならず、世界に手本を示しています」