カメラ応用技術
高度な技術が求められる、マルチプロジェクションの調整を自動化
マルチプロジェクションによる大画面投映は、迫力や臨場感に溢れています。しかし、そのためのプロジェクターの設置や調整には、専門技術や知識が必要であり時間もかかります。また、その作業を簡略化するには、外付けの調整用カメラや計器などを別途用意する必要があります。
エプソンは独自の画像調整アルゴリズムを開発し、調整用カメラをプロジェクターに内蔵しました。
迫力ある大画面投映を実現する
マルチプロジェクション。
その裏に隠された高度な技術
イベント会場や商業施設などにおいて魅力的な空間演出をするために、マルチプロジェクションによる迫力ある大画面投映が活用されています。縦長や横長など自由なレイアウトで広い会場一面にプロジェクションアートを作り上げるなど、その用途や目的は多岐にわたります。
このマルチプロジェクションを仕上げるまでの設置・調整作業には、通常、高度な合わせ込み技術が必要です。
プロジェクター部品の個体差や製品の経時変化による投映画像のわずかな誤差など、さまざまな原因が関連し、映像の色や明るさ、画素位置のズレが生じます。そのためマルチプロジェクションを行うにあたっては、設置位置を調整する位置合わせ、個体差による色や明るさの調整、幾何学補正などを行う必要があります。
それらの調整は人の手によるマニュアル作業が多く、調整をする人の知識や経験値が大きく影響します。
調整の難易度を下げるためには、この作業を自動化すれば良いわけですが、それを実現するには人の手による調整と同等以上の高い精度が必要であり、決して容易ではありません。
エプソンならではの
調整カメラ内蔵プロジェクターと
画像処理技術
エプソンのプロジェクターは、カメラを含む自動調整機器を製品に内蔵することで、色や明るさをはじめとしたさまざまな自動補正を可能にしました。マルチプロジェクションで均一な大画面投映を構築する際は、内蔵カメラによる投写画面の計測結果を基に、プロジェクターの投映画面位置や色、明るさなどの自動調整を行います。
調整カメラ内蔵プロジェクターでは、測色機が無くても画素の色ムラや投映画面全体の色補正が可能になり、カラーキャリブレーションの調整が簡単になりました。 カメラ自体は出荷時にプロジェクターの投写光に合わせて個体調整を行い、最適化されます。カメラと人の目は、光の波長に対する感度が異なるため、「カメラでは同じ色に見えるが、人の目では違う色に見える」ということが起こり得ます。そこで、カメラが測定するプロジェクターの投写光を、人の目の感度に近づける補正を行うことで、この誤差を小さくしているのです。
また、マルチプロジェクションを行う際に自動で幾何学補正を行う場合、投映画面の位置をカメラで精確に計測する必要があります。エプソンは計測するための投映パターンを工夫することで、内蔵カメラで高精度な投映位置を計測することを実現しています。各プロジェクターの内蔵カメラがそれぞれの投映画面全体とその周囲を計測します。計測した情報は1台のプロジェクターに統合してマルチプロジェクションの画面全体をカバーしています。
プロジェクターの台数が増えれば増えるほど、計測するカメラなどの設置をする手間が増えていきますが、プロジェクターにカメラが内蔵されていることにより、プロジェクターを設置するだけ済みます。さらに各種オプションレンズにも対応しているため、拡張性の高さも優れています。
この計測を独自のアルゴリズムで処理することで、タイリング投映時も特別な機材を使用せずにエッジブレンディングを行うことができ、つなぎ目のない自然な投映が自動的かつ容易に構築できます。
これにより、マルチプロジェクションのセッティングが容易になることはもちろん、一定期間使用してからの再調整も簡単になり、利便性を高めています。
エプソンの調整カメラ内蔵プロジェクターであれば、これまで高度な技術が必要だった設置や調整作業が、簡易的かつ短時間で行え、また、カメラなど外付け機器を別途用意しなくても調整することが可能です。 今後はプロジェクターの使い勝手をさらに向上させるため、自動調整の精度を上げるとともに、立体面や模様のある投写面への対応など、適応範囲を拡大していきます。