知財リサーチ

エプソンの知的財産リサーチ

エプソンにおける知的財産リサーチの歴史

エプソンが知的財産リサーチ(以下、知財リサーチ)の専門組織を設置した歴史は古く、2002年に知財力強化を目的にドルフィン活動(DOLPHIN:DOuble Leading Patent by promoting High quality INnovationsの略で、知財力を倍増させることを目的とした活動)として専門組織を設置したことにより、知財リサーチ活動がスタートしました。

ドルフィン活動は、知的財産権を活用してロイヤリティ収入および事業拡大化を行うため、ベテランのエンジニアを集めて知財リサーチの専門組織を構成し、特許情報分析(PA: Patent Analysis)と特許調査(PS: Patent Search)に基づき、技術的知見とネットワークを生かして事業をどのように成功させるかを検討し、「経営」、「事業・開発」、「知財」に提言を行いました。PA活動は、知財情報に基づき技術動向や他社動向を分析し、戦略的な発明創出につなげる活動です。また、開発テーマの将来性についての提言も行いました。PA活動は技術開発戦略、イノベーション戦略に知財情報を活用していく形で進化し、IPランドスケープとして現在まで継続しています。一方、PS活動は、他者特許の侵害予防のためのFTO(Freedom-To-Operate)調査活動になりますが、こちらも現在まで継続しています。

エプソンのIPランドスケープ

一般に「IPランドスケープ」とは、「経営戦略または事業戦略の立案に際し、(1)経営・事業情報に知財情報を取り込んだ分析を実施し、(2)その結果(現状の俯瞰・将来展望など)を経営者・事業責任者と共有すること」と定義されています(特許庁 「経営戦略に資する知財情報分析・活用に関する調査研究報告書」https://www.jpo.go.jp/support/general/chizai-jobobunseki-report.htmlより引用)。

エプソンのIPランドスケープは上述の定義に対して、以下の特徴があります。

  1. IPランドスケープが会社/事業/開発の方針決定に貢献できたか、を重視していること
  2. 会社/事業/開発の方針決定に貢献できる事を前提に、IPランドスケープの結果について経営者・事業責任者との共有にこだわらないこと

エプソンのIPランドスケープで最も重視していることは、「経営」、「事業・開発」、「知財」の方針決定に貢献することです。いくら素晴らしい分析を実施しても、その結果が方針決定に何も寄与しなければ意味がありません。分析した結果を単に情報提供するだけではなく、何らかの意思決定につなげていく必要があります。

一方、方針決定には経営戦略、事業戦略、開発戦略の根幹に関わる大きなものもあれば、新たな開発テーマの起案といった現場レベルの方針決定もあります。エプソンのIPランドスケープにおいては、大きな方針決定に関わる場合は経営者・事業責任者へ結果の共有を行いますが、現場レベルの方針決定に関わる場合は、スピーディーな方針決定を重視し、経営者・事業責任者へ結果の共有を行いません。方針決定の重みに合わせて柔軟に対応する点がエプソンのIPランドスケープの特徴です。

IPランドスケープ

事業リスクを極小化するFTO調査

エプソンは、他者が有する知的財産を尊重し、他者の知的財産権を侵害しないよう、細心の注意を払っています。これは自分達の製品・サービスを安心してお客様に使っていただくためです。せっかく新しい製品・サービスをお客様に提供しようとしても、他者の知的財産権を侵害していると、最悪の場合、お客様に製品・サービスをお届けすることができなくなってしまうおそれがあります。このようなことがないよう、エプソンでは、他者の知的財産権の侵害を未然に防ぐ侵害予防調査であるFTO(Freedom-To-Operate)調査に力を入れています。

FTO調査は、膨大な国内外の特許の中から、自社の製品・サービスに関連する他者特許を短期間に漏れなく拾い上げる必要があります。その点、エプソンでは社内に特許検索を専門としたサーチャーを多数擁しており、自社の製品・サービスの特徴を深く理解し、関連する他者特許を最新のデータベースから漏れなく拾い上げることができる体制を整えています。

さらに、関連する他者特許を拾い上げて開発設計部門に報告するのみならず、開発設計部門による侵害確認作業によって懸念が残る他者特許について、社内在籍サーチャーの強みを生かして、非侵害判断、設計回避検討、有効性判断の最終検討にも加わり、他者特許を侵害しない活動の維持に貢献しています。

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