調査分析

エプソンの知的財産リサーチ

エプソンのIPランドスケープ

一般に「IPランドスケープ」とは、「経営戦略または事業戦略の立案に際し、(1)経営・事業情報に知財情報を取り込んだ分析を実施し、(2)その結果(現状の俯瞰・将来展望など)を経営者・事業責任者と共有すること」と定義されています(特許庁 「経営戦略に資する知財情報分析・活用に関する調査研究報告書」https://www.jpo.go.jp/support/general/chizai-jobobunseki-report.htmlより引用)。

エプソンのIPランドスケープで最も重視していることは、「経営」、「事業・開発」、「知財」の方針決定に貢献することです。いくら素晴らしい分析を実施しても、その結果が方針決定に何も寄与しなければ意味がありません。分析した結果を単に情報提供するだけではなく、何らかの意思決定につなげていく必要があります。

そのためには分析の内容もさることながら、情報提供・提案のタイムリーさも非常に重要です。短期間で調査分析を行って速やかに提案していくことと、先回りして調査分析を行っていくことなどに力を入れて日々活動しています。

IPランドスケープ

エプソンにおいて、新たなイノベーション支援のために実施されたIPランドスケープの一例を紹介します。

エプソンでは、長期ビジョン「Epson 25 Renewed」にて「環境・共創・DX」に重点を置いており、その「環境」に関する取り組みの一つとして、バイオマスプラスチック活用促進のためのパラレジン技術開発を推進中です。これに向けて設立した「パラレジンジャパンコンソーシアム」において、エプソンは「古紙等廃棄物由来糖源の規格化」を担い、エプソンの独自技術である「ドライファイバーテクノロジー」(以下、DFT)を活用して、古紙などを解繊して糖化しユーグレナ培養用の栄養源を供給するための技術開発(以下、プランA)を進めています。

※「パラレジンジャパンコンソーシアム」:ニュースリリースはこちら

「パラレジンジャパンコンソーシアム」は、環境負荷となる廃棄物を活用した非可食バイオマスプラスチックによる資源循環システムの構築を目的とし、古紙や食物残渣などのセルロースを酵素糖化技術により分解した糖化物を栄養分として用いてユーグレナを培養し、非可食バイオマスプラスチックであるパラレジンの安定供給の実現を目指しています。

これをビジネス化していくための課題は、パラレジン生成に至るまでのコストが高いことでした。DFTによる古紙解繊からの糖化プロセスもこのコスト高に影響しており、対策の検討が必要な状況でした。そこで、その対策検討を支援するため、IPランドスケープを用いた知財情報分析を実施しました。

実際にIPランドスケープを行い、この分野の技術開発状況と知財状況とを全体俯瞰図にまとめたものが下図です。

このように全体俯瞰図にしてみると、あらためてDFTによるプランAの立ち位置がわかり、プランA以外にもエプソンの技術との親和性があって有望と考えられる技術があることがわかりました。さらに、それらの技術の中から、エプソンが実施するうえでの他者の知的財産権による障壁の度合いも見えてきました。そこで、知的財産本部からは、開発を推進する経営層に対して、これらの技術開発をプランB、C、…として複数提案し、結果としてその提案が経営層に取り入れられ、技術開発を当初のプランAに加えてプランBなども併せて並行検討・推進していく方針となりました。

本事例は、当初の開発方針にとらわれすぎず、知的財産部門ならではの俯瞰的視点でIPランドスケープを実施し、その内容を速やかに経営層に情報提供・提案していくことにより、イノベーション創出・支援を行った一例です。

エプソン知的財産本部は、このような方針決定に貢献するIPランドスケープを戦略的に実施する調査分析の専門組織を設置しており、今後とも、さまざまなテーマに対するIPランドスケープとその結果に基づく提案を行うことにより、イノベーション創出・支援を進めます。

事業リスクを極小化するFTO調査

エプソンは、他者が有する知的財産権を侵害しないよう細心の注意を払っています。独自のコア技術から生み出す価値を提供するために新しい製品・サービスをお客様にお届けしたくても、他者の知的財産権を侵害していると、当該技術を使用できず、お客様にその価値を提供できなくなる可能性があるからです。このようなことがないよう、エプソンでは他者の知的財産権の侵害を未然に防ぐFTO(Freedom-To-Operate)調査に力を入れています。

FTO調査は国内外の膨大な特許の中から、新しい製品・サービスに関連する他者の知的財産を漏れなく拾い上げ、侵害の有無を精査します。エプソンでは、自社の製品・サービスの技術理解が深い、開発・設計経験があるベテラン技術者がサーチャーとして多数在籍しており、最新のデータベースを活用しながら、年間数百テーマにのぼるFTO調査を短期間に精度良く実施する組織体制を整えています。また、特許出願権利化業務の経験のあるサーチャーも多いことから、その経験を生かし、懸念が残る他者の知的財産があれば、開発設計部門での非侵害判断、設計回避検討、有効性判断の最終検討にも入り込むことにより、他者の知的財産権を侵害しない活動の維持に貢献しています。

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