ハーフトーニング

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エプソン独自のハーフトーニングが
画質の安定性を実現する

インクジェットプリンターで高画質な印刷を実現するときに、インク吐出のOn/Offだけでは十分な階調表現ができない場合があります。このような場合に、白、黒以外の中間調を再現する技術があり、これをハーフトーニングといいます。従来のハーフトーニングでは着弾ドットの位置ずれが起きた場合に画質が劣化していましたが、エプソンは着弾誤差耐性が高く、処理速度の速いハーフトーニングを開発することで、着弾ドットの位置ずれが起きた場合でも、安定的に高品質な印刷ができるようになりました。その技術は高い評価を受け、独創性と実用性に優れた画像処理技術及び、その周辺技術に贈られる一般社団法人日本画像学会「令和元年度 技術賞」に選ばれています。これは、日本画像学会の印刷品質にかかわる技術を主体とした表彰において、2000年以降で初の快挙です。
ここではエプソンの誇るハーフトーニングの持つ卓越性や技術開発の過程について紹介します。

エプソンハーフトーニングの
卓越性とは

インクジェットプリンターのハーフトーニング手法としては、これまで誤差拡散法やブルーノイズマスク法(ディザ法)が主に用いられ、インクジェットプリンターでの写真画質実現に大きく寄与してきました。しかし、これらの従来手法は、各ドットが画素位置に正確に着弾することを前提にドット配置の最適化を目指すものであったため、実際のインクジェットプリンターで着弾ドット位置ずれが発生した場合、画像の荒れなどを起こし、安定的に高品質な印刷をすることができませんでした。

特にインクジェットプリンターのシリアル走査方式においては、例えば、紙搬送時の紙のたわみや、インク吸収時による紙の伸び縮みによる波打ち現象によって、ヘッドの往復走査時の着弾ドット位置ずれが大きくなり、画像の荒れを起こしていました。

この課題を解決するため、エプソンでは、計算時間などの処理負荷の少ないブルーノイズ特性を持ったディザ法をベースに、まずは着弾ドット位置ずれが画質の荒れにつながるメカニズムを解明し、ディザマスク(画像を小さいブロックに分割し、それに対してある閾値を越えた場合と下回った場合で処理を変える)のずれ耐性を向上させることで、安定した印刷結果の出力を可能にしました。
複雑な調整をすることなく、ソフトウェアのみでインクドット着弾位置のずれ対策を実現した本技術は、2006年以降発売のエプソン製インクジェットプリンターに順次採用されています。

エプソンハーフトーニングの
開発過程

ハーフトーニングの開発過程

エプソンのハーフトーニングが開発された過程について詳しく見ていきましょう。
まず行われたのは、シミュレーションを用いたメカニズム解明調査です。調査の中で、当初は着弾ドット位置ずれ発生時の画像の荒れのメカニズムは、往走査形成ドットと復走査形成ドットの間の干渉によって生じていると考えていましたが、実際は往走査形成ドット、復走査形成ドットのそれぞれが持っていた周波数特性(ブルーノイズ特性)が、着弾ドット位置ずれにより顕在化することが主要因であると分かりました。
そこで、往路復路走査形成ドットだけでなく、往走査形成ドット、復走査形成ドットのそれぞれで周波数特性(ブルーノイズ特性)が顕在化しないように、ドットの分散性を考慮することで、着弾ずれ耐性の高いディザマスクの開発に繋げました。

このディザマスクは出力解像度、ヘッド走査速度、ドットサイズなどに違いがある実プリンタ出力において、着弾ドット位置ずれ発生時の画質劣化に対する顕著な抑制効果を発揮しました。

エプソンのハーフトーニングの
さらなるメリットとは

印刷完了工程での色ムラ

エプソンの開発したハーフトーニング技術は、ドット位置ずれ発生時の画質の荒れを防ぐほかにも、効果を発揮します。その一つが“凝集の抑制”です。以前のハーフトーニング技術ではプリンタヘッド走査単位でのドット配置が均等ではないため、インク量が偏って分布してしまうことがありました。そのため、インクがメディアに吸収される前に、メディア表面で接触して大きくにじむことで凝集を発生させることがありました。

一方、エプソンのハーフトーニングは、画質の荒れ抑制のためにドットの分散性の最適化を行いましたが、その発展形として1回のヘッド走査単位でのドット配置を均等に最適化させることで、凝集の発生も抑制することができます。

従来、凝集を防ぐためにはインク量を制限し、にじみを防ぐ必要がありましたが、インク量が制限されれば、その分ヘッドの主走査数を増やす必要が生じ、結果として印刷スピードが低下することになります。しかし、エプソンのハーフトーニングならば印刷速度を落とさずに、より少ない主走査数で速く印刷を完了させることを可能にしたのです。

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