4つの価値提供領域
長期ビジョン「ENGINEERED FUTURE 2035」で、エプソンは価値提供領域を4つ挙げました。
- エネルギー・資源の効率化を支える
- 精密技術でテクノロジーの進化を支える
- 生産性と信頼性で人手不足に応える
- 学び・働き・暮らしを支える
これら4つの領域への貢献は、全く別々の事業資源を使って行う個別最適の事業活動ではありません。全てを支えているのは「省・小・精」の技術基盤です。技術を点で価値に変えるのではなく、立体的に展開して横断的に社会実装する。それが、私たちが再構築しようとしている成長モデルです。
それぞれの領域でエプソンの技術がどう生かされているか、そしてこれからどのように生かしていくかを紹介します。
エネルギー・資源の効率化を支える
概要
脱炭素化の進展に伴うエネルギー制約の高まりや資源価格の上昇・調達不安定化を、事業環境における重要な課題と認識しており、こうした制約の下で、エネルギー消費や資源使用を抑えながら性能や生産性を両立する技術への需要が拡大すると考えています。
エプソンは「省・小・精」の技術・思想を基盤としたインクジェット技術や高機能材料、資源循環技術を通じて、製造プロセスの省エネルギー化・高効率化と資源の有効活用を実現し、顧客の環境負荷低減と経済合理性の両立に貢献します。
事例:インクジェット
AI・データ基盤の拡大に伴い、電力需要の急増や希少資源の制約が社会課題となる中、エネルギー・資源をより効率的に活用する製造プロセスの革新が求められています。エプソンのインクジェット技術は、必要な材料を、必要な場所に、必要な量だけ精密に吐出できる、アディティブマニュファクチャリングであることを強みとし、印刷領域を超えて、先端ものづくり領域への応用を広げています。その中核となるPrecision Coreプリントヘッドは、MEMS加工技術により形成されたTFPアクチュエーター、インク流路、ノズルを備え、数ピコリットル単位の微小な液滴を高精度に制御します。さらに、印刷インクにとどまらず、機能性材料、電子材料、バイオ材料など、さまざまな液体材料への対応力を高めることで、新材料・新プロセスへの展開可能性を広げています。
インクジェットによる塗布は、基材に直接触れない非接触プロセスであるため、薄膜や凹凸のある表面、柔軟な基材などにも材料を配置しやすく、基材へのダメージ低減や工程自由度の向上に貢献します。また、版やマスクを用いないデジタルプロセスにより、材料ロスの低減、工程の簡素化、装置の小型化も期待できます。
エプソンは、精密吐出制御と新材料・新プロセスへの高い対応力を生かし、半導体製造プロセスやペロブスカイト太陽電池などの次世代領域において、環境負荷低減と産業競争力向上に貢献していきます。
関連する事業領域
精密技術でテクノロジーの進化を支える
概要
AIやデータセンター、通信・車載分野の拡大に伴い、高精度・低消費電力・高信頼性を兼ね備えたデバイスへの需要が急速に高まっていることを重要な事業機会と捉える一方で、技術進化の加速や競争環境の変化に対応することが競争力維持の前提となっています。エプソンは、精密微細加工、MEMS、水晶・材料技術を融合した精密技術を強みに、物理世界を正確に捉え制御する基盤を提供し、デジタルの価値を実社会で発揮するための技術基盤の高度化に貢献します。
事例:デバイス
AI、データセンター、高速通信、EVをはじめとするモビリティの進化に伴い、社会を支える電子デバイスには、さらなる高精度化、小型化、低消費電力化、高い信頼性が求められています。エプソンは、長年培ってきた水晶デバイス、半導体、精密加工、実装技術を融合し、デジタル化とイノベーションの進化を支える高性能デバイスの開発を進めています。中でもタイミングデバイスは、電子機器や通信システムにおいて、信号の基準となる正確なタイミングを生み出す重要な部品です。
エプソンは、水晶が持つ高精度・高安定という材料特性を最大限に引き出す設計・加工技術に加え、半導体技術や小型実装技術を組み合わせることで、低ジッター、省エネルギー、小型化を両立したデバイスを提供しています。これにより、データセンターや通信インフラにおける高速・大容量通信の安定化、電子機器の高性能化、モビリティ領域で求められる信頼性向上に貢献します。
エプソンは、「省・小・精」の技術を基盤に、材料の特性を高精度に制御し、デバイスとして小さく、高性能に、安定して機能させる技術を磨き続けることで、次世代テクノロジーの進化を支えていきます。
事例:材料
AI・データセンターの急速な拡大に伴い、電力需要の増加とエネルギー効率向上が重要な社会課題となっています。エプソンアトミックスのアモルファス合金粉末は、電源部品の低損失化に貢献し、データセンターやAIサーバーの省エネルギー化を支える材料として採用が拡大しています。
エプソンアトミックスの強みは、材料開発から再資源材料を活用した粉末製造・加工までを一貫して保有する独自の技術基盤にあります。2025年に稼働した金属精錬工場では、使用済み金属を再資源化し、高機能金属粉末として再び価値化する資源循環の仕組みを構築しました。
さらに、材料・加工プロセス開発やデジタル技術との融合により、材料設計から量産プロセスまでの最適化を推進しています。これにより、高性能化と資源循環を両立しながら、成長市場における競争力強化を図っています。
関連する事業領域
生産性と信頼性で人手不足に応える
概要
先進国における労働人口の減少や新興国における技能人材不足を背景に、生産現場における人手不足と品質維持の両立が重要な社会課題となっていると認識しており、これは人件費の上昇や技能継承の難しさによる従来のオペレーションの持続性への課題ともなっています。
エプソンは、ロボティクスや商業・産業プリンティングにおいて、制御・AI技術を活用した自動化や工程最適化を進め、省人化と品質向上を同時に実現することで、持続可能な生産現場の構築に貢献します。
事例:ロボティクス
人手不足や生産コスト上昇への対応に向け、搬送用途向けスカラロボット「LA-Aシリーズ」を投入。軽量・コンパクトかつ高剛性な設計により、高速・高精度・高信頼性を維持しながら設置・保守負荷を低減するとともに、優れたコストパフォーマンスにより、価格競争の厳しい中国市場をはじめ、世界各地のお客様の省人化と生産性向上に貢献しています。
事例:商業・産業プリンティング
捺染用Direct to Film(DTF)は、近年、ウェアプリント・グッズ市場で注目される技術です。2025年5月に発売した「SC-G6050」は、エプソン初となる捺染用DTF専用プリンターです。エプソンが捺染事業で培ってきたハードウェア、プリントヘッド、インクの技術をプラットフォームとして活用し、短期間での商品化を実現しました。
本商品は、専用フィルムに直接インクを印刷した後、ホットメルトパウダーの塗布・熱乾燥を経て、熱プレスによりTシャツなどの生地へ転写します。綿、ナイロン、ポリエステルなど、幅広い素材に対してフルカラー印刷が可能である点が特長です。また、従来のDTFプリンターにおける課題であったメンテナンス工数の削減と安定稼働を両立しています。
さらに、DTF分野において実績を有するFiery社のソフトウェア「Digital Factory」をバンドル*1することで、プリンターの性能を最大限に引き出し、印刷工程の効率化と高品質な出力を実現します。
*1 欧米地域仕向のみ
関連する事業領域
学び・働き・暮らしを支える
概要
新興国を中心とした人口増加や中間層の拡大に伴い、教育や情報アクセスへの需要が高まる一方で、インフラ整備の遅れや格差が成長の制約となっていることを重要な社会課題と認識しています。また、働き方の変化やデジタル化の進展により、情報の可視化や共有、業務効率の向上に対するニーズが高まっています。
エプソンは、プリンティングおよびビジュアルコミュニケーションを通じて、情報アクセスと業務効率の向上を支え、学び・働き・暮らしの質の向上に貢献するとともに、新興国の成長と先進国の生産性向上の双方に価値を提供します。
事例:プリンティング
エプソンは、大容量インクタンクモデルをコンビニエンスストアや荷物集配所に設置し、お客様に印刷サービスを提供する取り組みを中国で開始しました。これにより、お客様の印刷における利便性を高めるとともに、家庭内印刷需要や新たなプリント需要の取り込みを図っています。また、サービス展開にあたっては、共創パートナーとの協業により、お客様の使い勝手を高める工夫を凝らすことで、より顧客価値の高いサービスを展開しています。
同様のコンセプトは、中東やインドへも展開を進めており、機器販売にとどまらず、周辺ソリューションを含め、お客様への価値提供を強化しています。
今後も共創パートナーとの連携を通じて、お客様のニーズに沿った最適なソリューションの提案を行うことで展開エリアと提供価値の拡大を図り、持続的な成長につなげていきます。