熱対策技術
プロジェクターの
高性能化・小型化を支える熱対策
近年、使用環境や用途が多様化してきているプロジェクターは、高性能・高信頼性な製品でありつつ、小型化も実現しなければなりません。また、一般的な電子機器と比べて、製品内には熱を発する部品が多くあります。しかし、やみくもに空冷ファンを増やすという対策では製品サイズが大きくなり、騒音の原因にもなってしまいます。プロジェクターならではの熱問題の対策に、エプソンとしてどのように取り組んでいるかを紹介します。
プロジェクターは、オフィスや学校、家庭などさまざまな環境で、プレゼンテーションやホームシアターといった用途で使われています。近年はプロジェクションマッピングやイベントなどで、屋外あるいはスモークを使うような環境でも使用される機会が増加しています。さらに、メディアストリーミングやネット配信動画などの映像コンテンツの多様化に伴い、活用シーンも広がってきています。
活用シーン拡大とともに、明るさや解像度、防塵性など、信頼性の向上も求められています。また、それらとはトレードオフにもなり得る小型化、低騒音の要求も高く、このようなさまざまな技術要件や目標を実現するために、プロジェクターの熱問題について長年対策に取り組んできました。
自社製の
HTPS(高温ポリシリコンTFT液晶)
パネル
だから実現できる熱対策
エプソンでは、プロジェクターのコアデバイスであるHTPS(高温ポリシリコンTFT液晶)パネルを自社で製造しています。このコアデバイス内製の強みを生かして、高効率で冷却が可能なHTPSパネルならびに冷却構造の開発に取り組んできました。高輝度のプロジェクターにおいては、冷却構造に液冷方式を採用し、高効率冷却による高い製品信頼性を実現しています。
また、ビジネスかばんにも入るサイズのモバイルタイプの薄型プロジェクターには、放熱性の高い独自開発の省スペースのヒートシンク構造を採用することで小型化を実現しています。
エプソン独自の冷却システムにより、
長期信頼性の確保を実現した高輝度プロジェクター
埃(ほこり)が多く舞う過酷な環境で使用されることもある高輝度プロジェクターでは、防塵性能確保のために、密閉構造の光学エンジンブロックを搭載しています。
密閉することでブロック内部にこもってしまう熱に対しては、エプソン独自の液冷システム「トータルリキッドクーリングシステム」によって効率的に冷却しています。このシステムでは、製品内部に不凍液を循環させることで、密閉ブロック内部にこもった熱や、主要デバイスであるHTPSパネル、蛍光体、レーザー光源などから発生する熱を不凍液に集め、さらにラジエーターで熱交換を行うことで製品外部へ排熱します。このシステムの採用で、密閉ブロック内部を冷却するだけでなく、製品全体での冷却効率も高められます。これにより、冷却関連の各デバイスも最適化され、結果として製品の小型化や低騒音化を実現しています。
また発熱の大きいレーザー光源エンジンにおいては、耐熱性に優れた蛍光体を採用することで熱対策を行い、耐熱面での長期信頼性を確保しています。
技術による熱対策ノウハウは、電源や回路、投写レンズといった他のデバイスにも応用され、各デバイスの高性能化や熱対策に寄与しています。
このようなプロジェクターのトータル的な熱対策への取り組みが、エプソン製プロジェクターの高輝度化や高解像度化、防塵性能、小型化、低騒音など、高い信頼性の実現につながっています。