加圧ワイピング技術
高品質な印刷を支える加圧ワイピング技術
ラインヘッド方式のビジネスインクジェットプリンターでは、高画質・高速印刷の実現に加えて、その品質を常に一定のレベルで維持することも重要です。
ここでは、ラインヘッド方式の印刷品質の維持に必要な技術である、加圧ワイピング技術をご紹介します。
ワイピングとは
一般的なインクジェットプリンターでは、紙粉や異物がプリントヘッド先端に付着すると、インクを供給するためのノズルが目詰まりして、正常にインクを吐出できない場合があります。それを防止するために、エプソンのインクジェットプリンターでは定期的にゴム素材のワイパーでプリントヘッド先端を拭き取っています(ワイピング)。しかし、従来のワイピング技術では、まれにメニスカス部の空気を巻き込んで、ノズルの目詰まりの原因になる気泡を発生させることがありました。特に、ラインヘッド方式のプリンターでは、固定されたプリントヘッドが広い面積に一度にインクを吐出するため、1本だけノズルが詰まった場合でも線や模様が出やすくなるなど、わずかなノズルの目詰まりで印刷品質が低下することがあります。このようなドット抜けが起こらないよう、エプソンではワイピング技術の改良に長年取り組み、加圧ワイピング技術を開発しました。
加圧ワイピング技術
ワイピングによるノズルの目詰まりを解消するために開発された技術が加圧ワイピング技術です。この技術では、プリントヘッド内にチョーク室と体積変動室の2つの部屋を設けて、ワイピング前に瞬間的にノズル内を加圧することで、気泡の原因となるメニスカスを解消しています。
クリーニング後のノズル抜けを大幅削減
加圧ワイピング技術により、ラインヘッド方式のインクジェットプリンターにおいて、プリントヘッドクリーニング後の、メニスカス起因による目詰まりの発生確率を格段に減らすことに成功しました。「圧力をかけてへこみをなくす」という仕組み自体はシンプルです。しかし、この技術が40mm x 60mmのプリントヘッド内部に、さらに小さな加圧機構を搭載して、インクが漏れ出さない程度、かつ均一な速度で全てのノズルを一度に加圧するという、今までエプソンが培ってきた小型化・高精度な制御技術によって凝縮されています。
実際には、ノズルが詰まった場合でもノズル自己診断システムによる対処で画質を調整して、画質不良を最小限に抑えることはできます。しかし、「ノズルの目詰まりの原因は極力取り除く」というエプソン技術者の品質追求の姿勢がこの技術を支え、ライン方式における印刷速度と印刷品質の両立を可能にしています。