バイタルセンシング技術
エプソンのバイタルセンシング技術
バイタルセンシング技術は、人の生命活動の証であるバイタルサイン(生命兆候)をセンシングデバイスにより計測するソリューションです。エプソンは、半導体技術および光学技術を応用した光電式バイタルセンシング技術により、健康市場における日常生活の歩数、消費カロリー、睡眠などの活動量のモニタリングやランナー市場における運動強度の可視化など、さまざまな価値提供を行ってきました。このバイタルセンシング技術は、更には、子供、高齢者、労働者、自動車などの運転者の見守りや、新型ウイルスによる感染症の早期発見など、より幅広い用途での活用が期待されています。エプソンはバイタルセンシング技術を通じて、生活の中のあらゆる場面で人々を見守り・支援し、安全・安心な社会の創造に貢献していきます。
光電式バイタルセンシングの原理
光電式バイタルセンシングとは、光を吸収するというヘモグロビンの性質を利用した計測技術です。計測の原理としては、緑色のLED光を皮膚内の血管に照射し、ヘモグロビンに吸収されずに反射してきた光を受光素子で捉えます。捉えた光は受光素子によりアナログ信号となり、これをデジタル信号に変換して光量の微小な変化をモニタリングします。心臓の拍動により血管が収縮、拡張した時に起こる反射光量の差をみることで脈拍数が計測されます。
実際の計測では、LED光以外に太陽光や室内灯の光による反射光が発生するため、正確な計測を行うにはこれらの影響を除去する必要があります。また、人が動くことにより機器が揺れると、LED反射光が拡散して体動ノイズが発生します。体動ノイズによりデータが乱れるので、この影響も考慮する必要があります。
デバイス構造、検出アルゴリズムにより
低消費電力・高精度な測定を実現
エプソンは長年にわたり、独自の脈拍計測技術の開発に取り組んできました。エプソンのバイタルセンシングデバイスは、独自に進化させてきた半導体技術や光学技術を活用して作られる、受光素子をはじめとしたセンシングデバイスによって、高精度かつ低消費電力での脈拍計測を実現しています。
受光素子には、計測精度の低下を防ぐため、金属微細構造により、角度制限機能を発現する「角度制限フィルター」と、多層薄膜により波長制限機能を発現する「波長制限フィルター」の2種類の独自光学フィルターが形成されています。
角度制限フィルターは、肌の表面や外装からの脈拍計測には関係の無い角度からのLED反射光をカットしています。角度制限フィルター上に形成された数十層もの多層薄膜フィルターは、太陽光のような強烈な光を由来とする不要な波長の外乱光ノイズを遮断します。これらにより、正確に計測に必要なLED反射光だけを捉え、測定精度を保ちます。また、反射光を正確に捉えられることで、LEDの光量を低減させることもできるため、低消費電力による長時間使用も可能となります。
さらには、主に常時モニタリングで利用される脈拍計測における低消費電力の特徴を保持しながら、血液中のヘモグロビンと結合される酸素の割合をモニタリングするためのセンサー(下図)を開発しております。血中の酸素飽和度は、喘息等の呼吸器系疾患を持つ方の自己管理や、高所登山時に携帯される登山者もおり、新型コロナウイルス感染症等の呼吸困難の症状の初期徴候の検出用としても重視されています。血中の酸素飽和度を測定するための赤色と赤外のLEDと受光するための受光素子をコンパクトにまとめることで、実装性に優れたデバイスを実現しています。
また、腕の振りなどによって起こる体動ノイズを加速度センサーで検知し、ノイズを除去するための検出アルゴリズムを組み込んで測定精度を高めています。
エプソンは、バイタルセンサーをはじめコアとなる独自のセンサー技術を応用したセンシングデバイス製品を多数有しています。また、長年にわたりセンサー活用によるビックデータの分析・解析を行い、膨大なデータや多くのアルゴリズムの蓄積もあります。エプソンは、これらのセンシングデバイス製品群、ならびにビッグデータの分析・解析によって得られた新たな価値を創出するアルゴリズムプラットフォームを核に、スマートセンシングの世界を広げ、新たな利用シーンの創出を加速させることで、今後も生活の中のあらゆる場面で人々を見守り・支援し、安全・安心な社会を創造し、持続可能な社会の実現に貢献していきます。