加速度センサー技術
安全・安心な社会の実現に貢献するエプソンの加速度センサー
日本では高度成長期に整備された橋梁やトンネルなどの社会インフラの老朽化が社会問題となってきており、その安全性向上の必要性が高まっています。全国にある社会インフラの安全性を確認するために、検査品質の均一化や管理コスト削減(人件費・設置操作性)への対応が必須の状況です。そのニーズに応えるために当社の加速度センサーを使用した高精度センシング技術によるアプローチが行われています。
インフラの予知/予防保全・災害監視の実現
橋梁やトンネルなどの大型社会インフラは、その変化や動きは非常に微少なために迅速に且つ正確に捉えにくいものです。その微少な変化の中に社会インフラの劣化を示す兆候が見られる場合があります。微少な変化を正確に捉えるには、性能・精度の良いセンサーが必要ですが、現在使用されている機械サーボ式加速度センサーはサイズが大きく重く高価で取り扱いが容易でないことがあります。一方、安価で取り扱いが容易なシリコンMEMS技術式加速度センサーは、センサーノイズが大きく微少な変化を測れないことがユーザーの不満となっています。
動きや振動を検知する加速度センサー
加速度センサーは、その名の通り加速度を検出するセンサーです。これにより、物体の動く方向や重力方向、傾き、振動、衝撃、速度、変位などを計測することが可能になります。民生用では、スマートフォンや携帯ゲーム機などに搭載して、操作する人の動きの検出や、カメラの表示方向調整機能に活用されています。産業用途では、地震・環境振動計測から橋梁などの建造物の構造ヘルスモニタリングまで幅広い用途に加速度センサーは活用されています。
エプソンのセンシングソリューション技術は、水晶材料にエプソン独自の微細加工技術を用いた高性能水晶センサー素子をベースとしています。この高性能水晶センサー素子を搭載したエプソンの加速度センサーには、低ノイズ・高分解能・ワイドダイナミックレンジ・高安定という優れた特性があります。
基本的な原理は、バネにあたる部材に重りをつけ、軸方向に移動して加速度が生じたときに起こる、バネの変位量を計測することで加速度を求めています。変位の計測には、圧電素子を用いることにより、ピエゾ効果による電気抵抗の変化で検出するものや、水晶振動子を用いて、張力により変化する周波数により検出するものなど各種あります。
エプソンの加速度センサーには、自社製の高品質な人工水晶素材を用いて作られた、双音叉型の水晶センサー素子が用いられています。
自社製の高精度水晶素子と半導体技術の融合
双音叉型水晶振動子のチップを小型化することにより、CI値(水晶の振動損失の目安)が大きくなり、良好な発振特性を得にくいという小型化の限界を半導体微細加工技術を応用したフォトリソ加工により克服しました。さらに、産業用センサー専用に開発したSoCにより、周辺装置および消費電力を大幅に削減し、性能を維持しつつ小型で高精度な加速度センサーを実現しました。ここにも、小型・省電力を実現するエプソンの半導体技術が生かされています。
エプソンの加速度センサーは、センシング量をダイレクトにデジタル変換するため、高価なアナログ変換装置が不要です。高精度なデータをコンピューターでそのまま処理できます。外部ノイズに強く、高分解能、ワイドダイナミックレンジ、高安定性を備えるとともに、金属ケースによるシールド性、堅牢性を高めたものや、防水防塵性を備えたものも取り揃えています。
小型で高精度、屋外設置などの厳しい環境での使用にも適しており、大型構造物の劣化や損傷を解析・診断する構造ヘルスモニタリング、地震や環境振動計測、橋梁の変位モニタリングなど、長期にわたる高精度なデータの取得が必要な場所でも最適に使用できるデバイスです。エプソンの加速度センサー技術により、実用化が困難であった社会インフラなどの課題を解決し、便利・安全・安心な社会の実現に貢献しています。