YUIMA NAKAZATOと創るファッションの未来

2025年1月29日、2025年パリのオートクチュールウィークで発表されたYUIMA NAKAZATOの最新コレクション「FADE」の制作の一部をエプソンがサポートしました。
フランスはもちろん、創作活動の傍ら世界のさまざまな地を訪ねている 中里氏。本コレクションのインスピレーションを求めて選んだ旅路は、サハラ砂漠の東部、遥か昔は海の底だったという白砂漠でした。旅の途中で出会った昼から夜に空が移り変わる美しい情景や大地の様子を中里氏が自ら撮影し、衣装のプリントデザインに利用しています。また、古着などから繊維化した不織布シートの研究では、その一部を起用したスニーカーやハット作品をランウェイで披露するとともに、YUIMA NAKAZATOとして初めて商品化を果たしています。

参考リンク:YUIMA NAKAZATOホームページ

©Guillaume Roujas

プリントの表現力が、コレクションを構成する上で欠かせない技術に

風景写真をそのままデザインに用いることで、服を着た人に旅の記憶も追体験してもらえるのではないかと考えた中里氏。FADEコレクションでは、プリント生地が服になった仕上がりイメージを、衣装の設計細部に落とし込んでいます。

例えば、薄いシルクオーガンジー生地へのプリントでは、イメージに近い発色を担保しながらも、インクが滲まない最適な厚みにこだわって生地を選んでいます。また、プリントに用いる画像データ作成にはAIによる画像生成技術を取り入れています。これにより、自然な形で写真画像をランダムに複製して配置し、レイアウトしたい画像サイズを効率的に生地の巾に合わせて全面にプリント再現ができています。

このように、これまで中里氏がデジタル捺染について理解を深め、体得してきたことが、生地選びやデータ作成を含めた工程要素の追求をより確信に満ちたものへと繋げています。中里氏にとって、プリント手法を使い自身のインスピレーションの源泉である写真を服に映すスタイルに大きな手ごたえを感じたコレクションとなりました。

YUIMA NAKAZATOが、初めて繊維化素材を用いたスニーカーを商品化

中里氏は、シーズンを経るごとに不織布シートの特性への理解を深め、再生した素材がファッションにおいてどのようなアイテムに適しているか、デザインの試行錯誤を重ねてきました。その結果、今回はスニーカーやブーツ、ハットというアイデアに行きつき、さらにYUIMA NAKAZATOから初めて商品化も実現しました。

今回は特に、綿(繊維化した状態)を降り積もらせてシート状にするドライファイバーテクノロジー*1(以下 DFT)の製法に着目することで、シート上にグラデーションを生み出し、さらに出来上がったシートへデジタル捺染技術でプリントを重ねてグラデーションの深みに幅をつくりだしています。シートの見た目が1点1点異なる点で、唯一無二を提案するオートクチュールの作品と相性が良いと中里さんは語ります。

中里氏のコメント:
「実際にこのスニーカーは、DFTのシートが靴の外側に渦を巻くように繋がっていて、黒から白へと徐々に素材の色が変わっていきます。まるで日本の水墨画のようでもあるし、和紙のような表現でもある。これまで見たことのない素材ができあがった」

本スニーカーは、2025年2月3日から開催された「YUIMA NAKAZATO展」にて、YUIMA NAKAZATOより数量を限定して販売されました。

YUIMA NAKAZATO展を開催、3年間のパートナーシップの賜物

持続可能なファッションの進化に向けて活動してきたYUIMA NAKAZATOとエプソンの共創の成果が、中里氏による日本での単独展覧会として初めて「YUIMA NAKAZATO展」で披露されました。エプソンは同展覧会に協賛し、2025年2月3日から16日まで、東京シティービューで開催されました。

中里氏がパリで発表を終えたばかりの最新コレクションの他に、過去の「UTAKATA」「UNVEIL」の衣装も展示。通常のコレクション発表では見ることができない、中里氏の書き溜めたデッサンやインスピレーションの源泉となった旅先での写真などが展示されたほか、DFTについても、スニーカー完成に至るまでの検証の断片が披露されました。

その他、歴代のランウェイ写真を出力した展示パネルなど展示装飾にもエプソンのインクジェットプリンターが活用されています。また、展覧会のポスターの一部には、DFTを使って紙の再生を試みており、原材料の一部に中里氏がパリのコレクション会場の装飾用に制作した紙造作の端材を用い、ポスター用途として再生させました。通常紙とは異なるユニークな質感を持った仕上がりとなっています。また来場者向けのパンフレットにも、エプソンの社内文書をPaperLab(ペーパーラボ)A-8100(紙を再生する乾式オフィス製紙機)*2で作成した再生紙を起用いただくなど、エプソンの様々な技術が展覧会を支えました。

普段はパリのオートクチュールウィークでしか見られない作品や中里氏の制作に至るまでのインスピレーションに触れるとともに、これまでの中里氏とエプソンの取り組みを多くのお客様にお届けする貴重な機会となりました。

*1 水をほとんど使用せず、多様な素材を繊維化し高機能化し高性能化するエプソン独自の技術。詳細はこちらをご確認ください。 ドライファイバーテクノロジー

*2 PaperLabについてはこちらをご確認ください。PaperLab