1984年8月 液晶ポケットカラーテレビ「ET-10」
液晶パネル | 薄膜トランジスタ式アクティブマトリクス TNカラー液晶 |
画面サイズ | 2インチ |
画素数 | 52,800画素 |
外形寸法 | (W)160×(D)31×(H)80mm |
質量 | 450g(乾電池含む) |
電源 | 4電源方式(単3乾電池5本、充電式NiCd電池、 AC100Vアダプタ、カーバッテリーアダプタ) |
消費電力 | 内蔵小型蛍光管使用時約1.9W、 外部光使用時約1.1W |
電池寿命 | 5時間(アルカリマンガン電池外部採光時)、 2.5時間(アルカリマンガン電池内部採光時) |
受信帯 | VHF1〜12ch/UHF13〜62ch |
ビデオモニタ端子(画像、音声入力端子)付
Φ36mm丸型ダイナミックスピーカー内蔵
製品特長
1984年、世界に先駆けて商品化された、液晶ポケットカラーテレビ「ET-10(米国市場ではEpsonelf)」。「テレビアン」の愛称がついたこの液晶カラーテレビは、“いつでもどこでも、テレビアン。”のキャッチフレーズが語るように、持ち運び便利な小型・薄型のポケットタイプで、インドア・アウトドアとどこでもテレビ放送を楽しむことができる、画期的な商品でした。
その最大の特長は、独自に開発したTFT方式の液晶カラーディスプレイ。1983年の国際SID(Society for Information Display)学会で発表されたこのパネルは、透過型で有効画面サイズが2.13インチ(横43.2×縦34.2mm、厚さ2.5mm)の世界初のカラー液晶パネル。180µm×135µmピッチの画素を240×240の計57,600個配列(商品化時には、2インチサイズ・画素数52,800個)し、その1つひとつに液晶を動かすトランジスタが搭載され、応答速度は40msecというものでした。また、この画素に対応するカラーフィルター(赤・緑・青)をパネル内面に形成し、そのフィルターを通過する光を個々にコントロールして、多彩な色を表現する仕組みになっていました。
このように「ET-10」は、半導体技術、液晶ディスプレイ技術、高密度実装技術などの既存技術に、カラーフィルター、TV回路をはじめとする新しい分野の技術を組み合わせた、当社の先端技術の結晶と言える商品だったのです。
誕生の背景
1973年、世界初の6桁液晶表示デジタルウオッチ「セイコークオーツLCV.F.A.06LC」を発表した当社は、映像表示を目的として、1977年からアクティブマトリクス液晶パネルの開発に着手。「シングルシリコントランジスタ液晶パネル」の開発に成功し、1982年には、世界に先駆けて「テレビウオッチ」を発売しました。
その後、「ポリシリコンTFT」方式へと開発の方向性を転換し、翌1983年には、世界初となるポケット型液晶カラーテレビの開発に成功したのです。それから1年3ヶ月後の1984年8月、液晶ポケットカラーテレビ「ET-10」を発売。それは、液晶カラーテレビとして、世界で初めての商品化でした。
成果と反響
世界初の液晶ポケットカラーテレビ「ET-10」の誕生は、国内をはじめ海外でも大きな反響を呼びました。そして当社は、この「ET-10」で培われた「ポリシリコンTFT液晶」技術を活かした液晶ディスプレイ事業を展開、その後、ビデオカメラ用ビューファインダー、液晶プロジェクター用ライトバルブなどの製品を、次々と世に送りだしていきました。