1999年12月 セイコー/クレドールスプリングドライブ

巻上げ方式 手巻き
時間精度 月差±15秒以内、(日差±1秒以内相当)
巻上げ持続時間 45時間
石数 30石
サイズ 直径29.0mm、厚み3.5mm
防水性能 日常生活用防水(3気圧防水)
希望小売価格 セイコー 18Kケースモデル(SBWA002)50万円 (発売当時)
セイコー ステンレスケースモデル(SBWA001)25万円 (発売当時)
クレドール プラチナケースモデル(GBLG999)100万円(発売当時)

製品特長

独自の技術を駆使したムーブメント「スプリングドライブ」を搭載した、クオーツ精度のぜんまい駆動ウオッチ。1999年に「セイコー」およびセイコーの高級ウオッチブランド「クレドール」から限定発売されたこのウオッチは、手巻きのぜんまいで駆動しながらも、水晶振動子で制御されることにより、クオーツ時計並の極めて高い精度を実現しました。

この「スプリングドライブ」は、ぜんまいの巻き戻る力で針を動かすと同時に、ローターを回転させて、その回転運動を電気エネルギーに変換。水晶振動子を駆動させてローターの回転速度を調節し、それに同期して針の回転速度も調整するという、画期的な新調速機構「トライシンクロレギュレーター(TRI‐SYNCHROREGULATOR)」を採用していました。これにより、動力源や輪列の構造は機械式ウオッチと同様でありながら、月差±15秒以内(日差±1秒以内相当)という高精度と、時の流れをそのまま表現したような、滑らかに動く秒針を実現しました。1999年12月に、この「スプリングドライブ」を世界で初めて搭載したウオッチが「セイコー」ブランドから2機種(18Kケース、ステンレスケース)、「クレドール」ブランドから1機種(プラチナケース)限定販売されました。2機種とも裏蓋はシースルーバック仕様になっており、コート・ド・ジュネーブの模様が施された美しい地板や滑らかなローター部の回転など、高級品にふさわしいムーブメントは視覚的にも価値あるものとなっていました。またこのムーブメントは、熟練した技術者により一つひとつ組み立てられました。

誕生の背景

「スプリングドライブ」は、着想から20年もの歳月を経て誕生しました。1969年、世界初のクオーツウオッチを商品化すると、その後のウオッチ開発では、「精度の追求」に「電池寿命の克服」という課題が加わり、さまざまな方式が模索されました。その中で1977年、「機械式時計を水晶振動子によって調速することで精度を高める」という原形構想が誕生。1982年には特許登録を行い、具体的な研究開発がスタートしました。

しかし、この開発には「エネルギー効率の改善」という大きな壁が立ちはだかります。ぜんまいの発電量に対して発振回路の消費電力が大きすぎ、大幅な低消費電力化が求められましたが、当時のIC技術では実現することが難しかったのです。そして、開発は中断。10年の時を経て第2次開発が再開し、試作機までこぎつけますが、ここでも消費電流低減の壁に阻まれて、持続時間を伸ばすことができず、実用化のめどが立ちませんでした。

そして、1997年から第3次開発が再びスタート。ついに低消費電力を実現するICを開発し、この「スプリングドライブ」は1999年に商品化されたのです。「スプリングドライブ」は、メカニカルウオッチの調整で培った技能と、究極の精度としての水晶発振技術、そして半導体技術を結集した、まさに当社の技術の集大成でした。

成果と反響

「スプリングドライブ機構」は、1998年のバーゼルフェアにて技術発表が行われ、その画期的な構造は国内外から高い評価を受けました。そして、1999年に初めての商品(限定モデル)が誕生、その後さらに技術を進化させ、2002年には新しいモデルを発売。部品から丹念に仕上げ、組立技能者の手によって作られる「スプリングドライブ」は、稀少生産ながら、市場で着実にその地位を確立しています。

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