1994年6月 カラーインクジェットプリンタ「MJ-700V2C」
印字方式 | オンデマンド型インクジェット |
ノズル配列 | 黒64ノズル、カラー16ノズル×3列 |
解像度 | 720dpi |
印字方向 | 双方向最短距離印字、ロジックシーキング付き |
紙送り方式 | フリクション・フィード |
インク | 黒インクカートリッジ、カラーインクカートリッジ(3色一体型) |
電源電圧 | AC100V±10% |
外径寸法 | (W)470×(D)525×(H)192mm |
重量 | 約7.2kg |
製品特長
「プリンタのエプソン」を広く世界に再認識させた、カラーインクジェットプリンタ「MJ-700V2C(海外市場ではEpson Stylus Color)」。世界で初めて720dpiの高画質印刷を実現したこのプリンタは、パーソナルユースにおいてもカラー化が進みはじめた当時のプリンタ市場に、大きなインパクトを与えました。その美しさの秘密は、1993年に開発された独自開発のプリントヘッド技術「MACHテクノロジー」。この印字ヘッドによって高い噴射圧により安定したインクの飛翔を得られ、優れたドット形状を確保。また、従来比で100倍もの速乾性という新開発の超浸透インクによりインクの混色やにじみを解消、さらに、印字行間の横縞・色むらを防ぐマイクロウィーブ機能を搭載し、クリアでシャープな印字を可能にしました。720dpi(1インチ四方内に720×720個のドットが打ち出される)という高解像度で、ハーフトーン(2値化)技術でグラデーション表現を向上し、図表や写真の細部までくっきりと忠実に再現。先行して発売されていた他社のカラーインクジェットプリンタと比べても、とび抜けた表現力を誇りました。
また、「MJ-700V2C」では、パソコン内部でのデータ処理やプリンタへのデータ転送など、印刷すべてのプロセスをスピードアップ。カナ文字印刷時133cps(1秒間に打ち出せる文字数が漢字133文字)は、他社同等クラスの商品と比較しても最速でした。経済性にも優れ、これだけの高性能を備えた商品が、10万円を切る価格で手に入るという魅力。加えてランニングコストは、モノクロ印刷でA4一枚あたり1.8円(ANK1500字)、カラー印刷で7.6円(各色5%)と、いずれも他社製の同等機種と比べても低コストでした。
さらに、プリンタの能力を最大限に発揮させるための各種メディア(用紙)を開発したり、Windows用/Macintosh用のプリンタドライバを標準添付するなど、使いやすさにも配慮した商品でした。
誕生の背景
1990年代初め、プリンタ市場の大きな流れは、インパクト(ドットマトリクス)からノンインパクト(インクジェットやレーザー)プリンタへと移行していました。さらに、パソコンの個人ユースへの普及、CPUの処理能力やOSの向上による画像処理の実現、高機能PCの低価格化などにより、個人がカラーを楽しめる環境が充実。そこで当社は「他の追随を許さない高画質の実現」をテーマに掲げ、カラーインクジェットプリンタの開発に尽力しました。そして1994年5月、満を持して「MJ-700V2C」を発表したのでした。
成果と反響
「MJ-700V2C」は数ある競合他社のカラーインクジェットプリンタを押しのけ、社会から大きな反響を獲得しました。それは、このプリンタが持つ圧倒的な高画質と、10万円を切るという普及価格を実現したことによるものでした。「MJ-700V2C」は大ヒットし、当時の国内向けの商品としては記録的な累計30万台を出荷。年賀状をカラーで印刷したり、カラーのプレゼンテーション資料を作成するなど、社会的にプリントのカラー化が促進されたのでした。また、海外でも同時に「Epson Stylus Color」の名で発表され、広く世界で好評を得て、カラーインクジェットプリンタの市場を大きく拡大しました。この「MJ-700V2C」は、「日経優秀製品・サービス賞日本経済新聞賞」を受賞したほか、世界中で各種の賞を受賞しています。また、その後のカラーインクジェットプリンタ商品化の方向付け、技術開発に大きな影響を与えました。