1993年7月 1チップドットマトリクスLCDドライバ「SED1560シリーズ」
表示RAM内蔵 | 65×166=10790ビット 80系列/68系列の両MPUと直結可能 |
表示ドット数 | 最大65×102ドット 液晶電源回路内蔵 |
チップサイズ | 8.08×5.28mm |
製品特長
1993年7月に量産出荷が開始された「SED1560シリーズ」は、低パワーの電源回路を内蔵した、業界初の小型携帯機器向け1チップドットマトリクスLCDドライバです。当時は、液晶表示のための電源回路の消費電力が高く、LCDドライバには1チップ化されずに、メーカーが後から電源回路を基板上に構成するのが一般的でした。しかし、情報機器の小型化や高機能化が進むに連れ、部品の低消費電力化・1チップ化(小型化)へのニーズが高まっていました。この点に着目した当社は、強みとしていた低消費電力技術を追求し、液晶の駆動に最適な回路構成を開発。一般的な電源回路の約1/10の消費電力でも駆動する、低パワー電源回路を開発し、これをLCDドライバに組み込むことに成功しました。
この「SED1560シリーズ」は、65×102ドットという表示サイズでありながら、150〜180µAという従来にない低消費電力を達成し、当時のページャー液晶表示の条件であった「単4電池で1カ月駆動」を実現できる唯一のドライバICでした。
また、80系および68系MPUのバスに直結可能であるため、内蔵RAMに表示データを記憶することができ、さらに、液晶パネルの画素1ドットと内蔵RAMの1ビットが1:1で対応しているため、“0”か“1”のみで非点灯・点灯を決定できるなど、表示自由度が高いことも特長でした。
誕生の背景
当社は、クオーツウオッチ用の「CMOSIC」の開発を契機として半導体事業をスタート。以来、低消費電力ICの開発に注力してきました。そして誕生したLCDドライバ「SED1520シリーズ」が、その低消費電力と、内蔵RAMによる使いやすさで好評を博し、その後ラインナップ拡充を図ることになりました。
目指したのは、「SED1520」の表示ドット数(16×61)を向上させた、64×100ドット表示可能なLCDドライバICでした。1991年にスタートした開発では、既に市場に出ていた他社製品と差別化を図るべく、当社の強みである「低消費電力化」技術を駆使。当時は難しいとされていた、液晶表示電源回路を内蔵するICの実現に取り組みました。
当初のサンプルでは、液晶駆動に必要な6つの電源のうち一部しか動かず表示に失敗。これを解析した結果、個々の電源に流れる電流の方向を最適化することによって、低消費電力でも液晶を駆動させられることが判明しました。その後、試行錯誤で実験を繰り返し、回路構成を検討。その結果、低パワー電源回路内蔵の「SED1560シリーズ」が誕生したのでした。
成果と反響
高い表示ドット数と低消費電力を同時に実現した「SED-1560シリーズ」は、市場で高く評価され、ページャー機器の大画面化を促すとともに、市場の急拡大に伴って大ヒット、ロングセラー商品となりました。この「SED1560シリーズ」の開発で確立した低消費電力化の技術は、その後のLCDドライバ開発のベースコンセプトとして活かされ、携帯電話向けのドライバで当社の地位を不動のものとした後継機種「SED1565シリーズ」や、世界初の「MLS(MultiLineSelection)駆動LCDドライバ」をはじめ、数々の低消費電力ドライバの誕生に寄与しています。