1993年3月 超小型自律走行ロボット「ムッシュ」
移動速度 | 1.8〜14.7mm/s |
登坂能力 | 約5度 |
動作電圧範囲 | 1.5〜2.2V |
重量 | 4.3g |
外形寸法 | (W)11.0×(D)12.4×(H)10.8mm |
充電方法 | ケース収納時に自動的に充電(触覚:プラス、尾:マイナス) |
部品点数 | 98 |
外装 | 92.5%スターリングシルバー |
価格 | 50,000円(発売当時) |
製品特長
1993年に発売された超小型自律走行ロボット「ムッシュ」。「EPSON Micro Robot System (EMRoS)」シリーズ第1号となったこの「ムッシュ」は、当社が長年培ってきたウオッチ技術から生まれた商品でした。駆動部、CPU-IC(頭脳)、電源部には、“省エネ化”“コンパクト化”“高機能化”の技術を活かし、超小型ステッピングモータやクオーツウオッチ用の低消費電力IC、水晶振動子などを利用。これに光センサを組み合わせ、光を当てることによりその光源に向かって進むよう、設計がなされました。
「ムッシュ」の1番の特長は、ギネスブックにも認定された、そのコンパクトサイズ。わずか1cm³の身体のなかに、なんと98点もの部品が組み込まれていました。さらに、正面の触角状に伸びる2本の線と、お尻からしっぽのように伸びる1本の線でバランスをとり、ワイヤレスで自律自走することが可能。しかも、電力源には超小型にもかかわらず、充電式が採用されました。
この「ムッシュ」ほかにも、歴代のマイクロロボット「EMRoS」シリーズには、「ムッシュ」の体積をさらに半分にした「ニーニョ」(1994年発売)、記憶再生機能が搭載された「リコルド」(1995年発売)、気まぐれ走行機能が搭載された「ルビー」(1995年発売)などが開発され、どれも光を追って自律走行することができました。
誕生の背景
1991年10月に名古屋市で開催された、「山登りマイクロ・メカニズム国際コンテスト」(社団法人精密工学会主催)。そのコンテストに出場することで、当社の高度な小型化技術をアピールできると考えた当時の開発設計者は、世界初の1センチ角というマイクロロボット「ムッシュ」の開発をスタートしました。そのアイデアは、すでに1990年秋頃から練られていましたが、部品点数の多さや部品固定の安定性、配線の信頼性、光センサが入手できないなど、多くの課題を抱えていました。チャレンジを開始したのがコンテスト1ヶ月前、部品が揃ったのが1週間前という過密スケジュールのなか、コンテスト前日、「ムッシュ」は誕生したのでした。
成果と反響
このユーモアあふれる「ムッシュ」は、もちろんコンテストで大受け。「ムッシュ」がモニタに映され、動き出したときには会場にどよめきが起こったほどでした。最終的には、22チーム中7位という好成績を残し、昆虫をイメージした奇抜なデザインは、みごと優秀デザイン賞を獲得。こうして、「ムッシュ」は華麗なデビューを果たしたのです。その後1993年には一般発売。1993年版のギネスブックにおいて、「世界最小のロボット」として掲載されました。また、1998年には、ニューヨーク近代美術館のパーマネントコレクションに選定されています。さらに、このマイクロロボットは、当社のマイクロメカトロニクス技術追求の一貫として開発が続けられ、2003年3月には超薄型音波モータ駆動で、省エネ型Bluetooth搭載の、プロトタイプマイクロロボット「ムッシュII-P」、同年11月には世界最小の空飛ぶプロトタイプマイクロロボット「µFR」を開発しています。