1987年4月 水晶発振器「SG-615」
耐熱シリンダ型AT振動子内蔵
基本出力周波数範囲 | 1.0250MHz〜26.00000MHz アウトプットイネーブル機能付 |
動作電圧 | 5.0V±0.5V |
動作温度 | -40℃〜+85℃ |
ハンダ付条件 | 260℃以下×10秒以内×2回以下、 または230℃以下×3分以内 |
外形寸法 | (W)14.00×(D)8.65×(H)4.7mm |
消費電流 | 25mAMAX. |
製品特長
水晶デバイス業界初のプラスチックSMD(表面実装)タイプの水晶発振器「SG-615」は、当時、普及しつつあった基板の表面実装へのニーズに応える製品として1987年4月に誕生しました。従来の基板実装は、「基板に穴をあけて、そこに部品のリード(足)を挿し込んでハンダ付けをする」という方法が一般的でしたが、この方法では、プリント基板の最上部から最下部まで貫通する穴を開ける必要があり、そのために基板強度の低下や加工時間、部品実装の増加、貫通による配線の制約、配線密度の低下などの問題が起こっていました。
一方、表面実装タイプの基板では、部品は表面にのみ接続されるため、配線の自由度の向上、部品の小型化、高実装密度化が可能であり、OA機器などでは表面実装が普及し始めていました。これに合わせ、ICなどでは表面実装部品(SMD)が生まれてきていましたが、水晶デバイスはまだメタルパッケージが主流でした。そこで当社は、半導体製造で培った量産技術をベースに水晶デバイスのプラスチックパッケージ化、SMD化に取り組みました。
その結果誕生した「SG-615」は、プラスチック素材に熱硬化性のエポキシ樹脂を使用。表面実装のハンダ付け工程で使用されるリフロー炉の温度条件にも耐えられるよう、新たに開発した耐熱シリンダ型AT振動子を内蔵し、汎用SMDICと同等のハンダ付温度条件を実現しました。基本出力周波数範囲は、約1MHz〜26MHz。オーバートーン発振でさらに高次の周波数出力も可能でした。さらに、出力信号を止めたり出したりすることができるアウトプットイネーブル機能を備え、出力信号を変化させることができました。また、自社製CMOSICの強みを生かし、最大でも25mAという低消費電流を実現したのです。
誕生の背景
当社の水晶デバイス事業は、1969年に商品化されたクオーツウオッチ用の水晶振動子を独自開発したことからスタートしています。1970年代前半は、時計用32kHzの水晶振動子を中心とした商品展開でしたが、1970年代後半から、普及するOA機器の制御クロック用途を狙って、より高周波帯の水晶振動子・水晶発振器の商品化にも取り組むようになりました。そうした中、他社との差別化を図るために着目したのが、プラスチックパッケージの水晶発振器の開発です。
当時の水晶発振器はメタルパッケージが主流でしたが、ICなどはプラスチックパッケージが普及しており、実装の合理化という観点から、プラスチックパッケージタイプの水晶デバイスの開発が待たれていました。当社は半導体製造で培った量産技術をベースに、1986年に、DIPタイプ(リード挿入実装型)でプラスチックパッケージの水晶発振器「SG-51」を開発。さらに、それを基板の小型化のニーズに応える表面実装タイプの開発に取り組みました。その結果、他の水晶デバイスメーカーに先駆けて、1987年4月にプラスチックパッケージで表面実装タイプの水晶発振器「SG-615」が誕生したのです。
成果と反響
「SG-615」は、水晶デバイス業界初のプラスチック表面実装(SMD)タイプの水晶発振器として業界の注目を集め、この製品が水晶発振器業界のSMD化への先鞭を切ることとなりました。「SG-615」は米大手コンピュータメーカーのパーソナルコンピュータ用制御クロックとして採用されると、瞬く間に各社のPC用クロックとして販売が急増し、ピーク時には月産300万個をも記録するデファクトスタンダード製品となりました。当社は、水晶デバイス業界におけるSMD製品で業界のリーディングカンパニーの地位を確立し、その後も商品ラインナップを充実させています。