1981年8月 カメラ用日付写し込みデートモジュール
時刻表示精度 | 月差±90秒 |
表示部分 | STN液晶 |
写し込み部分 | STNゲストホスト(2色染料) 液晶Niマスク付 |
サイズ | (W)40×(D)33.3×(T)3.8*mm *最大厚み5.2mm |
質量 | 6.5g |
製品特長
世界初の「LCD表示自動日付写し込みデートモジュール」は、日付や時刻を設定・変更するために、カメラの裏蓋部分に装着することを前提とした一体型モジュールで、その中は「外部表示パネル」とフィルムにその表示内容と同じ情報を焼き込むための「写し込み用パネル」の2枚のパネルと、写し込むためのランプ、日付や時刻などの情報を制御する電子回路(ランダムロジックIC)で構成されていました。
日付写し込み用の液晶パネルは、液晶の偏光板を通常の液晶パネルの角度とは偏光角を90°変えることによって、数字などの表示部分が白く光る(光が透過する)ようにしたものでした。シャッターに反応して内蔵ランプを光らせ、表示部分をその光が透過してフィルムに情報が焼きつけられる、というしくみです。開発当初は、光を取りこみフィルムへ写し込む方法として、カメラのレンズ側にモジュールを装着し、カメラのレンズから光を取りこむようにすることも1つのアイデアとして検討されましたが、「どのカメラメーカーのカメラにも対応できる」という汎用性を高めるために、カメラの裏蓋に装着するモジュールとして完成させました。
また、日付をきれいに写し込めるように、当時実用化されていた液晶のコントラストが10:1程度だったものを、材料、作成方法、設計値を検討しながら試作を重ね、ゲストホスト(2色染料)技術を用いたSTNタイプの液晶を開発し、200:1にまでコントラストを向上させました。さらに、文字の輪郭をくっきりとさせるために、遮光性を向上させる「ニッケルマスク」をつけました。
この表示パネルは現在のディスプレイ事業部、ICは半導体事業部、水晶振動子は水晶デバイス事業部で製造され、まさに当社の技術を融合した製品となりました。また、その生産には時計の自動組立ラインを応用した、組立から検査までの一貫自動生産ラインが導入され、コスト競争力の高い商品を生み出すこととなりました。
誕生の背景
1979年後半、「時計の時刻表示機能を別の商品に応用する」という目的で、拡大するカメラ市場への展開を狙った開発プロジェクトが発足しました。当時、カメラ市場では、日付をフィルムに写し込む機能はすでに存在していましたが、それは撮影するたびにカメラの日付リングを手で合わせなくてはならないという、使い勝手のあまり良くないもので、すべてのカメラに搭載された機能ではありませんでした。しかし、「撮った写真の日付が分かれば記念になるのに」という人々のニーズはあったのです。当社はここに注目し、時計機能によって自動的に日付や時刻を認識させ、それをフィルムに焼き込む方法の開発に取り組みました。この着眼点から試作を重ね約1年半を経て、世界初の「自動日付写し込みデートモジュール」は誕生したのです。
成果と反響
世界初のLCD表示クオーツデジタル時計内蔵のオートデートモジュール搭載カメラが発売されると、市場で大きな反響を呼びました。以後、カメラメーカーのほとんどがこのオートデートモジュールを採用し、当社の「日付写し込みデートモジュール」はピーク時に世界シェア95%を超える、驚異のデファクトスタンダード商品となりました。また、このビジネスの過程で、パネル、IC、細密実装技術を生かして「表示モジュール」を商品として販売するビジネスが芽生えました。このうち1990年代前半に生まれた新規アプリケーションの1つが、当時市場へ少しずつ出始めていた「携帯電話」でした。現在のディスプレイ事業を支える「携帯電話向けLCDモジュール」ビジネスの発端はここにあったのです。カメラ用デートモジュールは発売から23年の歴史で、約1億6,000万個の累計販売実績を誇っています。