1969年12月 セイコー クオーツアストロン 35SQ

中三針 秒針1秒運針
ムーブメントサイズ 外径 30.00mm、 厚み 5.30mm(電池部6.10mm)
駆動方法 水晶発振駆動回路によるステッピングモータ式
水晶振動数 8.192Hz
精度 常温(+4℃〜+36℃) 日差 ±0.2秒/月差 ±5秒
電池寿命 1年以上
石数 8石
価格 45万円(18K金無垢ケース)(発売当時)

製品特長

世界初のクオーツウオッチとして、世界の時計史にその名を刻んだ「セイコー クオーツアストロン 35SQ」。当社の精密加工技術とエレクトロニクスの技術により実現したこの水晶腕時計の製品化は、世界中で大きな反響を巻き起こしました。この「35SQ」には、腕時計サイズに水晶振動子と時計用IC、ステッピングモータを搭載。その性能は、月差±5秒、日差±0.2秒(当時機械式時計:日差20秒)という、当時としては超高精度なものでした。

搭載された水晶振動子は、当社が独自に開発したもので、小型かつ優れた耐衝撃性を持つ、世界初の音叉型水晶振動子でした。また、電気信号を機械的な回転運動に変える変換機には、コイル、ステータ、ロータを分散配置した超小型ステッピングモータを新たに開発したのでした。

一方、発振回路・分周回路・駆動回路は、セラミック基板上に手作業でトランジスタ76個、コンデンサ29個などをハンダ付けしてハイブリッドICとして構成。この腕時計用ICの開発により、内部は時刻指示機構などを除いて機械部品を使用しないという、ユニークな構造になっていました。

さらに、電池の交換も容易な、電池蓋形式を採用。秒針は1秒刻みのステップ運針で、秒規正方式による正確な時刻合わせが可能でした。ほかにも、ムーブメントを丸型化することにより、信頼性の高い構造と格調の高いデザインを実現するなど、それまでの腕時計の常識にとらわれないアイデアが、随所に盛り込まれていました。

誕生の背景

1950年代後半、各社が腕時計の精度を競い合うなか、当社も1959年に発足した「59Aプロジェクト」により、次世代の高精度電池式腕時計の開発がスタートしました。テンプ式、音叉式、水晶式といった電池式腕時計の構造を研究する中で、まず持ち運べるサイズの水晶時計の開発に注力。東京オリンピック用公式計時装置の開発と相まってその開発は加速し、「セイコー クリスタルクロノメータ QC-951」の誕生につながりました。さらに、1966年には懐中型、その翌年には腕時計型の水晶時計プロトタイプを発表。各試作品はヌーシャテル天文台クロノメーターコンクールで入賞を果たしました。そして、1969年、ついに世界初のクオーツウオッチ「セイコー クオーツアストロン 35SQ」が商品化されたのです。

成果と反響

この世界初となるクオーツウオッチの誕生は、米ニューヨークタイムズ紙にも記事が掲載されるなど、腕時計の歴史にその名を刻んだウオッチとして、広く内外から注目を浴びました。また、当社は特許権利化した技術を公開し、アナログクオーツウオッチの世界的普及に寄与することとなりました。その誕生のキーテクノロジーとなった、音叉型水晶振動子、IC(71年には時計用CMOSICの開発に成功)、ステッピングモータは、その後、さらなる開発が進められ、現在の水晶デバイス事業、半導体事業などへと発展。そして、このとき生まれた「エナジーセービング」の考え方が現在まで、エプソンの思想として受け継がれています。

また、このクオーツウオッチ製品化にあたって、水晶振動子、時計用IC、超小型ステッピングモータを開発したことが、電子デバイス産業全体の省電力技術の発展に寄与したと評価され、当社は2002年に米国電気電子技術者協会(IEEE:The Institute of Electrical and Electronics Engineers Inc.)の革新企業賞(Corporate Innovation Recognition Award )を受賞しています。

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