YUIMA NAKAZATOと創るファッションの未来
2025年7月9日、パリのオートクチュールウィークで発表されたYUIMA NAKAZATOの最新コレクション「GLACIER」の制作の一部をエプソンがサポートしました。
フランスはもちろん、創作活動の傍ら世界のさまざまな地を訪ねている中里氏。今回は、衣服の起源を探る旅としてフィンランド・ラップランドエリアへ訪れました。氷に包まれた地に身を置いたモデルの姿を通じて、人間の弱さと衣服の存在意義を問い直しました。その情景を写真に収め、エプソンのデジタル捺染機で布に表現しています。また、ドライファイバーテクノロジー*1によって、古着などから繊維化した不織布シートを用いたシューズも、オーロラを連想させるデザインで今季のコレクションで披露されました。
ファッションの可能性を広げる、ML-16000JQによる両面プリント
中里氏は、動きの中で生まれる一体感を追求し、裾や袖に深いスリットを施したドレスに両面プリントデザインを採用しました。このデザインを実現するため、表裏で同一の写真デザインをシームレスにプリントできるデジタル捺染プリンター「ML-16000JQ」が活用されています。
「ML-16000JQ」はカメラユニットを搭載し、生地のパターンをリアルタイムで認識する技術により生地の表裏での柄合わせ印刷を実現します。さらに、ジャカードや刺しゅう、レースといった生地には、複雑な織模様に合わせて、精緻で美しいプリントを可能にするモデルです。
これにより、生地が翻るたびに現れる視覚的な一体感が、作品に独自の魅力をもたらします。加えて、裏地を省くことで、軽やかでミニマルなシルエットが生み出されています。
中里氏のコメント:
「これまでは生地の表面にプリントすると、裏面は白っぽくなってしまう。そのため裏地で覆う必要があり、生地もコストも倍になっていました。今回の技術では、両面に同じデザインをプリントできるため、デザインの自由度向上を実現できます。新しい表現の可能性が広がりました。」
©Gio Staiano
透け感と彩りが織りなす、デジタル捺染による多様な素材表現
今回のコレクションでは、YUIMA NAKAZATOは26体の作品を発表しました。その中で、ドレスやパンタロン、ジャケットなどを含めた衣装の数々にデジタル捺染プリントが利用され、完成作品としての魅力を最大限引き出しています。
特に、長年得意としてきたシアーなシルクオーガンジーに加え、Brewed Protein™繊維とカシミヤをブレンドしたウール素材にもプリントを施し、エレガントでシルキーな質感を表現しました。

不織布シート×漆、日本の伝統美を現代ファッションに
前回に引き続き、エプソンはドライファイバーテクノロジーの繊維化技術を用い衣装制作をサポートしています。過去のシーズンでは、繊維化された不織布シートを使ったスニーカーやブーツのアイデアを発表しましたが、今回はヒールや一部ドレスなど、さらに多様なアイテムに展開しています。
衣類の大量廃棄は、ファッション業界における深刻な問題の一つです。ドライファイバーテクノロジーは、複数の異なる素材からなる混紡生地を繊維化できるという特長を持ち、こうした課題に対する新たな解決策の可能性を提案します。今回のコレクションでは、縫製工場から出る端材や、中里氏が以前自ら訪れたケニアで調達した古着などから繊維化した不織布シートを作品の一部に活用しています。中里氏は、この不織布シートの質感が、日本の伝統美である墨絵や和紙を思わせると考えています。さらに「美しさ」の価値を探求し、シートの表面に日本を代表する伝統工芸のひとつである漆を施すことで、中里氏がフィンランドで目にしたオーロラのような輝きを表現しました。こうして新たな装いを得た不織布シートは、YUIMA NAKAZATOの作品において、シューズから衣装の細部に至るまで、素材・色彩・質感が一体となった美しさを生み出しています。


©Gio Staiano
*1 水をほとんど使用せず、多様な素材を繊維化し高機能化し高性能化するエプソン独自の技術。詳細はこちらをご確認ください。 ドライファイバーテクノロジー