1973年10月 セイコー クオーツLC V.F.A. 06LC
サイズ(液晶表示パネル付ムーブメント寸法) | (W)26×(D)29.2×(T)8.35mm |
平均月差 | ±10秒 |
表示体 | FE(電界効果型)シングルクリスタル液晶 |
外装ケース材 | チタニウム |
製品特長
時刻表示に世界初の6桁液晶ディスプレイを採用した、全電子ウオッチ「セイコークオーツLC V.F.A.06LC」。クオーツウオッチのために独自に開発された「FE(電界効果型)シングルクリスタル液晶」を使用し、時・分・秒を常時表示できる画期的なデジタルウオッチとして1973年10月に発売され、広く内外から注目を集めました。
「06LC」の最大の特長は、その駆動構造。アナログクオーツが水晶振動子の振動をベースとした、時間標準の電気信号をステッピングモータに伝えて針を回すのに対し、デジタルクオーツの「06LC」は、電気信号をそのまま液晶パネルに送り、時刻を数字表示できました。それは、電圧を受けると分子の配列が変わり、色や透明度の違いに置き換えて表示することができる、液晶の性質をうまく利用したものでした。独自開発の液晶は、長寿命(50,000時間)で、コントラストがはっきりしており、照明ランプも備えていたため、常時容易に数字を読み取ることが可能。時刻合わせはプッシュボタン方式で、秒まで合わせることができ、また時・分を独立して時刻修正できる使い勝手の良さも備えていました。
その他にも、水晶振動子による高い精度、長寿命を実現する高い信頼性、機械稼働のない高い安定性など、“次世代のクオーツ”と呼ばれるに値する、数々の優れた特性を兼ね備えていました。
誕生の背景
1960年代の後半から、時刻を針ではなく、数字で表示したいという、デジタルウオッチ開発の気運が世界的に高まっていました。当社ではその市場の変化を先取りし、クオーツウオッチの開発と並行して全電子ウオッチの開発を推進しました。当時はLED(発光ダイオード)やD.S.M方式液晶などもありましたが、低消費電力で高い視認性の実現という観点から、当社はFE(電界効果型)液晶の独自開発に着手しました。開発にあたっては、ウオッチに適した液晶の合成および封入方法、電極構造などの開発、作動温度範囲、パネル表示コントラスト条件の達成などの課題をクリアするとともに、機械式ウオッチの製造で培われた精密加工技術、およびクオーツウオッチの量産技術などを結集。ついに1973年、文字板と針にかわって液晶で時刻を表示する、全電子ウオッチ「06LC」の開発に成功したのです。
成果と反響
デジタルウオッチ「06LC」は、予想以上の好評をもって市場に受け入れられました。また、当初心配されていた液晶表示の信頼性の面でも、表示パネルの欠陥を理由とした返品はなく、高い評価をいただくことができたのでした。その後も積極的にデジタルウオッチの製造・発表に取り組んだ結果、世界のデジタルウオッチは当社の採用したLCD方式が主流になり、さらに、デジタルウオッチで成功を収めた当社は、液晶表示体を次なる事業のターゲットとし、ウオッチ以外の用途開発に乗り出していきました。