子どもたちの命を輝かせていただいたことに心から感謝

奥田 聡さん

独立行政法人国立病院機構 東名古屋病院

名誉院長

つながり:「ゆめ水族園」2023年度開催

重症心身障害児者病棟(以下、重心病棟)の子どもたちの目に景色はどう映っているのだろうか、周りの声や音はどう聞こえているのだろうか。

病棟のスタッフはほんのわずかな表情や頬の色の変化で「~さん、めちゃ喜んでる!」と言う。社会見学と称した子どもたちの院長室訪問で、小児科医が心電図モニターを見て「さすがにちょっと緊張してるね」と笑う。

本当かいな、と思うが、本当らしい。

私は神経内科医ではあるが、その屁理屈を通りこしたところに重心医療というものはあるようだ。患児と向き合い、そのわずかな変化から命の輝きを感じる能力、あるいは命を輝かせることが求められる。目を背けたら、背中を向けたら、それで終わり。

「そんな大袈裟なことじゃないですよ」「別に普通にやってるんで、院長考えすぎ」と言うが・・・たしかに、だんだん普通に思えてきました。

その重心病棟の広い天井、壁、広げられた大きな布、床いっぱいにカラフルな魚たちが泳ぎ、たくさんのクラゲが流れ、白クマが海に飛び込む。寄せては返す波、水の音、鳥たちのさえずり、海藻が揺れ、ペンギンが泳ぐ。海底の迷路に迷い込んだような色彩のカーテンの渦。その中を車椅子やベッドが移動していく。見開かれた目にはどう映っているのだろうか。

「いったい、こんな映像どうやって撮影したの?!」なんて余計なことは考えずに、きっと海中の世界と一体化しているんだろう。

いつも病室という限られた空間で過ごす子どもたちに、映像を専門とするエプソンが届けてくれた想像を超える夢のイベント。その技術力、そしてお手伝いいただいた多くのスタッフの皆様、子どもたちの命を輝かせていただいたことに心から感謝、感謝、感謝!